その結果、リュウグウおよびイヴナ型炭素質隕石から、かんらん石、輝石、スピネルといった、水溶液の変質作用を生き残った初生鉱物を数十粒子発見することに成功したとする。
これらの鉱物はまれな存在で、大きさも数十μm以下と小さいものであったが、計40粒子について酸素の同位体組成を測定したところ、はっきりと2つに分かれることを確認。
このうち、惑星型の酸素同位体組成を示す鉱物は、原始太陽系円盤における内側太陽系にて、高温のメルトから固化したとされるコンドリュールと呼ばれる物質を起源としていること、もう一方の太陽型の酸素同位体組成を示す鉱物は、約46億年前に原始太陽の近傍で高温ガスから凝縮した難揮発性包有物を起源とするものであることが判明したという。
それぞれの鉱物は、ともに原始太陽系星雲の1000℃以上の高温環境で形成したもので、そうした高温鉱物が高温環境で形成された後、冷たい外側太陽系領域まで輸送され、リュウグウおよびイヴナ型炭素質隕石の母天体に集積したことも判明したとするほか、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石とで、高温鉱物の種類や産状は同一であり、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石の類似性がより明らかになったと研究チームでは説明している。
また、太陽型と惑星型の2種の酸素同位体組成をもつ高温鉱物の存在比率については、通常の(イヴナ型以外の)炭素質隕石のものとまったく異なっていることも判明。
通常の(イヴナ型以外の)炭素質隕石においては、こういった高温鉱物のうち、太陽型のものは約2%ながら、今回の研究で判明したリュウグウおよびイヴナ型炭素質隕石は太陽型が約32%を占めており、太陽型と惑星型の2種の酸素同位体組成をもつ高温鉱物の存在比率が異なっていることも判明。リュウグウおよびイヴナ型炭素質隕石の母天体が形成した領域は、通常の炭素質隕石とは異なっていることが示されたという。
米国航空宇宙局(NASA)が2004年にスターダストミッションでヴィルド第2彗星から採取したサンプルは、太陽型の割合が約29%であることが知られており、この値はリュウグウおよびイヴナ型炭素質隕石と似通っていることから、研究チームでは、リュウグウおよびイヴナ型炭素質隕石の母天体は、彗星により近い領域で形成されたと結論づけられ、通常の炭素質隕石の母天体よりもさらに太陽から遠い場所であったと考えられるとしている。また、川﨑准教授と圦本教授は、NASAが2023年に持ち帰るB型小惑星「Bennu」の初期分析チームのメンバーでもあることから、今回の研究手法のBennuサンプルへの応用も期待されるとしている。