里見香奈女流王座に加藤桃子女流三段が挑戦する第12期リコー杯女流王座戦五番勝負は、第4局が12月20日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、109手で勝った加藤女流三段が通算成績を2勝2敗のタイに戻して勝負の行方を最終局に持ち込みました。

ゴキゲン中飛車対居飛車穴熊

後手となった里見女流王座はゴキゲン中飛車の作戦を選択します。先手の加藤女流三段が飛車先の歩を伸ばしたときに角を上がって歩交換を防いだのが本シリーズ第2局との違いで、本局の序盤はゴキゲン中飛車・銀対抗型の定跡形に進展しました。駒組みが続き、やがて加藤女流三段は自玉を居飛車穴熊の堅陣に収めます。

居飛車穴熊囲いを完成させた加藤女流三段は、里見女流王座が高美濃囲いを構築している間に着々と攻めの準備を整えていきます。角を右翼に転換したのち右桂を跳ねたのが「攻めは飛車角銀桂」の格言通りの好形で、後手が放置すれば4筋に銀をぶつけて攻めていく狙いを持っています。

角切りの猛攻で加藤女流三段がリード

里見女流王座が左桂を跳ねて4筋の力関係を保ったのに対し、強く角を切って後手の銀との交換に持ち込んだのが加藤女流三段の勢いある攻め筋でした。瞬間的に角銀交換の駒損ながら、敵陣に打ち込んだ銀ですぐに桂を取り返せることを見越しています。自玉が居飛車穴熊の堅陣であることや次の飛車先突破があることを踏まえると、うまく加藤女流三段が戦機をつかんだ格好です。

2筋からの飛車先突破を見せられた里見女流王座は手にした角を敵陣に打ち込んで反撃に出ます。これに対して、じっと自陣に桂を打って丁寧に面倒を見たのが加藤女流三段の受けの好手でした。後手に角切りを強要して駒得し、タイミングを見て反撃に出る構えです。敵陣に作った馬と成銀を寄せていけばよいという方針もわかりやすく、終盤の入り口を目前にして加藤女流三段が優勢に立ちました。

手堅くまとめて加藤女流三段が勝ち切る

なんとか局面の複雑化を図りたい里見女流王座ですが、すでに攻めの要の飛車を失っており攻め手を欠きます。先述の角切りで崩しておいたはずの加藤女流三段の穴熊も、戦いの中で気づけば馬付きの堅陣に再構築されていました。こうなると形勢差は歴然で、さしもの里見女流王座の終盤力も鳴りをひそめました。

終局時刻は16時35分、自玉が受けなしになったのを認めた里見女流王座が投了を告げて対局が終了しました。振り返ってみれば仕掛けから一度も形勢の針を譲らなかった加藤女流三段が快勝で五番勝負を振り出しに戻しました。

注目の最終局は12月23日(金)に東京・将棋会館で行われます。

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