映像の入出力規格「HDMI」といえば、もはや言わずと知れた映像入出力規格のグローバルスタンダード。先日、そのライセンスを全世界で総括する「HDMI Licensing Administrator, Inc.(HDMI LA)」のCEOであるロブ・トバイアス(Rob Tobias)氏が来日し、メディア向けの記者発表会を実施しました。
なんと発表会ではCEOが直々に登壇。日本語話者向けに平易な英語で、HDMI規格のこれまでとこれからについて語りました(通訳もありました)。忙しい方向けにまとめておくと、HDMI規格は今年で20周年。初期仕様の策定には複数の日本企業が参画しており、現在でも強固なパートナーシップを継続中。2023年にもちょっとしたマイナーアップデートを予定しているとのことでした。
HDMI規格は今年で20周年。意外と年季が入っている
D-SubやDVIと比べればなんとなく新しい印象のあるHDMI(High-Definition Multimedia Interface)も、実は2002年の登場から今年で20周年。来歴として、初代バージョンである「HDMI 1.0」の策定に日立、松下電器(現:パナソニック)、ロイヤルフィリップエレクトロニクス、シリコンイメージ、ソニー、トムソン、東芝が参画したことや、次世代HDMI規格の策定に向けて「HDMI Forum」を設立したことが紹介されました。ちなみに現行最新バージョン(いま明らかになっているナンバリング)で、最も新しいのはHDMI 2.1aです。
20年を1年にまとめたスライドでも紹介されていますが、やはり注目すべきなのはHDMI 1.4bと、HDMI 2.0の登場です。4K出力機能の対応を実現したメモリアルなナンバリングとなっており、世代の節目として大きく強化された印象です。
とはいえ、FPSゲーム好きな筆者の個人的な印象で言えば当時のHDMIは若干扱いづらく、特にPCゲーミング環境ではDisplayPortのほうが高速性能で優れていたこともあり、私用のPC環境でHDMIは敬遠気味だった憶えがあります。DisplayPortならバージョンを気にすることなくフルHD(1,920×1,080ドット)/144Hzを入出力でき、DVI-D端子(ダブルリンク)からの移行に好適。4K/60pも正常な色空間(8bitYCbCr 4:4:4)で出力可能で、電源連動の問題があってもDisplayPortの方が便利だった印象です。
また、HDMI 2.0bの登場によって4K/60pを正常な色空間で出力できるようになってからも、市場には前バージョンの搭載製品が混在。特にノートPCではHDMI端子がなんの規格なのか表記されていない例も散見され、対応解像度がわからない不便もあったりしました。
しかし、2017年に発表したHDMI 2.1によって48Gbpsもの帯域幅を実現し、4Kや8K解像度におけるスタンダードな存在として返り咲いた印象。最新テレビやゲーム機の謳い文句としても「HDMI 2.1」とバージョンまでしっかり表記され、次世代規格としてスタンダードになったように思います。
HDMIにまつわる話のなかで個人的に興味深かったのは、4Kや8Kに対応する大型テレビの販売が今後EUでは困難になるかもしれないという内容でした。2023年3月に施行される環境規制の要件が厳しく、一部のモデルは対応基準を満たせそうにないとのこと。低電力モードの搭載で、画面を暗くするインスタントな対応が取られるかもしれないそうです。
新型コロナ禍で増えた非ライセンス品。国際コンプライアンスを強化
HDMI Licensingにとって、新型コロナウイルスの感染拡大でサプライチェーンの混乱が大規模化したことが問題に。米中間の報復関税によって製造拠点が移設されたり、散発的な工場・港湾の閉鎖も拍車をかけ、偽造品が増加したといいます。
これを受け、HDMI LAは国際的なコンプライアンスを強化。世界中の税関当局と協力してブランドや商標を保護し、正規品を定義。ライセンスの無いHDMI製品を差し押さえたり、工場の強制捜査を行ったり、違反企業に罰則を課して知的財産の保護に努めていると話します。
ちなみに、正規品として認証されている製品にはオレンジ(Premium High Speed HDMIケーブル)や、シルバー(Ultra High Speed HDMIケーブル)のシールがついている点がポイント。シールにはQRコードが印字してあり、読み込むことで本物であることの確認も行えます。要はシルバーの方が上位仕様で、各種オプション仕様も満たしている製品であることを示しています。
発表会の最後は、2023年におけるHDMI LAの活動内容について紹介されました。すでに今年発表済みの内容ですが、HDMI規格のマイナーアップデートとしてソースベーストーンマッピング機能を提供予定。ディスプレイの表示性能にあわせて最適なHDR表示を行えるというもので、ユーザーの手動設定が不要になります。さらにウェブベースの検証制度の立ち上げを予定する他、開発者向けカンファレンスや相互運用性を試せるオフラインイベントなど、対面式の行事も行われるそうです。