何度訪れても、独特のエキゾチックな情緒に心躍るタイ。タイ観光を語る上で欠かせないのが「お寺」です。
敬虔な仏教国であるタイには約3万もの寺院があるといわれており、きらびやかなタイのお寺は、日本のお寺とはずいぶん趣が異なることも。
タイのお寺といえば「金ピカ」のイメージが強いかもしれませんが、実際には、黄金色だけでなく、白、緑、青など、さまざまな色彩に満ちています。「色」を通してタイの美しいお寺をめぐる旅へ、さあ出かけましょう。
ワット・プラケオ(バンコク/金)
タイのお寺を象徴する存在といっても過言ではないのが、バンコクの「ワット・プラケオ」。タイで最も格式の高い寺院で、ヒスイでできたエメラルドカラーのご本尊が祀られていることから、「エメラルド寺院」とも呼ばれています。
1782年に王室の守護寺院として着工した由緒正しきお寺で、タイを代表する寺院でもあることから、そのスケールは圧倒的。広大な敷地内に、本堂をはじめとする複数のお堂や、数々の仏塔がひしめき合っています。
とりわけ印象的なのが、仏舎利(仏陀の遺骨)が納められている黄金の仏塔。アユタヤの「ワット・プラ・シーサンペット」を模して建てたといわれており、法典が納められた「プラ・モンドップ」や本堂と並び、タイらしい尖塔のある風景を描き出しています。
本堂に鎮座する、タイで最も重要な仏像である「エメラルド仏」にも注目。高さ66cm、幅48cmと思いのほか小さいですが、タイの人々から厚い信仰を集めるその存在感は絶大です。
●ワット・プラケオ
Phra Nakhon Bangkok
ワット・アルン(バンコク/白)
バンコクで最も想像力を掻き立てるお寺のひとつが、三島由紀夫の小説『暁の寺』の題材にもなった「ワット・アルン」。建立をアユタヤ時代にさかのぼる歴史ある寺院で、カンボジアのアンコール・ワット同様、ヒンドゥー教の影響を受けたクメール様式の塔で知られています。
天に向かってそびえる大仏塔を4基の小仏塔が取り囲む独特のシルエットは、チャオプラヤー川沿いでもひときわフォトジェニック。
2017年に大規模な改修工事が終了し、ひときわ白く美しい姿によみがえりました。仏塔は白を基調としていますが、無数の陶器の破片で施された装飾は実に色彩豊か。
チャオプラヤー川の対岸やボートの上から全体を見てもよし、境内に足を踏み入れて、間近で細かな装飾を見てもよし。さまざまな距離や角度から見ると、また違った発見があるのがワット・アルンの魅力なのです。
「暁の寺」の名の通り、夕暮れどきも魅惑的。対岸にあるルーフトップのレストランなどから、黄金色にライトアップされたワット・アルンの神々しい姿を拝むことができます。
●ワット・アルン
34 Arunamarin Rd., Wat Arun, BangkokYai, Bangkok 10600
ワット・パークナム(バンコク/緑)
SNSでブレイクし、バンコクの新名所と化しているのが「ワット・パークナム」。
アユタヤ時代に創設された王室寺院ではありますが、バンコク中心部からやや離れていることもあり、もともとはローカル色の強いお寺でした。ところが、ここにしかないグリーンを基調としたファンタジックな天井画が知られるようになり、一躍人気観光スポットとなったのです。
5階建ての仏塔内部最上階へと足を踏み入れると、幻想的な色と光の洪水が眼前いっぱいに広がります。写真に撮っても、これがお寺とはとうてい思えないほど。
2021年には、仏塔の隣に高さ69mのブロンズ製の黄金の仏像も完成し、ますます注目度が高まっています。
●ワット・パークナム
300 Ratchamongkhon Prasat Alley, Pak Khlong Phasi Charoen, Phasi Charoen, Bangkok 10160
ワット・プラ・シン(チェンマイ/金)
「タイの京都」とも称される古都チェンマイ。数々のお寺が点在するチェンマイでも、特に格式が高いとされているのが「ワット・プラ・シン」です。
1345年、ラーンナー王朝5代のパーユー王が、父親の遺灰を納めるための仏塔を建てたのがそのはじまり。「ワット・プラ・シン」とは「獅子の寺」という意味で、敷地奥にあるライカム礼拝堂には、寺の名の由来となったプラ・シン仏の複製が安置されています。
きらびやかな装飾が施されたお堂がいくつも並ぶワット・プラ・シンには、華やかさと古都のしっとりとした情緒が同居していて、バンコクの有名寺院とはまた違った趣があります。
広々とした境内でひときわ目を引くのが、黄金に輝く仏塔。高さ50mの巨大な仏塔を前にすると、その存在感に圧倒されずにはいられません。
夜のライトアップも美しいワット・プラ・シン。闇夜に浮かび上がる金色の仏塔と、精緻な装飾が施されたお堂のコラボレーションは、ため息なしには見られません。
●ワット・プラ・シン
Samlan Rd, Tambon Prasing, Amphur Muang Chiang Mai 50200
