高齢の親を持つ人にとって避けては通れない話題、それが「親の死後にかかってくるお金」の話です。葬儀費用やお布施、お墓代など、どんな場面でいくらかかるのか、平均費用をご紹介します。また、死後にお金の面で慌てないためにも、「事前に準備しておきたいこと」もお伝えします。
■葬儀代・お墓代の平均はいくら?
葬儀費用の平均
人が亡くなると、お葬式代やお墓代など、多くの費用がかかります。自分が死んだあと、家族が困らないようにと、生命保険に加入してお金を残してくれる親もいますが、生命保険のお金はすぐには手元に入りません。加入している保険会社に連絡をして、必要書類をそろえた上で手続きをする必要があります。お葬式は待ってはくれませんから、事前にどのくらいかかるのか把握して、お金を準備しておくようにしましょう。
鎌倉新書が実施した「第4回お葬式に関する全国調査」(2020年)から、平均費用をみていきます。
・お葬式の費用(火葬場使用料、式場使用料を含む)
平均119万1900円
価格帯上位「100万円以上120万円未満」14.0%、「80万円以上100万円未満」13.6%
・葬儀の飲食にかかった費用
平均31万円 3800円
価格帯上位「10万円未満」32.3%、「10万円以上20万円未満」25.1%、「20万円以上40万円未満」20.1%
・葬儀の返礼品にかかった費用
平均33万7600円
価格帯上位「10万円未満」33.9%、「10万円以上20万円未満」22.1%、「20万円以上40万円未満」18.8%
・お布施の額
平均23万6900円
価格帯上位「1万円以上10万円未満」27.6%、「10万円以上20万円未満」22.7%
※お布施は、通夜、葬儀・告別式での読経や戒名などのお礼として僧侶に包むものです。
これらの平均額を合計すると約208万円になります。食事代やお布施なども含めた葬儀費用として200万円程度用意しておくといいでしょう。
お墓の費用の平均
お墓や仏壇の購入も大きな出費となります。前出の調査結果からみてみましょう。
・お墓の購入にかかった費用
平均135万1200円
価格帯上位「100万円~150万円」25.0%、「50万円~100万円」20.1%
・仏壇の購入にかかった費用
平均73万1600円
価格帯上位「25万円~50万円」29.1%、「25万円未満」27.7%、「50万円~100万円」23.2%
購入したお墓の種類は「樹木葬」が1位
お墓については、興味深いデータがあります。鎌倉新書が実施した「お墓の消費者全国実態調査(2022年)」によると、購入したお墓の種類は、「樹木葬」が41.5%で最多。次いで「一般墓」25.8%、「納骨堂」23.4%となっています。
樹木葬というのは墓石の代わりに樹木を墓標とするお墓です。価格や管理費が一般の墓に比べてリーズナブルで、承継者がいなくなってしまった場合にも、永代供養をしてもらうことが可能です。核家族化や生涯未婚率が進行している日本のニーズを捉えており、今後さらに需要が増えていくのではないでしょうか。
そのほかにかかる費用
お葬式、お墓以外にも以下のような費用がかかる場合も。
・相続のため行政書士などに依頼した費用
平均49万3000円
「25万円未満」が54.3%と、半数以上を占めています。
・遺言など弁護士への依頼にかかった費用
平均68万6100円
「25万円未満」が52.9%と、半数以上を占めています。
・遺品整理にかかった費用
平均47万1700円
「25万円未満」が62.3%と、6割以上を占めています。
・空き家処分にかかった費用
平均110万4100円
価格帯上位「25万円未満」37.4%、「25万円以上50万円未満」12.1%、「50万円以上100万円未満」13.9%、「100万円以上150万円未満」10.0%
■事前に準備しておきたいこと
現金の用意
意外に知られていないかもしれませんが、葬儀費用を親の預貯金から引き出そうと思っても、亡くなった時点で預貯金は遺産となるため、遺産分割の手続きが終了するまでは原則、引き出すことはできません。
しかし、2019年の相続法の改正により、「預貯金の仮払い制度」が新設され、一定の金額であれば相続決定前に引き出すことが可能となりました。引き出せる金額は、「相続開始時の預貯金残高×1/3×請求する相続人の法定相続分」までで、金融機関ごとに150万円が上限となっています。これは銀行の窓口で、直接払い戻しを受けることができます。
このように、親が健在なうちに親の預貯金(どの銀行にいくらあるのか)、加入している保険会社などを聞いておき、現金化できる手だてを整えておきましょう。あとは、葬儀代を立て替えられるくらいの貯金をしておけるといいですね。
葬儀やお墓について決めておく
こちらも親が健在なうちに意向を聞いておくと、いざという時に慌てずに済みます。葬儀社には「互助会」というシステムがあり、加入者が毎月一定額の掛金を前払金として払い込むことによって、葬儀の際に割引などのサービスを受けられるものです。
親がある葬儀社の互助会の会員になっていたことを子どもが知らずに、別の葬儀社で葬儀をしてしまったら、元も子もありません。葬儀社は死後すぐに手配する必要があるので、あらかじめ依頼しておくところを決めておくとスムーズです。
お墓についても同様です。先祖代々のお墓に入る場合は、戒名彫りと納骨費用で済みますが、新たに購入する場合は、お墓の種類・場所・金額など、本人の意向を含めて決めておくといいでしょう。
遺言書を書いてもらう
残された家族が相続でもめないよう、親に遺言書を作成しておいてもらいましょう。遺言書に相続財産を明記することで、相続人の相続手続きの負担も軽減できます。
書くことで相続財産がどれくらいあるかを把握できるので、相続税の対策を考えるきっかけにもなります。相続財産が基礎控除を超えそうだったら、生前贈与などの節税対策も有効になってきます。不動産の価額や相続税の計算に迷ったら、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
■まとめ
親の死後の話を親が元気なうちにしておくことは、大事なことと理解していても、なかなか言い出しにくい話題だと思います。しかし、ここを怠ると、なんの準備もなくその日が訪れた時に、余裕のない中で葬儀を決めたり、手続きをしたりすることになり、思わぬ失敗につながります。
「友達の親が亡くなってこんなことがあったんだ……」といった話題から、話のきっかけを作るのはどうでしょうか。親の意向がわかってくると、それに対しての準備ができ、いざという時に余裕を持って行動できます。今度、親と会う際にたくさん話ができるといいですね。