毎年ニュースになる餅による死亡事故。消費者庁によると、餅による窒息死亡事故43%が、餅を食べる機会が増える1月に発生し、特に正月三が日に多いことが判明しています。おいしいお餅も時には凶器になってしまうことも。家庭で餅を食べる際の注意点を名古屋大学医学部附属病院の竹内想先生にお伺いしました。
――毎年お正月になると餅による事故が報道されています。どうして餅は窒息事故の原因になるのでしょうか
竹内先生:高齢者は歯の機能が衰え、噛む力も弱くなるため、口の中で食べ物をかみ砕いて小さくすることが難しくなります。また、高齢になるほど唾液の分泌量が減り、飲み込む力も弱くなるので、食べ物をスムーズに喉の奥に送って飲み込むことが難しくなります。
さらに、万一喉に食べ物が詰まった時に、咳などで押し返す力も弱くなるため、高齢になるほど窒息事故のリスクが高くなります。餅は温度が下がるほど固くなる特性があるため、お椀の中で柔らかくても口に入れると固くなるという性質があります。
――餅の事故は高齢者に多い印象ですが、どの年代でも起こりうることなのでしょうか
竹内先生:65歳以上の餅または餅を含むものによる窒息事故による死亡者数は平成30年で363人、令和元年で298人と2年間合計で661人でした。このうち43%が1月、特に正月三が日に死亡事故の多くが発生しています。
年齢別では80~84歳、85~89歳で死亡者数が多いですが、お子さんでも同様の事故が起こる可能性はあります。
――餅による窒息事故を防ぐために気を付けることや、餅を提供する時のポイントを教えてください
竹内先生:下記のような対策が有効と考えられます。
・餅は、小さく切り、食べやすい大きさにしてください。
・お茶や汁物などを飲み、喉を潤してから食べましょう。(ただし、よく噛まないうちにお茶などで流し込むのは危険です)
・一口の量は無理なく食べられる量にしましょう。
・ゆっくりとよく噛んでから飲み込むようにしましょう。
・高齢者が餅を食べる際は、周りの方も食事の様子に注意を払い、見守りましょう
――もしも餅を喉に詰まらせた場合、どのような症状が現れるのでしょうか。対処法と合わせて教えてください
竹内先生:窒息のサインとして、親指と人差指で喉をつかむ仕草が「窒息のサイン」として知られています。異物を除去するための方法として、腹部突き上げ法と背部叩打法があります。
反応がなく意識を失っている場合は、異物除去よりも心肺蘇生法を優先して行うことが大切です。
監修:竹内 想(たけうち そう)先生
名古屋大学医学部附属病院。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積みました。現在は主に皮膚科医・産業医として勤務しています。
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