「高い買い物をしているつもりはないのに、気づいたらお金がない」と感じることはないだろうか。
あるいは、「貯金をしたいのはやまやまだけど、ガマンは嫌だ」と思っている人もいるはず。「節約」と言うとストイックなイメージがあるが、むしろ自分らしさを大事にしながら"ゆるく"取り組んだほうがうまくいくこともある。
『HSPだけど500万円貯めた! 手取り16万円OLのゆる貯金ライフ』の著者で、3年間で500万円の貯金に成功した「もけけ」さんに、ゆるいミニマリスト節約ライフの実践方法を聞いた。
■社会の厳しさに打ちのめされ、貯金スタート
――社会人になってから3年で500万円の貯金に成功されたとのことですが、500万円を貯められるまでの経過を教えてください。
現在社会人4年目で、事務の仕事をしています。収入は手取り16万円ほどですが、社会人になってからの3年間、給料から毎月5万円前後を貯金、ボーナスは全額貯金して500万円まで貯まりました。
特に新型コロナウイルスが流行し始めた頃はほぼ引きこもっていたので、出費がかなり抑えられました。また、ありがたいことにボーナスも毎年いただけて、すべて貯金に回したため、この速度で貯めることができました。
――そもそも貯金生活を始めたきっかけは?
貯金を始めるきっかけになったのは、社会人になって仕事をするようになったことです。悠々自適なお気楽学生生活から一転、働き始めたことで社会の厳しさに打ちのめされました。
「できることなら働きたくない。働かずに生きていくためにはどうすればいいか」と考えた結果、「支出を抑えればそのぶん稼がなくても生活できる」という結論に達し、貯金を始めました。
「3年間で500万円」という目標があったわけではないのですが、お金がどんどん貯まっていくのが楽しくて、「貯められるだけ貯めよう」という感じでしたね。
■頑張りすぎずに"ゆるく"始めるのが長続きのコツ
――具体的な目標がないと、貯金を始めても途中で挫折してしまう人も多いと思います。もけけさんが、楽しみながら貯金を続けられたのはなぜでしょうか?
貯金額の目標はありませんでしたが、毎月の予算を決めていて、予算内でのやりくりをちょっとしたゲームのような感覚で楽しめたからだと思います。
あとは、貯金額の目標がなかったからこそ、節約生活が日常になったというのもあるかもしれません。今は節約が当たり前になっているので、「頑張っている」という感覚がないんです。
節約生活を始めるときは「頑張ろう!」と気合いを入れがちですが、頑張りすぎると長続きしません。むしろ"ゆるく"始めて、日常を節約に慣れさせれば、だんだんそれが普通の状態になってくるので、無理なく続けられるのかなと感じています。
――日々の生活を楽しみながら、無理なく貯金を続けるコツをお聞かせください。
あまりガチガチに制限しないことです。例えば、趣味などにお金を使わず必要最低限のものだけで生活すれば、お金は貯まりますが心がすさんでしまいます。
暮らしを楽しむためにも、たまには趣味に散財したり、ちょっと贅沢なご飯を食べたりして節約を忘れるのも大事だと思います。
■「ノーマネーデー」「チートデー」でメリハリをつける
――節約をゲーム感覚で楽しむための自分流の工夫はありますか?
「ノーマネーデー」と「チートデー」です。その日1日、1円もお金を使わない日を「ノーマネーデー」、反対に、節約を気にせず自分が好きなこと、楽しいと思えることにお金を使うのを許す日を「チートデー」と呼んでいます。
私の場合、たいてい平日は「ノーマネーデー」、休日は「チートデー」にしています。平日は仕事が終わったら寄り道せずに家に帰って1円もお金を使わないようにして、そのぶん休日は節約を気にせず、好きなことにお金を使ってストレスを発散するようにしています。
仕事帰りになんとなくコンビニに寄ってしまう人もいると思いますが、「ノーマネーデー」を作ることで、こうした「なんとなく」の出費を防ぐことができます。慣れてくるとゲーム感覚になってくるので、「ノーマネーデー」を増やしたくなってきます。
今は、月の15日以上は「ノーマネーデー」になっていますね。平日を「ノーマネーデー」にするために、職場にお弁当を持っていったり、カップスープを職場にストックしたりしています。
――「日々の生活を楽しみながら無理なく貯金する」という現在のスタイルを確立するまでには、試行錯誤があったのでしょうか?
