米労働省が2023年1月6日に発表した12月雇用統計の主な結果は、【1】非農業部門雇用者数22.3万人増、【2】失業率3.5%、【3】平均時給32.82ドル(前月比+0.3%、前年比+4.6%)という内容であった。
(1)12月の非農業部門雇用者数は前月比22.3万人増と市場予想の20.5万人増を上回ったが、前月の修正値25.6万人増から伸びが鈍化した。基調を判断する上で重要視される3カ月平均の増加幅は24.7万人で、2021年1月以来ほぼ2年ぶりの低水準となった。
(2)12月の失業率は前月の修正値から0.1ポイント低下の3.5%となり、2020年3月や2022年9月に記録した約50年ぶりの低水準に並んだ。市場予想は3.7%だった。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は、前月の6.7%から6.5%へ一段と低下した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は62.3%で、予想および前月の修正値である62.2%を上回った。
(3)12月の平均時給は32.82ドルと前月の修正値32.73ドルから0.09ドル増加。伸び率は前月比+0.3%、前年比+4.6%と、いずれも市場予想(前月比+0.4%、前年比+5.0%)を下回った。前年比の伸び率は2022年で最も低く、2021年8月以来の水準に鈍化した。
米12月雇用統計は、【1】非農業部門雇用者数が予想を上回る伸びとなり、【2】失業率も予想以上に改善したが、【3】平均時給は予想を下回る伸びにとどまった。米国の雇用情勢は引き続き堅調ではあるが、インフレに直結する賃金の上昇ピッチは和らいだ。これを受けて市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが近く打ち止めとなり、その後数カ月で利下げに転じるとの見方を強めた。債券市場では米長期金利が大幅に低下。ドルは主要通貨に対して下落した。一方で、米国株式市場はインフレ鈍化への期待感から大幅高となった。米12月雇用統計を消化した市場の関心は、1月12日に発表される米12月消費者物価指数(CPI)で実際にインフレ鈍化が確認できるかに移ると見られる。