具体的にはロングリード技術を用いて、ベニクラゲのゲノムDNAを解析。そして、後生動物に保存された遺伝子セットの92.4%が網羅されているゲノム塩基配列情報の取得に成功したとする。この結果は、これまでに発表されているほかの刺胞動物のゲノムよりも網羅性が高いため、より詳細な解析ができるようになったという。また、その後の解析から、ベニクラゲのゲノムの大きさは約4億塩基対、遺伝子数は2万3000前後と推定されたとする。この得られた塩基配列情報は、データベース「Turritopsis Genome DataBase」にて公開されたという。

  • ベニクラゲの生活環

    ベニクラゲの生活環。一般的なクラゲと同様のサイクル(橙矢印)と、実験室で人工的に起こさせた脱分化・再分化サイクル(青矢印)。IからIIIは実験に使用されたステージ、〇はサンプリングポイント。I:枝分かれのない個虫。II:団子状細胞塊。III:走根の出た細胞塊。Iの切断直後(0時間)から、3、6、9、16、20、24、33、51時間後の細胞塊が採取され、RNA-Seq解析が行われた (出所:かずさDNA研究所プレスリリースPDF)

さらに成熟したクラゲからの若返りの成功率はそれほど高くないため、より簡単に脱分化・分化させることができる、枝分かれのない個虫の切断からのサイクル実験として、RNA-Seq解析を用いた遺伝子の発現解析の結果から、この過程で多く発現している遺伝子は、ベニクラゲ特有の機能を持つ可能性が見えてきたとしており、今後、これらの遺伝子を中心に若返り機構の解明が進むことが期待されると研究チームでは説明している。

なお、今回のベニクラゲのゲノム解読成功により、ほかのクラゲ類とゲノムを比較することで、クラゲ類の進化研究、ひいては脊椎動物の成り立ちについても新たな知見が得られることが期待されるほか、ベニクラゲの若返り機構の解明を通して、一般的な細胞の再生や脱分化の理解につながり、ヒトの老化や健康寿命の増進の研究への応用が期待されるという。