「鰤はなぜ出世魚と呼ばれているの?」「鰤と、はまちの違いは?」「出世魚って何?」
鰤やはまちは出世魚や縁起物として知られている一方で、このような疑問を抱いている方も多いでしょう。
この記事では、鰤やはまちが出世魚と呼ばれる理由や、地域ごとの呼び名の順番について解説します。鰤をおせち料理に入れる風習や、鰤のおいしい食べ方についても触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
鰤(ぶり)が出世魚と呼ばれる理由とは
鰤が出世魚と呼ばれる理由について、詳しく解説します。
出世魚とは
そもそも出世魚とは、成魚になるまでの間に何度か名前が変わる魚のことをいいます。昔の日本では古くから成人や昇進のタイミングで改名する風習があり、その風習に倣って出世魚と呼ばれるようになりました。例えば徳川家康や豊臣秀吉といった戦国武将も、多くは改名を繰り返していたといいます。
はまちやいなだなど、鰤は大きさによって名前が異なる魚のため出世魚といわれる
鰤もはまちも出世魚と呼ばれていますが、実は鰤とはまちは同じ魚です。
鰤は九州から北海道までを行き来する回遊魚で、秋ごろには産卵のため日本海を南下していきます。そのため、餌場である北海道以外にも新潟県や石川県、宮崎県などで冬に水揚げされることがあります。
水揚げされたときのサイズ、つまり成長とともに、鰤の名前は変わります。そのために、出世魚といわれるのです。詳しくは後述しますが、一般的に60cm以上のサイズのものを鰤と呼びます。
鰤の呼び名の順番や種類は地域によって異なる
鰤は南下していく途中で水揚げされますが、そのときの大きさで名前が変わります。加えて、地方によって少しずつ名前が異なるので、簡単に紹介しましょう。
関東での鰤の名前と順番
関東での一般的な鰤の呼び名を、小さい順で並べてみました。
サイズ | 名前 |
---|---|
約10~30cm | ワカナゴ(ワカシ) |
約30~40cm | イナダ |
約40~60cm | ワラサ |
60cm以上 | ブリ |
なお同じ関東であっても、地域によって名前やサイズが異なることもあります。また3~7cmの鰤の稚魚のことを、モジャコと呼ぶ場合もあります。
関西での鰤の名前と順番
関西での一般的な鰤の呼び名を、小さい順で並べると下記の通りです。
サイズ | 名前 |
---|---|
約10~30cm | ツバス |
約30~40cm | メジロ |
約40~60cm | ハマチ |
60cm以上 | ブリ |
はまちやメジロは寿司ネタなどで好まれるため、関東でも知っている人は多いでしょう。天然の鰤と区別するため、養殖の鰤をはまちと呼ぶケースもあるようです。
またこちらも、同じ関西であっても、地域によって名前やサイズが異なることもあります。
その他の地域での鰤の名前と順番
関東・関西以外の地域での一般的な鰤の呼び名を、小さい順に並べると下記の通りです。こちらも、同じ地域であっても、地域によって名前やサイズが異なることもあります。
地域 | 約20cm~ | 約40cm~ | 約60cm~ | 80cm以上 |
---|---|---|---|---|
山形 | アオコ | イナダ | ワラサ | ブリ |
静岡 | ワカナゴ | イナダ | ワラサ | ブリ |
石川 | コゾクラ | フクラギ | ガンド | ブリ |
山陰 | ツバス | ハマチ | マルゴ | ブリ |
福岡 | ツバス | ヤズ | ワラサ | ブリ |
関東に住んでいると「マルゴ」や「ヤズ」は、なかなか聞く機会がないかもしれません。全国各地でさまざまに名付けられていることからも、鰤の移動範囲の広さがわかりますね。いずれにしても、一番大きいサイズが鰤ということは共通しているようです。
カンパチとヒラマサは、鰤とは似て非なる魚
鰤とよく似ている魚に、カンパチとヒラマサがあります。3種ともスズキ目アジ科ブリ属に分類され、見た目がよく似ているため間違える人も多いようです。
上記の表を見てもわかる通り、カンパチやヒラマサは鰤の別名ではなく、まったく別の魚です。混同しないように注意しましょう。
