第36期竜王戦1組ランキング戦(主催:読売新聞社)は、1回戦の羽生善治九段―佐藤天彦九段戦が1月16日(月)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、153手で勝利した羽生九段が2回戦進出を決めました。

佐藤九段の横歩取り△3三桂戦法

振り駒が行われた本局は、後手となった佐藤九段が横歩取りの序盤に誘導して幕を開けました。先手の羽生九段が横歩を取ったタイミングで佐藤九段が左桂を跳ねたのが△3三桂戦法と呼ばれる作戦選択。最先端の研究勝負を離れて力戦調の展開を望みます。佐藤九段としては昨年末に指された棋王戦挑戦者決定トーナメントの羽生九段戦および藤井聡太竜王戦に続く連続採用となりました。

先手の羽生九段は、穏やかな展開になれば一歩得が生きてくるという大局観のもとに穏やかな駒組みを続けます。続いてじっと3筋の歩を伸ばしたのも棋理に沿った指し手で、むき出しになった後手の桂頭を歩で攻める狙いを見せることで佐藤九段の動きを誘っています。これに対し佐藤九段は3筋に歩を合わせて盤面右方から局面を動かしにかかりました。

激しい駒の取り合い

ジリジリとした間合いの計り合いが続いたのち、後手の佐藤九段は交換で手にした角を敵陣に打ち込んで主戦場を盤面左方に移します。これに対して羽生九段が見せたタタキの歩から突き出しの歩の手筋が3手1組のうまい対応でした。受けに回っていてはじり貧と見た佐藤九段がここで攻め合いを望んだことで、局面は突如として激しい攻め合いに突入しました。

両者の読みがぶつかり合った結果、おたがいに8筋にと金を作って局面は駒の取り合いに進展します。金駒1枚ずつを取り合ったところでは手番を得た先手が金を取る手が予想されましたが、これに代えてじっと自陣角を打って飛車取りとしたのが羽生九段の用意していた好手でした。手を渡された佐藤九段は残り時間の大半を投入した長考のすえ自陣に手を戻す辛抱を選びますが、代償に飛車を取り返した羽生九段が優勢に立ちました。

駒得生かした体力勝ちで羽生九段が快勝

急所の攻め合いで読み勝った羽生九段はその後も好調な攻めを続けます。手にした飛車を敵陣に打ち込んで王手をしたのがうまく、これで佐藤九段の攻め駒をすべて受けに使わせることに成功。一手差の斬り合いを回避して、駒得を生かしたいわゆる「体力勝ち」に切り替えながら最後まで追いすがる佐藤九段を振り切りました。

終局時刻は21時49分、危なげない着地を決めた羽生九段が快勝で2回戦進出を決めました。勝った羽生九段は次局で久保利明九段と戦います。敗れた佐藤九段は出場者決定戦に回ります。

水留啓(将棋情報局)

  • 羽生九段は2か月ぶりの佐藤天九段戦で前回対戦のリベンジを果たした(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)

    羽生九段は2か月ぶりの佐藤天九段戦で前回対戦のリベンジを果たした(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)