クリスマスにお正月と、年末年始はいつもより食べすぎてしまう時期。そこで気になってくるのが「正月太り」。毎年気を付けていても、気が付いたら体重が増えてしまう……という経験は誰しもがあるのではないでしょうか。ただの正月太りのはずでも、その状態が続くと肥満やメタボへつながり、健康へ影響してしまうかもしれません。今回は正月太りについて医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センターの中路幸之助先生にお話をうかがいました。

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――「正月太り」はなぜ起こってしまうのでしょうか

中路先生:正月太りには、いくつか原因があげられます。まず、年末年始に行われる行事があります。コロナ禍で機会は少なくなったとはいえ、年末年始は忘年会や新年会、旅行や帰省してお正月に家族がそろって過ごすことが多いと思われます。その際に普段にはないゴージャスな料理やアルコールを皆さんで食べたり飲んだりして、短い休みの期間にカロリーオーバーになり体重がいっきに増えてしまうことが最大の原因と考えられます。

また、そういう時期は一年で寒い時期にあたり、室内へ閉じこもりがちです。散歩などの運動がおろそかになりがちで、消費カロリーの低下がしてしまうこともその原因の一つと考えられます。

――肥満は万病のもととも言いますが、肥満が引き起こす健康への影響を教えてください

中路先生:肥満とは「体脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態」と定義されます。長い間、脂肪を構成する脂肪細胞はあまったエネルギーを中性脂肪として蓄える貯蔵庫のような働きしかしていないと考えられてきました。

しかし最近の研究では脂肪細胞が多くの生理活性物質(アディポサイトカイン)を産生していることが判明し、それらが糖尿病、高血圧、脂質異常などの多種多様な疾患を発症させることがわかってきました。また.がんや認知症も肥満症患者で起こりやすいことがわかってきています。

――お正月太りを予防するために何をすればいいでしょうか

中路先生:お正月太りを予防することはなかなか難しいことではありますが、いくつか工夫があります。まず規則正しい食生活です。朝食や昼食を抜いたりして夕食に一度にドカ食いをすると血糖値が急上昇し、次いでこの血糖値を下げようと、インスリンが大量に分泌されます。インスリンは糖を脂肪に変える働きがあるため、脂肪が付けきやすくなります。1日3食の規則正しい食生活をこころがけましょう。

またよく噛んで食べることで脳の視床下部にある満腹中枢に刺激が伝わり、満腹感が得られ、食べすぎを防ぐことが可能です。お正月に夜更かしなどをして睡眠不足が続くと自律神経系のコントロール機能ができにくなり、食事量の増加をきたし肥満の原因になると考えられています。十分な睡眠をとりましょう。そしてアルコールは食欲を増す作用があるため控えめにしましょう。

――すでにお正月太りをしてしまった……という場合、解消するためのコツを教えてください

中路先生:お正月太りを解消するために「食べない」方法は得策ではありません。急に食事を抜いてしまうと、かえって次の食事の吸収が早まり、逆効果となります。また炭水化物を意図的に抜くと体が酸性に傾き危険な状態になることがあり注意が必要です。

お正月太りを解消する良い方法はお粥などの「消化の良いもの」を食べることです。日本ではお正月開けに七草粥を食べる慣習がありますが、これは誠に理にかなった風習です。胃腸に負担をかけずに栄養素を摂ることが可能です。コロナ禍のなか一年の無病息災の願いを込めてありがたくいただきましょう。

――ありがとうございました

監修ドクター:中路 幸之助先生

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター/米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医/日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医


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