「学び方」から強みをどう見つける?
企業は就活で、学生の学業での取り組み(履修行動)に注目し始めています。
しかし、現状では、どうやって自分の履修行動を振り返り、就活でアピールできる資質や強みを見つけるのか、学生のみなさんはイメージがついていないのではないでしょうか。
また、学業といえばどうしても成績の良し悪しに目がいってしまい、「自分は大学時代、あまり成績が良くなかったし……」と早々に自信を失ってしまっている方もいるかもしれません。
そこで今回は、履修行動から自己分析を行い、強みを見つけるまでの一連の流れについてご紹介したいと思います。
学業といっても、成績の良し悪しは関係ない
はじめに大切なこととして、履修行動から自己分析を行うといっても、成績の良し悪しを見るということではありません。面接官が見ているのは、成績だけではないのです。これには3つの理由があります。
・大学の成績は厳密につけられていない
・面接官は成果の高さや派手さ、珍しさを見ているわけではない
・履修行動・課外活動いずれに力を注いでも自分らしさになり得る
まず、残念ながら、現時点で日本の大学において成績はあまり厳密につけられていません。
近年、大学環境が変化し、授業への出席は厳格化していますが、いまでも「出席さえしていれば全員A評価」といった授業もあります。これでは単純に成績の良し悪しから学生の資質を見ることはできません。
次に、これは履修行動だけでなく、課外活動でも同じですが、そもそも面接官は成果の高さや派手さ、珍しさよりも、その成果に至るまでに本人が取った行動や考え、学びなどに注目しています。
極端な話、自分なりに意図を持って考え、努力したが結果として成果にはつながらなかった場合、成果は問題ではなく、意図を持って行動したことが大事なのです。
最後に、大学は高校までと違い、行動の幅がぐっと広がって何に力を入れるかは個人の裁量が大きくなります。履修行動に最も力を入れる人もいれば、学業は必要最小限にして課外活動に最も力を入れる人もいるでしょう。
例えば「大好きなサークル活動に一番力をいれたかったから、授業は"楽単"(楽に単位が取れる授業)を選ぶようにした。だから単位は取れたが、成績は決して良くはない」という場合も、明確な意図を持った行動であり、学業という避けられない環境や義務への向き合い方の一つです。
このように成績(GPA)が悪いからといっても必ずしもNGではないですし、良いからといってそれだけで良しとされるわけではありません。大切なのは意図や目的をもって行動したことなのです。
履修行動と学び方から考える自己分析の7ステップ
では履修行動から自己分析を行う具体的な流れについてみていきます。大きく7つのステップに従って自己分析を進めてみましょう。
1.履修登録を見直して、なぜその授業を選んだか考える
まずは、自分の大学から、成績証明書を取り寄せたり、大学ポータルサイトを確認したりして、履修登録を見直してみましょう。そして、1つひとつの履修科目について、なぜその授業を選んだのか思い出してみてください。
履修科目を選んだ理由からは、あなた自身の価値観・興味関心の軸と、あなたがどんな意図・目的をもって履修行動をとっていたかが見えます。
2.授業をどのように受講したか書き出してみる
次に、実際それぞれの授業をどんな姿勢・スタンスで受講したかを考えてみましょう。授業の受け方からも、あなたが課題を与えられた時に、どのように取り組むかという仕事のうえで重要な資質が確認できます。
3.苦手な授業に出会ったときにどう対処したかを考える
大学授業には、必修科目と選択科目があるはずです。その中で特に必修科目の中には、苦手な授業もあったのではないでしょうか。苦手でしんどいと感じることに対して、どう向き合い対処したのか、という資質がここから特に確認できます。
4.もっとも力を入れて取り組んだ授業は何か考える
昨今、仕事において特定の領域での類まれな専門性や創造性が重視される場合もあります。採用面接の中でも、学生が自分の好きや得意なものに対してどのくらいオタク的に突っ込んで取り組んでいるかが確認されることが多くなってきました。
こういったオタク的探求心、好奇心、知的体力を持っている人を「ギーク(Geek)」と呼びますが、履修科目からこのギークさがアピールできるかもしれません。特にものすごく力を入れた授業があるか、またその授業にどれくらい力を入れたのか振り返ってみましょう。
5.履修行動から自分の価値観を明らかにする
これまで振り返ってきた履修行動のエピソードから、自分の興味関心の軸とモチベーション(やる気)の源泉を明らかにしてみましょう。こういった自分の価値観は特に「なぜ、その授業を選んだか」という履修選択の理由からもっとも見えやすいです。
例えば、「人の心に興味があって心理学や哲学を多めに履修した」や、「人と話すのが好きでグループワーク中心の授業を多めに履修した」など、皆さん自身の興味関心について考えてみてください。またモチベーションの源泉は「どこでやるかタイプ」、「何をやるかタイプ」、「誰とやるかタイプ」、「どうやるかタイプ」の4つに分かれます。
例えば、自分の興味ある分野の学問を中心に履修した学生は、「何をやるかタイプ」でしょうし、仲の良い友人たちと同じ授業を選んで切磋琢磨した学生は「誰とやるかタイプ」でしょう。自分はどんなことにやる気を感じて頑張れるのか、を考えてみましょう。
6.企業が求める資質と自分の能力や性格を考える
経団連の調査によれば、企業が採用選考時に重視する資質トップ5は「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」です。これらの資質を自分の履修行動の中から見つけてみてください。
例えば「コミュニケーション能力」の一つである「社交的である」ことは「授業中のディスカッションやグループワークでは自分が中心になって話をまとめることが多い」という事実から裏付けることができます。
7.企業分析を行う
ステップ5で明らかにした自分の価値観(興味関心の軸、モチベーションの源泉)をもとに、自分にとってどんな業界が良いか、どんな会社がよいか、どんな仕事が良いかを考えてみましょう。自己分析と企業分析はセットで行われるものです。どんなタイプの会社が自分の軸にあっているかをぜひ探し出してみてください。
いかがでしょうか。まとめると、履修行動から自己分析を行うというのは、「なぜその授業を選んだか」という履修選択の目的・意図と、「その授業をどう受講したか」という実際の行動から、自分の資質を見つけ出す、ということです。
繰り返しになりますが、成果=成績の良し悪しだけが重要なわけではないことを念頭に置いて、ぜひ一度自分の履修行動を振り返ってみましょう。
著者プロフィール:安藤健(あんどう・けん)
株式会社人材研究所シニアコンサルタント。人事のための実践コミュニティ「人事心理塾」代表。大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務、企業の面接官向けトレーニング、数多くの組織人事コンサルティングに従事。採用時に使用する「適性検査」の開発にも携わる。