同手法を用いて太陽系近傍にある恒星の固有運動の加速が調べられ、褐色矮星や巨大惑星などの伴星が存在する可能性のある複数の恒星が選出された。そして、すばる望遠鏡の最新観測機器であるコロナグラフ超補償光学系「SCExAO」(スケックス・エーオー)と同検出器「CHARIS」(カリス)のコンビを用いた観測が進められ、恒星HIP 21152を周回する褐色矮星HIP 21152 Bが直接撮像により発見されたとする。
さらに、すばる望遠鏡やケック望遠鏡による計4回の直接撮像と、岡山188cm望遠鏡の分光器「HIDES」(ハイデス)によるHIP 21152の視線速度観測、ガイアなどによるによる固有運動データを組み合わせることで、HIP 21152 Bの軌道が決定された。
軌道が決まれば、ケプラーの法則を用いてその天体の質量を推定することが可能となる。その結果、HIP 21152 Bの質量は木星の22~36倍と導き出されたとするほか、これほど精密に質量が決定された褐色矮星はまだ20例ほどしかなく、HIP 21152 Bはその20例の中では最も軽く、惑星質量に迫る天体であることも判明したという。
研究チームによると、HIP 21152 Bは褐色矮星や巨大惑星の大気の研究でも重要だという。今回はHIP 21152 Bのスペクトルも取得され、その大気は、褐色矮星のスペクトル型であるL型とT型を遷移する型に分類されることが示された。T型の大気ではメタンによる強い吸収が見られるが、L型の大気ではそれがほとんど見えない。この変化は大気の温度や雲の存在と強く関係おり、こうした点でもHIP 21152 Bの質量や年齢という最も基本的な特徴が正確に決まっていることが重要で、同褐色矮星は今後、ベンチーマーク(基準)になることが期待されるとしている。
なお、今回の研究は現在も進行中であるとするほか、すばる望遠鏡の直接撮像装置も継続して改良が行われており、新しい光学機能の運用開始も予定されており、今回の研究が目指す効率的な探査計画の進展と、すばる望遠鏡の観測装置の開発や改良により、今後もさまざまな重要天体が発見されることが期待されるとしている。