12月9日から11日まで、横浜にて位置情報ゲーム『Ingress』のリアルイベント、XMアノマリー「Epiphany dawn Yokohama(エピファニー ドーン 横浜) 」が開催されました。日本でのリアルイベントは2019年3月27日に開催されたXMアノマリー「ダルサナプライム東京」以来、実に1,358日ぶり、約3年8カ月ぶりです。また、『Ingress』はローンチから10周年となり、そういった意味でも、今回のイベントの開催が重要なものだったことは間違いありません。

9日にはメインイベント前夜に行われる「Stealth Ops(ステルス・オプス)」、10日はレジスタンスとエンライテンドの陣営が競いあう競技イベントの「Urban Ops(アーバン・オプス)」、11日はゲーム内で指定されるミッションに従って、横浜の象徴的な場所を巡る「Mission Day(ミッション・デイ)」が開催されました。

今回はメインイベントの「アーバン・オプス」に参加。会場は横浜の大さん橋客船ターミナルです。午前10時から11時の間に、チケット購入者はここでアノマリーキットと10周年記念グッズを取得します。そのあと、横浜の街で、シャードと呼ばれるものを自陣のゴールに導く「シャード戦」や、特定のポータルにビーコンが表示され、一定時間ポータルを確保、防衛した回数によって得点が入る「バトルビーコン戦」が開催されます。17時まで戦いは続き、大さん橋客船ターミナルの会場で18時から行われたアフターパーティにて、結果が発表されました。

  • アフターパーティの終了後に行われた記念撮影

開発チームが『Ingress』の10年とこれからを語る

「エピファニー ドーン 横浜」開催に併せて、『Ingress』に携わるNiantic(ナイアンティック)本社のプロデューサーや開発者など多くのスタッフも来日。そのなかから『Ingress』のプロデューサーのブライアン・ローズ氏とエンジニアチームのマイケル・ロメロ氏、コミュニティーマネージャーのティア・ハイタワー氏の3人に話を伺うことができました。

  • 「エピファニー ドーン 横浜」のために来日したブライアン・ローズ氏(写真左)、マイケル・ロメロ氏(写真中央)、ティア・ハイタワー氏(写真右)

さっそく『Ingress』のこれまでの10年とこれからの活動について聞いてみると、Niantic(ナイアンティック)にとって『Ingress』は、ほかのナイアンティックのタイトルのルーツであることを再確認できたと言います。

ナイアンティックの理念はずっと変わらず、人々を外に誘い、街を再発見し、そして人々と交流をすること。『ポケモンGO』にしても『ピクミンブルーム』にしても、その理念は変わらず貫いています。そして、どちらのゲームも『Ingress』のシステムやデータを使うことで成り立っています。

「『ポケモンGO』のポケストップやジム、『ピクミンブルーム』の花の場所は、もともと『Ingress』のエージェント(『Ingress』のプレイヤーのこと)がポータルとして指定した場所です。エージェントのおかげでマップが完成し、いまや3Dのマップにすることもできています」(ブライアン氏)

また、『Ingress』と言えば、位置情報を使ったスマートフォンのアプリ、ゲームのイメージが強いですが、それと同じくらいオフラインイベントが有名です。世界各地で開催されるイベントには、多くのエージェントが参加しています。ここ数年は世界的な情勢によってイベントをする機会が激減していましたが、ナイアンティックの人々もエージェントもイベントがより多く開催されることを願っています。

しかし、刺激的なアップデートが少ない状況、コロナ禍による影響で、エージェントの数がかなり減ってきているのも事実です。そのため、連日ハックボーナスをつけ、毎日『Ingress』を立ち上げるきっかけを作ったり、次にどんな行動を取れば良いのかもメッセージを添えて示すようにしたりと、新たなエージェント獲得のための施策も用意しています。

ただ、これらの施策で新規ユーザーもしくはリターンユーザーが増えるかは微妙で、抜本的な改革がない以上、起死回生も難しいと思います。また、大きな変化は現在プレイしているエージェントにとって、必ずしも喜ばれる結果にならないこともあるでしょう。それでも『Ingress』を継続することは、ナイアンティックにとって『Ingress』が1つのゲーム、サービスではなく、特別な立ち位置だからです。

「ナイアンティックのゲームは、タイトルごとにではなくポートフォリオとして考えています。『Ingress』と『ポケモンGO』では求めているものも違います。ライトシップ(ナイアンティックのAR開発者キット)の新機能を使うのに、我々のチームが一番速く対応できます。我々が『Ingress』に導入し、検証からプロトタイプまで落とし込めることができるので、それらがほかのタイトルにもフィードバックされるのです」(ブライアン氏)