ワット・スアン・ドーク(チェンマイ/白)
チェンマイでワット・プラ・シンに負けず劣らずの美しさを誇っているのが、「花園の寺」とも称される「ワット・スアン・ドーク」。1383年にラーンナー王朝6代のクーナー王によって、かつてここにあった王家の宮殿の庭に建てられました。
広大な敷地に真っ白な仏塔が林立する光景は、どこか別世界の風景のよう。これらの白い仏塔には、歴代のチェンマイ朝王族の遺灰が納められています。
白い仏塔の奥に、高さ48mの黄金色の仏塔が顔をのぞかせる様子もフォトジェニック。チェンマイ旧市街から少し離れていますが、最近ではワット・スアン・ドーク特有の幻想的な風景が話題となり、撮影スポットとして人気を集めるようになりました。
本堂には、タイ国内でも1、2を争う大きさの青銅の仏像が安置されているので、ぜひお参りしてみてください。
●ワット・スアン・ドーク
Su Thep Mueang Chiang Mai Chiang Mai
ワット・シースパン(チェンマイ/銀)
多種多様なお寺がひしめき合うチェンマイの中でも、個性が際立っているのが「ワット・シースパン」。チェンマイ旧市街の外ということもあり、日本のガイドブックでは取り上げられることの少ない「知る人ぞ知る」お寺ですが、鳥肌モノの世界観は必見です。
ワット・シースパンを唯一無二の存在にしているのが、メタリックシルバーのお堂。伝統的に銀細工が盛んなエリアにあり、世界初の銀細工の本堂があることから、別名「銀の寺」とも呼ばれています。
本堂は、屋根も外壁も銀色なら、内装も銀色。まさに正真正銘の「銀閣寺」です。
驚くべきが、装飾の精巧さ。銀色の装飾はペイントなどではなく、板を背面から打つことによって、一点一点絵柄が表現されているのです。
見れば見るほど、信じられないほどの装飾の緻密さと立体感に心を奪われ、いつまでも眺めていたくなるほど。本堂は女人禁制のため、残念ながら女性は中に入ることはできませんが、外観だけでも十分一見の価値があります。
●ワット・シースパン
Wua Lai Rd, Tambon Hai Ya, Mueang Chiang Mai District, Chiang Mai 50100
ワット・ローン・クン(チェンラーイ/白)
チェンラーイは、ミャンマーやラオスとの国境に近いタイ最北の県都。最近ではフォトジェニックかつユニークなお寺があることで注目されており、チェンマイ発の日帰りツアーでお寺めぐりをすることも可能です。
そんなチェンラーイを代表するお寺として知られているのが、「ホワイト・テンプル」の異名をとる「ワット・ローン・クン」。純白の外観と躍動的なシルエットが印象的なお寺です。
チェンマイの歴史ある寺院とは対照的に、ワット・ローン・クンは比較的新しいお寺。チェンラーイ出身のアーティスト、チャルーンチャイ・コーシピパット氏が私財を投じて1997年に建設を開始しました。
仏教や神話をモチーフに、「純潔」をイメージしてデザインされたという寺院は現実離れした美しさ。白亜のお堂が水面に映る光景は、まるでおとぎの世界のようです。
静かな炎のような躍動感あふれる装飾にも注目。陽の光を受けてきらきらときらめく様子は、なんともチャーミングです。
●ワット・ローン・クン
Pa O Don Chai Road, A. Muang, Chiang Rai, Pa O Don Chai, Mueang Chiang Rai District, Chiang Rai 57000
ワット・ローン・スア・テン(チェンラーイ/青)
チェンラーイで、ワット・ローン・クン(ホワイト・テンプル)に並ぶ人気スポットとなっているのが、「ブルー・テンプル」の愛称で呼ばれる「ワット・ローン・スア・テン」。その通称の通り、タイでもおそらくここだけの「青」を基調とした珍しいお寺なんです。
このワット・ローン・スア・テン(ブルー・テンプル)は、ワット・ローン・クン(ホワイト・テンプル)を建築したチャルーンチャイ・コーシピパット氏の弟子にあたるスラーノック氏が手がけたもの。この地にあった廃寺を改修して、2005年から11年かけて建てられたニュースポットです。
鮮烈なブルーのお寺は、外観からして一度見たら絶対に忘れられないインパクト。本堂はもちろん、お堂を取り巻く神獣の像や仏塔など、すべてが目にも鮮やかな青で統一されていて、どこを切り取っても絵になります。
本堂内部も神秘的なブルーの空間。壁や天井を彩る優美な文様もあいまって、さながら小宇宙のようです。
●ワット・ローン・スア・テン
306 Moo 2, Rim Kok, Mueang Chiang Rai District, Chiang Rai 57100
600年以上の歴史を誇る由緒正しき古刹から、21世紀に入って建てられたニューフェイスまで、ひとつとして同じものはないタイの寺院。その多彩な魅力をぜひその目で確かめてみませんか。