「ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所」では、グローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を定期的に発信している。今回は、第二言語の語彙習得について研究を行い、「英語は決まり文句が8割」「英単語学習の科学」等の書籍を出版されている立教大学の中田達也准教授に、「英単語の効果的な学習法を考えるときのポイント」についてインタビューを行った。

  • 立教大学の中田達也准教授

語彙の知識は、「広さ(サイズ)」と「深さ」に分けることができ、「広さ」は単語数。「深さ」は、それぞれの単語についてどれくらい深く知っているかという質的な側面だという。以下の表「語彙知識の九つの側面」は、一番広く知られているPaul Nationのフレームワークをわかりやすく示したもの。

  • 「語彙知識の九つの側面」

英単語の効果的な学習法を考えるときのポイント7つは以下の通り。

ポイント1 知識の広さ/深さ
知っている単語の数が大切か? その単語についてたくさん知っていることが大切か?
ポイント2 単語の種類
さまざまな意味を持つ基本的な単語か? 一つの和訳を覚えれば役立つ単語か?
ポイント3 知識の種類
意味の知識を優先するか? スペリングの知識を優先するか?
ポイント4 アウトプットの種類
単語を見て意味がわかればいいのか? 自分で単語を思い出す必要があるのか?
ポイント5 和訳/英訳
英語を見て和訳がわかればいいのか? 和訳を見て英単語がわかればいいのか?
ポイント6 どれくらい長く覚えていたいか
明日のテストで点数が取れればいいのか? 将来使えるようになりたいのか?
ポイント7 どの学習段階か
いま初めて覚えようとしているのか? すでに何回も復習しているのか?

学習の方法には、例えば、和訳を通じて覚える、文脈と一緒に覚える、定型表現で覚える、見て覚える、書いて覚える、和訳の練習をする、英訳の練習をする、短期間で集中的に覚える、時間を空けて復習する など、さまざまな学習方法がある。

・たくさんの単語を覚えやすいけど使えるようにはならない
・使えるようになるけど時間がかかる
・短期間で覚えやすいけどすぐに忘れてしまう
・記憶に定着しやすいけど途中でやる気がなくなってしまうかもしれない

このように、どの学習方法にもメリット・デメリットがあることが語彙習得の研究成果からわかっている。つまり、誰にでもどんなときにも効果的、という万能な「英単語の覚え方」はないということ。重要な点は、どの学習方法がベストかということではなく、上記に記した7つのポイントを確認しながら、何をもって「効果」とするかを考え、いま優先するべき学習方法を判断したり、必要に応じて異なる学習方法を組み合わせたりすることだという。

また、今回の焦点ではないが、学習効率や記憶の定着だけではなく、学習のモチベーションが上がるか、学習を継続しやすいか、ことばの文化的背景に興味が湧くか、学習者の年齢に適しているかなど、さまざまな視点で学習方法の効果を評価することも必要だという。 (取材:IBS研究員 佐藤有里)