『Ingress』はゲーム単体として成立しているだけでなく、『ポケモンGO』や『ピクミンブルーム』の新機能や新システムの試金石としても活用されているわけです。現在開発中のARヘッドセット「Outdoor AR Headset」は、機能的には『Ingress』のゲームシステムに合っていますし、まずは『Ingress』に落とし込むことで、『ポケモンGO』などでも快適な状態で導入されるようになるかもしれません。

  • 10周年を振り返りながら、今後の行く末を語る3人

久しぶりのプレイであたふたするも、当時の楽しさを思い出す

さて、3年半ぶりとなるXMアノマリーの参加ですが、筆者は元々『Ingress』はソロでプレイしており、しかも現在はそこまでプレイしていません。そこで、位置情報ゲーム仲間のライター深津庵さんを頼り、一緒のグループで活動させていただきました。

  • 参加チケットを購入すると、さまざまなグッズがもらえます。深津庵さんのグッズを撮影させていただきました

XMアノマリーは、横浜の広域を使って対戦するので、グループによって攻める場所、守る場所が違います。深津さんのチームは京急線の神奈川駅の近くの幸ヶ谷公園付近。指定されたポータルを一定時間、防衛もしくは奪うのが目的です。

ポータルを攻撃するには「Xmpバースター」や「ウルトラストライク」と呼ばれるアイテムが必要で、中立ポータルを自分の陣営にするには「レゾネーター」というアイテムが必要です。さらに防衛するには「シールド」も必要で、とにかくXMアノマリーでは大量のアイテムを使います。本来だと、XMアノマリーの前に、それらを収集しておくのですが、もはやそんなこともすっかり忘れており、少ないアイテムで対応せざるを得ませんでした。

  • シャード戦。敵からの攻撃に「シールド」や新たな「レゾネーター」を挿すことで対応します

時間によって攻撃対象、防衛対象のポータルは移動するので、エージェントも物理的に移動しなくてはなりません。筆者は以前横浜に住んでいたのですが、横浜は海の街より山の街と言ったほうがいいくらいアップダウンが激しい土地であることも失念していて、多少の移動が登山と思えるくらいハードに感じました。それでも、久々に多くの仲間と一緒にプレイした『Ingress』は、当時の楽しさを十分に思い出させてくれました。

  • 幸ヶ谷公園は高台にあり、登るだけでひと苦労でした

18時からは大桟橋ホールにて、アフターパーティが行われました。『Ingress』のイベントと言えば、やはりアフターパーティです。XMアノマリーの結果や今後のスケジュール、スポンサーによる挨拶とプレゼント争奪戦などがあり、大いに盛り上がりました。

パーティ終了後も、ナイアンティックのスタッフやエージェント同士の交流が止まらず、バイオカード(エージェントの情報がかかれた名刺のようなもの。通称、不審者カード)の交換や近況報告に花を咲かせていました。

  • アフターパーティは大桟橋ホールで行われました

  • ナイアンティックの村井説人社長の姿を見るのも久しぶりです

  • アジア統括本部長の川島優志さんも参加予定でしたが、残念ながら来訪できずビデオメッセージに

  • ナイアンティック創業CEOのジョン・ハンケ氏からは俳句が送られました。まあ、自由律俳句でしたが、一所懸命に日本語で考えたのがわかります

  • スポンサーの面々も登場。LinkBudsの2人

  • お馴染みの伊藤園

  • ソフトバンクの坂口氏

  • 日本赤十字からは特別なビーコンが表示されると発表

  • XMアノマリーでエージェントの取りまとめをしたPOC

  • エピファニー ドーンの結果はエンライテンド陣営の勝利となりました

人によっては『Ingress』の名前を聞いたとたん「懐かしい」と思わず叫んでしまうかもしれませんが、世界各国、日本全国から横浜の地に多くの人が訪れ、オフラインイベントを楽しんでいる様子をみると、まだまだ現役であることがわかります。そして、その多くの人の声に応えるべく、ナイアンティックが『Ingress』を続けているのも感じられました。

『Ingress』はIDとパスワードさえ覚えていれば、最後にプレイした状況からまた始めることができます。この記事を読んで、昔を思い起こしてみた人は、もう一度『Ingress』をインストールし、起動してみてください。きっと、忘れていた何かを思い出すことでしょう。

※記事初出時、イベント名の表記に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。