採用動向は活発に推移
そもそも、2022年の採用市場はどんな動向だったのか。マクロの視点からみてみましょう。厚生労働省が2022年11月29日に発表した2022年10月の全国 有効求人倍率(季節調整値)は1.35倍。新規求人倍率は2.33倍と前月より増加しています。
昨年度から2022年10月までの推移をみると、有効求人倍率は緩やかに右肩上がりで推移。月間有効求職者数は減少傾向になり、採用市場はコロナ禍から加速度的ではないもの緩やかに回復、成長してきています。
求める人材と働き手の意識が大きく変化
もう少し具体的にミクロの視点で考察していきましょう。企業により濃淡はありますが、過去最高の求人数をあげる企業も増加。また、単に物理的な人手不足だけでなく、求める人材要件も次の4つのポイントを中心にシフトしているのです。
DX人材の需給がひっ迫
SDGs、カーボンニュートラル対応、Web3、メタバース、AI等のテクノロジーの急速な発達に伴い、ビジネスモデルの変更が強く求められたり、デジタルを活用して顧客体験を向上させ、新たなデジタル戦略の実現の加速化も必要となったりしました。
その結果、DX人材に焦点が当たり、引く手あまた状態は続いています。
リスキリング前提の採用が増えた
従来のように、既存事業を太くする人材だけでなく、ビジネスモデルをテクノロジーの活用で大きく変えていける等、「変革人材」のニーズが高まりました。
ゆえに、同業・同業種の職務経験を重視した即戦力採用に加え、異業界・異職種での経験、課題設定力・変化適応力、多動力など、変化を牽引できるなどのポータブルなビジネススキルを有する人材の採用ニーズが高まっています。
そして、業界や職種独自の知識・専門性は入社後にリスキリングすればいいという考え方が広まった結果、変革人材の経験や素養があれば、経験年数の緩和、業界未経験採用、職種未経験採用の枠が拡大したことも2022年の特徴です。
ジョブ型採用で年齢の枠が薄くなった
募集するポジションの職務記述書に書かれた職能要件にフィットすれば採用するケースが増えてきました。その結果、ミドル・シニア層の年齢の枠が外れ、ジョブにフィットすれば何歳でも採用されるように。
さらにミドル・シニア層だけでなく、若手社員を抜擢する採用も増加し、いわゆる「ジョブ型採用」へのシフトが見られたのも今年の特徴です。
働き方の自由度の有無が採用に直結
リモートワーク、副業希望者の対応や採用といった、働き手のライフスタイルやライフワークに寄り添った環境を提供できる企業とそうでない企業の人材引き付け格差が如実になったことも大きなトレンドです。
長引くコロナ禍で「会社への将来の不安」を感じ、人生を見つめ直し、「同じ人生ならやりたいことを仕事にしたい」と考えるビジネスパーソンが一気に増えました。
年齢に関係なく、自分の生き方に根差したキャリア展望と成長機会を強く求めるようになり、それが満たされないなら、所属する会社で評価されていてもサクッと転職する動きが今年は顕著でした。
コロナ禍による出社制限などが緩和され、「毎日出勤する」など以前の働き方に戻したことで、優秀な社員が辞めていく現象はよく見られました。社員が望む仕事の選択と働き方にどこまで企業側が寄り添えるかが、人材の採用・確保に大きな影響をもたらすことになったのです。
加えて、コロナ禍で強制的に求められた「リモートワークでの実務経験」を経て、一人前以上の実力があれば仕事に支障がないと気付いた人材が地方移住を決め、リモートで働ける地方の会社の人気が高まった一年でもありました。
まとめ
2022年はコロナ禍に慣れ、経済回復に舵が切られた一年であり、同時にビジネスの変化を加速させ、一人ひとりの「働くことへの」意識も大きく変えました。
この傾向は2023年も続くことが想定されます。ITエンジニアでなくてもアプリをはじめてクロノロジーをどう活用するか、子どもの頃から身近に使っていた若い世代ほど有利な時代に突入しています。
ネットや口コミで企業の実態はさらされるようになったこともあり、企業が「選んであげる」時代から、「選んでくれてありがとう」と企業と個人が対等で健全な環境を整備せざるを得なくなり、キャリアや働き方の選択肢は求職者のニーズを組んでくれる、いい時代の幕開けになるでしょう。