「君子危うきに近寄らず」は、日本人になじみがあることわざのひとつです。しかし、正確な意味や使い方をあまりよく知らないという人は多いでしょう。
「君子危うきに近寄らず」は、ビジネスシーンでも使われる機会がある言葉ですので、意味や使い方を理解しておきたいですよね。
この記事では「君子危うきに近寄らず」の意味や使い方、類義語・対義語・英語表現について紹介します。語彙力を増やしたいとお考えの方は、ぜひご一読ください。
「君子危うきに近寄らず」の意味とは
「君子危うきに近寄らず」とは「徳のある者は自分自身を律して、危険な所に自ら近づこうとしない」という意味で使われることわざです。
「君子は危うきに近寄らず」と表現することもあり、どちらを使っても差し支えありません。
「君子」の意味
「君子危うきに近寄らず」には「君子」という言葉が使われていますが、現代ではあまり使われない言葉です。
「君子」には複数の意味がありますが、ここでは「学識や人格が共に優れている、立派な人物。人格者」という意味で使われています。
由来はわかっていない
「君子危うきに近寄らず」は「君子」という言葉が使われていることから、中国由来の表現だと思われることがあります。しかし、中国の古い文献にはこのような言葉は掲載されておらず、実際は違うという説が有力です。
こういった事情から、「君子危うきに近寄らず」は、はっきりとした由来はわかっていません。
「苦手なことを避ける」という意味でも使われることがある
本来「君子危うきに近寄らず」は「徳がある人は危険な所に自ら近づこうとしない」という意味です。しかしこの「危険な所に近寄らない」という意味が強調されると、本来の意味とは少し違う意味で使われることがあります。
自分の苦手なことや都合が悪いことなど避けたいことがある場合に、それらを回避する口実として冗談めかして「君子危うきに近寄らず」が使われます。
「君子危うきに近寄らず」の使い方・例文
「君子危うきに近寄らず」は、日常会話で頻繁に使う言葉ではないため、使い方がよくわからない人も多いでしょう。そこで「君子危うきに近寄らず」の使い方や具体的な使用例を紹介します。
教訓となる言葉としてよく使われる
「君子危うきに近寄らず」は「行動は慎重にした方がいい」という教訓や、「危険な場所には近づかない方がいい」など注意喚起をする際によく使われることがあります。
例えば「詐欺まがい・犯罪に巻き込まれそうな気配がする話などには乗らない方がいい」といった状況で使われる表現です。
うますぎる儲け話などに遭遇したときには「君子危うきに近寄らず」ということわざを思い出すことで、自制につながります。
教訓となる言葉としての使い方
「君子危うきに近寄らず」の具体的な使用例を紹介します。
・あまりにうますぎる転職の誘いに「君子危うきに近寄らず」という言葉が頭をよぎった
・大風が出ている日に出かけようとしたら「君子危うきに近寄らず」だよと警告された
・「君子危うきに近寄らず」なので、説教好きな人には話しかけないようにしている
このように「君子危うきに近寄らず」はビジネスシーンで使いやすい表現です。
「苦手なことを避ける」という意味での使い方
「君子危うきに近寄らず」は「苦手なことを避ける」という意味でも使われます。
・今日のランチミーティングは欠席することにしたよ。「君子危うきに近寄らず」だからね。
このような使い方もありますので、覚えておきましょう。
「君子危うきに近寄らず」の類語
「君子危うきに近寄らず」には、似た状況で使われる類語表現がいくつかあります。ここでは「君子危うきに近寄らず」の代表的な類義語についてみていきましょう。
触らぬ神に祟り(たたり)なし
・今日は部長の機嫌が悪そうだ。触らぬ神に祟りなしなので、なるべく近寄らないようにしよう
・今日は部長の機嫌が悪そうだ。君子危うきに近寄らずというように、なるべく近寄らないようにしよう
「触らぬ神に祟りなし」とは「面倒ごとにいらぬ手出しをするな」という意味があることわざです。「危険には近づかない方がいい」という意味の「君子危うきに近寄らず」と似た状況で使われます。
危ないことは怪我のうち
・危ないことは怪我のうちというから、台風の日にわざわざ出かけない方がいいよ
・触らぬ神に祟りなしなので、台風の日にわざわざ出かけない方がいいよ
「危ないことは怪我のうち」とは「危ないことをすると大きな過ちになりかねないため、最初から避ける方がいい」という意味のことわざです。「危険を避けた方がいい」という意味がある「君子危うきに近寄らず」と同じ状況で使われます。
李下(りか)に冠(かんむり)を正さず
・李下に冠を正さずという言葉のように、接待を受けるのは不正が疑われる原因になりかねないので避ける方がいいだろう
・君子危うきに近寄らずというので、接待を受けるのは不正が疑われる原因になりかねないので避ける方がいいだろう
「李下に冠を正さず」には「人から疑われるような行いは避けるべきだ」という意味があります。「君子危うきに近寄らず」より少し狭い意味ではありますが、言い換え可能な言葉のひとつです。
瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず
・瓜田に履を納れずというように、疑われるような行動は避けるべきだ
・君子危うきに近寄らずというように、疑われるような行動は避けるべきだ
「瓜田に履を納れず」は「疑われるような行動は避けなさい」という意味があることわざです。「慎重に行動すべき」という意味がある「君子危うきに近寄らず」と似た状況で使われます。
「君子危うきに近寄らず」の対義語
「君子危うきに近寄らず」には類義語が多いのと同様、反対の意味を持つ言葉もいくつかあります。ここでは「君子危うきに近寄らず」の代表的な対義語を見ていきましょう。
危ない橋も一度は渡れ
「危ない橋も一度は渡れ」には「堅実で安全なことばかり考えていても成功はない。冒険にも挑戦してみよ」という意味があることわざです。「危険を避けた方がいい」という意味の「君子危うきに近寄らず」とは反対の格言として使われます。
虎穴(こけつ)に入らずんば虎子(こじ)を得ず
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の意味は「危険を冒さなければ、大きな成功は得られない」です。「慎重に行動すべき」という意味を持つ「君子危うきに近寄らず」とは反対の意味として使われます。
「君子危うきに近寄らず」の英語表現
「君子危うきに近寄らず」と似た意味を持つ英語表現を紹介します。
・A wise man never courts danger.(君子危うきに近寄らず)
・Keep out of harm's way.(禍を避けよ)
・If you play with fire you get burned.(火遊びをすれば火傷する)
英語を使う機会があるなら、押さえておきましょう。
「君子危うきに近寄らず」は自分自身を律するときに使う言葉
「君子危うきに近寄らず」は「徳の高い人は自分を律するので、危険なことには近寄らない」という意味があることわざです。「苦手なことを避ける」という意味で使われることもあります。
「君子」という言葉が含まれていることから中国由来の言葉と考えられがちですが、実際の所はわかっていません。
「触らぬ神に祟りなし」など似た意味を持つことわざは多いので、あわせて覚えておきましょう。
「君子危うきに近寄らず」は、日本語として最低限覚えておきたい表現のひとつです。この記事で紹介した意味や使い方を参考に、日常会話で活用してみてください。