今は「節約しつつも楽しいことをする」という生活ができていますが、ここにたどり着くまでは右往左往していた気がします。
貯金生活をスタートした当初は、家計簿をつけ始めたことで自分が思いのほかお金を使っていることに気づいたものの、なかなか思うように支出が減らせませんでした。
最初の段階を過ぎると、次は反対に趣味にまったくお金を使わないなど、極端な節約をするようになってしまったんです。もちろん、できるだけ支出を抑えたほうがお金は貯まりますが、極端な節約に走ってしまうと、何のために生きているのかわからなくなってくるので、「楽しみもないと続けられないな」と痛感しました。
■ミニマリストも"ゆるく"がモットー
――現在の貯金スタイルを確立する中で、本など参考にしたものはありましたか?
節約に関しては特に参考にしたものはありませんが、ミニマリストになったことが節約に大きく影響していると思います。
ミニマリストになったのは、ミニマリストの方のYouTube動画を見て「こんな暮らしいいな」と憧れたのがきっかけでした。
――ご自身を「ゆるいミニマニスト」と定義されていますが、ガチガチのミニマリストと比べて、どんな違いがあるのでしょうか?
YouTubeで情報発信をされているミニマリストの方は、「食器は2つだけ」「書籍はすべて電子化」など、極限までものを減らしている方も多いです。
ただ私の場合は、マキシマリストの頃に比べると圧倒的にものは少なくなりましたが、自炊をするのでキッチン用品が充実していたり、本は紙のほうが好きなので紙で持っていたりと、「ものを減らすこと」を一番に考えているわけではありません。
自分が快適に暮らせるくらいにものを減らせればいいなという意味で、「ゆるいミニマリスト」と呼んでいます。
■ミニマリストは節約との相性も抜群
――以前はものが多い「マキシマリスト」だったとのことですが、ゆるいミニマリストになってよかったことは?
わざわざ片づけなくても常に部屋がスッキリしていることです。マキシマリストだったときはとにかくものが多かったので、散らかしていなくても常に部屋がごちゃごちゃしていて、心も落ち着きませんでした。
「部屋の乱れは心の乱れ」とよく言いますが、マキシマリストからミニマリストになって、それを実感しています。部屋がきれいだと自然とやる気も湧いて、生産的な日々を送れるし、いいことしかありません。
また、ミニマリストになると節約家にもなれます。
1度ものを減らすと、無駄に増やしたくなくなってくるので、ものを買うときにすごく慎重になるんです。「部屋のインテリアに合うか」「触り心地はどうか」といったことはもちろん、捨てるときの苦労なども考えるので、自然とものを買わなくなりましたね。
――ミニマリストに憧れはあっても実践するのは難しいと感じている人も多いはず。そんな人は、第一歩としてなにから始めればいいのでしょうか?
何事も完璧を目指すと挫折してしまうので、まずは"ゆるく"狭く始めて徐々に範囲を広げていくといいと思います。
とりあえずゴミを捨てて、その後に「使っていないもの」「気に入っていないもの」と、徐々にステップアップしていきます。「今日は食器」「今日はトップス」という風に、ジャンルを決めて少しずつ減らしていくといいのではないでしょうか。
一度にすべてを手放す必要はなく、ゆっくり焦らず自分のペースで必要かどうかを見極めていくのがおすすめです。私もミニマリストに憧れてから今の状態になるまで、3カ月以上かかりました。
■「こうなりたい!」という憧れが原動力に
――「捨てるのが苦手」という人も多いですが、どうやってものを減らすことに成功したのですか?
私の場合、YouTubeでミニマリストの方の生活を見たときに「こうなりたい!」という強い憧れを感じたので、捨てることへのためらいがあまりなかったんです。「自分がなりたい状態を見る」というのは、ものを減らす原動力になると思いますね。
まずは賞味期限が切れた食べ物など、明らかにいらないものを捨てて、その次にあまり気に入っていないものを捨てていきました。
そうやって、不要なもの、思い入れがないものを捨てていくうちに、だんだん部屋がスッキリしてきます。そうなると「もっとスッキリさせたい」と思うようになって、より難易度の高いものも捨てられるようになりました。
自分にとって心地よいことを大切に、「節約」と「楽しみ」のバランスを取りながら、無理なく貯金生活を続けている「もけけ」さん。次回は、「なんとなく買い」「衝動買い」をなくし、自分にとって本当に価値のあるお金の使い方をするためのポイントを聞く。