パナソニックは、テクニクス(Technics)ブランドの“グランドクラス”ネットワーク/SACDプレーヤー「SL-G700M2」を12月上旬に発売した。価格は37万円。カラーはシルバーとブラックの2色。

  • SL-G700M2(シルバー)

同ブランドで初めてスーパーオーディオCD(SACD)再生に対応し、ハイレゾ音源やストリーミング再生もサポートするプレーヤーとして高評価を得たという「SL-G700」(2019年発売)の後継機。高品位な音楽再生を実現するため、テクニクスが培ってきたオーディオ技術の粋を結集し、音質、機能、操作性のさらなる向上を図った。

  • SL-G700M2(ブラック)

D/A変換回路を一新し、位相と振幅を整える新技術「Coherent Processing」を有する「High Precision Coherent D/A Converter」を新たに搭載。高精度なデジタル/アナログ信号変換を行うことで、音源の持つ情報を最大限に引き出すという。

アナログ出力回路用の電源も強化しており、新開発の低ノイズ電源「Multi-Stage Silent Power Supply」を採用。最上級“リファレンスクラス”のプリメインアンプで採用したアナログ回路用高速スイッチング電源を搭載するとともに、独自のノイズ除去技術を盛り込むことで、高精度な信号処理と広帯域にわたるさらなる低ノイズ化を追求している。

パナソニックでは、ディスク再生を愛好するオーディオユーザーやハイレゾ、ストリーミングサービスなどで音楽を楽しむオーディオユーザーにSL-G700M2を提案していく。

  • CDやSACDを含む、さまざまな音楽ソースに対応

SL-G700M2の詳細

SL-G700M2の主な特徴は、以下の通り。

  1. D/A変換回路刷新、「High Precision Coherent D/A Converter」新搭載
  2. 新開発の低ノイズ電源「Multi-Stage Silent Power Supply」
  3. USB-B入力にも新対応
  • SL-G700M2の内部構造

SL-G700M2ではD/A変換回路部を一新し、ESSのDACチップ「ES9026PRO」を、左右各1基のデュアルモノラルで構成(従来機種SL-G700は旭化成エレクトロニクス「AK4497」のデュアルモノラル構成)。DACチップ以外にもさまざまな進化点があり、テクニクスではこれらをまとめて「High Precision Coherent D/A Converter」と呼称している。

  • デュアルモノラル構成のD/A回路​

  • ESSのDACチップ「ES9026PRO」をデュアルモノラル構成で搭載

DACチップの前段には、PCM 192kHzまでの信号に対して出力時に生じる振幅や位相特性の乱れを、独自のデジタル信号処理によって補正する新技術「Coherent Processing」を採用。高精度なアナログ信号出力を追求している。

テクニクスのオーディオアンプ製品では、組み合わせるスピーカーの特性に合わせてアンプ側の特性を最適化する負荷適合アルゴリズム「LAPC(Load Adaptive Phase Calibration)」という技術を投入しているが、D/A変換にその技術思想を応用し、精度の高い信号出力を実現したのがCoherent Processingというわけだ。

なお、PCM 352.8kHz、384kHzの信号や、SACDなどのDSD信号はこの処理は行わず、ダイレクトにDACに入力する。

後段のアナログ出力回路に搭載しているローパスフィルター回路は、オペアンプではなく独自のディスクリートアンプにより構成。従来の独立基板構成からDAC基板への直接実装構成に変更したことや、回路見直しによってさらなる低インピーダンス化を図り、高音質化を実現したという。

  • ディスクリート構成のアンプ

  • High Precision Coherent D/A Converterの概要

新開発のアナログ出力回路用の電源「Multi-Stage Silent Power Supply」では、リファレンスクラスのプリメインアンプ「SU-R1000」で採用している高速スイッチング電源を新たに搭載。後段には低ノイズレギュレーターを配置している。さらに、新開発のノイズ除去技術「Current Injection Active Noise Cancelling」を追加することでノイズ対策を徹底。「より理想的な電源」を実現したという。

オーディオ機器においては、わずかなノイズでも音質に大きく影響を及ぼすため、徹底したノイズ対策が求められる。SL-G700M2に搭載した高速スイッチング電源は、スイッチング周波数を従来の100kHzから300kHzへと高速化することで、スイッチングによる音楽再生帯域へのノイズの影響を抑えるとともに、応答性の高い電源供給を可能にしている。

また、ディスクリートアンプにより制御された独自レギュレーターは、ノイズ低減性能測定とともに、聴感テストを繰り返し実施。動作電流や位相、基板パターンを細かくチューニングした、アナログ出力回路の負荷に最適化された専用電源となっている。

さらに、電源に残留するノイズを検出し、その逆相電流を加えることでノイズ成分を取り除く新開発のノイズ除去技術「Current Injection Active Noise Cancelling」も投入。レギュレーターでは除去しにくい低周波数帯のノイズを効果的に除去するとしている。

  • 新開発ノイズ除去回路

  • 高速スイッチング電源には、SU-R1000の技術を継承

SL-G700M2はCDやSACDの再生に加え、ハイレゾ音源やストリーミングサービスまで対応するネットワークオーディオ機能を装備。さらにNASやPCと接続して、接続先のハイレゾ音源を再生できるUSB-B端子も新搭載している。

ディスク再生に必要な回路ブロック以外の電源をシャットオフする「Pure Disc Playback」モードを搭載して音質向上を追求。再生できる音楽ファイルは、WAV、AIFF、FLAC、ALAC、DSDなどで、MQA音源にも対応。手持ちのMQAファイルや、MQA-CDのフルデコード再生が行え、スタジオのマスター・クオリティに迫る高品質を楽しめるとする。外部入力は、上述のUSB-B端子のほかに、USB-A端子と光/同軸デジタル入力も装備している。

  • 付属のリモコン

  • リモコンの改善点

ワイヤレス再生については、AppleのAirPlay 2と、Chromecast built-inによるスマホ/タブレットなどからのキャスト再生をサポートし、Amazon MusicやSpotify Connect、Deezer、インターネットラジオにも対応。Bluetoothによるワイヤレス再生も可能だ。各種操作は無料アプリ「Technics Audio Center」から行える。

本体はテクニクス製品でおなじみのシルバーに加え、ブラックを加えた2色で展開。高品位なデザインで仕上げており、7mm厚のフロントパネルにはは、プリメインアンプ「SU-R1000」、「SU-G700M2」と同じスピン加工を施した側面処理のコントロールノブを装備し、統一感を出している。

本体内部は強力な制振・静音構造を採用。4分割構造で、各回路ブロックを独立とすることで互いの干渉を抑制。シャーシの剛性も高めている。ドライブメカをマウントするシャーシは3層構成で、外部からの振動を抑制する構造になっている。ドライブメカのデスクトレイはアルミダイキャスト製。

出力端子は、アナログXLRバランス、アナログRCAアンバランス、同軸デジタル、光デジタルが各1系統。6.3mm標準ステレオのヘッドホン出力も備える。消費電力は45W。本体サイズは430×407×98mm(幅×奥行き×高さ)、重さは約12.3kg。

  • 背面