そして実際にトポロジカル導波路として動作することを確かめるため、走査型マイクロ波インピーダンス顕微鏡と呼ばれる特殊な顕微鏡を用いて、表面弾性波の伝搬する様子の可視化が行われた。その結果、約2.4GHzという高周波数の表面弾性波において、2つの構造の境界に沿って伝搬していく様子が観測されたという。また、周波数を変えた実験や理論計算の解析を行ったところ、今回作成された金属パターンがトポロジカル音響導波路として働いていることが確認されたとする。

  • (a)トポロジーの異なる二種類の微細金属パターンA、Bの走査型電子顕微鏡像。(b・c)走査型マイクロ波顕微鏡で観測した凹凸像と2.38GHzの表面弾性波に由来するコントラスト

    (a)トポロジーの異なる二種類の微細金属パターンA、Bの走査型電子顕微鏡像。(b・c)走査型マイクロ波顕微鏡で観測した凹凸像と2.38GHzの表面弾性波に由来するコントラスト(出所:東北大プレスリリースPDF)

今回の研究成果は、表面弾性波デバイス上に金属パターンを描画するという比較的簡単な手法でトポロジカル音響導波路が実現されたもの。この動作周波数の約2.4GHzはこれまで報告されているトポロジカル音響導波路の中で最も高く、また表面弾性波デバイスとも親和性がある点が大きな特徴だとする。

研究チームによると、今回の成果で得られた導波路を組み込むことで、超低消費電力の表面弾性波デバイスの実現につながることが期待されるという。その一例には、携帯電話のバッテリー持続時間の大幅な延長などが挙げられ、さまざまな電子機器の高機能化に貢献できると考えられるとする。

また、導波路は音波を空間的に閉じ込めて運ぶことも可能であり、その特徴を利用して、表面弾性波とほかの量子ビットを高効率に結合させるなど、量子コンピューティングの要素技術としても応用できる可能性もあるとした。