「この俳優をもっとドラマで見たい」「あの役がよかったから早く次も見たい」「ゲスト出演ではなくてレギュラー出演を!」「若手の中では一番演技がうまいのでは?」、そう思ったことはないだろうか。

地上波全国放送のドラマをすべて見続けているドラマ解説者・木村隆志が、マニアックになりすぎないよう気をつけつつ、演技や視聴者ニーズなどのさまざまな観点から「今年ドラマで見たい」俳優を挙げていく。

すでにキャスティングの決まっている作品も多く、予算やスポンサーなどの事情などもあるのは承知だが、制作サイドにメッセージを送る意味も込めてランダムに挙げていきたい。

■昨夏から知名度急上昇のベテラン

  • 夏帆

「今、最もドラマフリークが気になっている」のは、岡部たかし(50)ではないか。これまでは出演作の多い業界内では知られたバイプレーヤーだったが、一般的に顔と名前が一致するような存在ではなかった。

しかし、昨年は夏以降、世間の認知度が急上昇。まず8~9月に『あなたのブツが、ここに』(NHK)で主人公が務める運送会社の愛すべきヘタレ社長を演じて人気を得た。さらに10~12月には『エルピス-希望、あるいは災い-』(関西テレビ・フジテレビ系)で、ハラスメント三昧だが人情あふれるプロデューサーを熱演。とりわけ終盤まで沈黙していた主人公の心を動かしたスタジオセット破壊のシーンはインパクト十分だった。

昨秋のドラマでもう1人、「もっと見たい」と思わせてくれたのが夏帆(31)。実績も知名度も十分だが、近年はBSや配信ドラマへの出演が多く、民放地上波では序列を下げた作品が続いていた。

しかし、昨秋の『silent』(フジ系)では、聴覚障害者の女性を好演。主人公をめぐる四角関係の1人として中盤以降の物語を大きく動かし、何より流れるような手話と切ない表情で視聴者の心をつかんだ。出演作こそ多いが、民放ゴールデン・プライム帯での主演は一度きりで2008年の『4姉妹探偵団』(テレビ朝日系)までさかのぼるだけに、『silent』が返り咲くきっかけになるかもしれない。

■『六本木クラス』『鎌倉殿の13人』で名を上げた若手

  • 平手友梨奈 撮影:宮田浩史

同じく昨年の連ドラで「もっと見たい」と思わせた若手女優は、『六本木クラス』(テレ朝系)でヒロインを務めた平手友梨奈(21)。「事実上の主役」「レベチだった」などの絶賛が飛び交う技量と存在感を見せたが、依然として出演作が少なく、女優としての仕事増が期待されている。昨年末に韓国系の新事務所に移籍したばかりだけに、どんな活動スタンスになるのか注目を集めるだろう。

  • 生見愛瑠 撮影:蔦野裕

バラエティではおなじみだが、実はそれ以上に演技の仕事が待望されているのは生見愛瑠(20)。2021年秋に『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)で、ゴールデン・プライム帯のドラマ初出演を飾ると、昨夏にも『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』(TBS系)に出演し、その演技が称賛を集めた。初の映画出演となる『モエカレはオレンジ色』でもヒロインを務めたが、演じるたびに「もっと女優の仕事を増やしてほしい」という声が業界内外から上がっている。

  • 蒔田彩珠 撮影:加藤千雅

『妻、小学生になる。』(TBS系)で主人公の一人娘を演じた蒔田彩珠(20)も、業界内で「もっと見たい」と言われ続けている一人。是枝裕和監督から高い評価を受け続けるなど、その技量は世代トップクラスとして認知されているが、連ドラ出演はまだまだ少なく、次の出演や主演作が待たれる。

  • 寛一郎

男性の若手俳優では、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)で迫真のシーンを演じた寛一郎(26)と柿澤勇人(35)。寛一郎は公暁、柿澤は源実朝を演じ、鶴岡八幡宮での美しくも壮絶な暗殺劇が視聴者を釘づけにした。両者とも民放連ドラの出演は数えられるほどだけに、今年から急増するかもしれない。

  • 水上恒司

もう1人、祈りを込めて「もっと見たい」若手俳優に挙げておきたいのが、岡田建史あらため水上恒司(23)。所属事務所との契約解除を求める裁判の結果、昨年9月から本名の水上恒司として活動している。しかし、一昨年は3作の連ドラに出演したが、昨年の連ドラ出演はゼロ。ファンが多く、将来を嘱望されていただけに、民放地上波のドラマでも元気な姿を見せてほしいところだ。

■義時の悪妻、雪女、ワカコ、子役・舞

  • 菊地凛子

バイプレーヤーの中で「もっと見たい」と思わせるのは、菊地凛子(41)。昨年は『鎌倉殿の13人』で主人公・北条義時の3人目の妻・のえ、『PICU 小児集中治療室』(フジ系)で北海道知事を演じたが、民放連ドラ出演は4年ぶりだったなど、「めったに出ない」ため、より凄みを感じさせられた。

  • 島崎遥香 撮影:宮田浩史

その他の女優では、『雪女と蟹を食う』(テレ東系)で妖艶な演技を見せた入山法子(37)、現在放送中の『私のシてくれないフェロモン彼氏』(TBS系)での演技が業界内で「あんなにうまかったっけ?」と噂の島崎遥香(28)、『ワカコ酒』(テレ東系)以外の演技も見たい武田梨奈(31)。

男性俳優では、『あなたのブツが、ここに』でヒロインに猛アプローチする底抜けに明るいトラック運転手を演じた関西ジャニーズJr.・Aぇ! groupの佐野晶哉(20)、実績十分だが以前より出演数も役柄も控えめの細田善彦(34)、同じ事務所の俳優たちが大活躍する中で単発出演が目立った葉山奨之(27)。

  • 葉山奨之

最後にあげておきたいのは、放送中の朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK)でヒロインの子役時代を演じている浅田芭路(9)。序盤の物語をけん引し、福原遥にバトンタッチしたときは「子役ロス」の声があがるほど視聴者を引きつけていた。すでに朝ドラは3度目となる経験豊富な子役だが、現「もっともっと見たい」と思わせる子役特有の輝きがある。