鰤の他にも出世魚がある
出世魚と呼ばれる魚は、鰤だけではありません。鰤以外の出世魚を簡単にご紹介します。
スズキ
鰤に並ぶ出世魚として知られているのがスズキです。日本全域に広く生息していますが、かつては高級魚として扱われていたこともありました。現在ではスーパーでも手に入りやすくなっています。
スズキの一般的な名前の変化は下記の通りです。名前のバリエーションは鰤ほど多くありませんが、多少の地域差はあります。
サイズ | 名前 |
---|---|
約25~40cm | セイゴ |
約40~60cm | フッコ |
60cm以上 | スズキ |
サワラ
鰆(サワラ)も出世魚の一つです。味噌(みそ)と相性がいいので、西京焼きなどにして食べるのがオススメです。
サワラの一般的な名前の変化は下記の通りです。60cm以上で「サワラ」と呼ばれますが、大きいものでは80cm以上になることもあります。
サイズ | 名前 |
---|---|
約40~50cm | サゴチ(サコシ) |
約60cm | ナギ(ヤナギ) |
60cm以上 | サワラ |
ボラ
ボラも日本全国に生息する出世魚です。50cmを超えるサイズになると「トド」と呼ばれることもあるようですが、ボラの方が広く知られているかもしれません。
ボラも鰤と同じく地方によってさまざまな名前がありますが、ここでは関東での一般的な呼び名をご紹介します。
サイズ | 名前 |
---|---|
10cm未満 | オボコ |
約10~15cm | イナッコ(スバシリ) |
約15~30cm | イナ |
約30~50cm | ボラ |
50cm以上 | トド |
鰤をお正月のおせちに入れると出世する?
出世魚である鰤は、おせち料理に入れると出世するといわれています。その理由や、おせち以外にも、出世魚である鰤で縁起を担ぐ方法の一部をご紹介します。
出世魚・鰤をおせちで食べる理由
おせち料理は、家内安全・五穀豊穣(ほうじょう)・商売繁盛を願って食べる行事食です。おせち料理はお重に入れることが多いですが、その際、二段目には海の幸の焼き物を入れるといいとされています。ここに、鰤は照り焼きにして入れるのが一般的です。
出世魚の鰤を入れることで、立身出世の願いが込められています。また「寒ブリ」が有名なように鰤は冬場が旬なので、脂がのっていておいしく食べられるというのも理由の一つのようです。
鰤は関西では「年取り魚」として大晦日に食べられていた
昔は、大晦日(おおみそか)に年越しそばと同じように「年取り魚」を食べる習慣がありました。地域によって食べる魚は異なり、東日本は鮭(さけ)で、関西は鰤、中間に位置する関東は鰤か鮭のどちらかということが多いようでした。当時の名残で、現在は大晦日ではなくお正月に「年取り魚」を食べることもあるようです。
鰤はおせちだけでなくお雑煮に入れる地域も?
正月料理は地域によって違いがありますが、鰤を雑煮に入れて食べる地域もあります。代表的な地域は、長野県や近畿・中国・北九州地方などです。
またおせち料理や雑煮に限らず、鰤を鰤大根や照り焼きにして、お正月の朝食や夕食に楽しむ地域もあるようです。
鰤を家庭でおいしく食べられる! おすすめメニュー3選とレシピ
鰤は、おせちや雑煮などのお正月料理以外にもさまざまな調理法があります。鰤を家庭でおいしく食べるためにおすすめのメニューを3つ、簡単なレシピとともにご紹介しましょう。
鰤大根
鰤を使った料理で代表的なものの一つが、鰤大根です。最初に鰤の臭みをとるのと、鰤のうま味をしっかりと大根にしみこませるのがコツです。
- 鰤を食べやすい大きさに切る
- 沸騰したお湯にくぐらせて臭みをとる
- 半月切りや乱切りにした大根と水を鍋で煮立てる
- 大根に火が通ってきたら、しょうが、しょうゆ、みりん、酒を鰤と一緒に鍋にいれ、味がしみるまで煮込む
鰤の照り焼き
鰤の照り焼きは、前述のようにお正月のおせち料理でよく用いられます。おせち料理以外にも、普段の食卓でメインディッシュになるメニューなので、作り方を知っておくといいでしょう。
- 鰤に塩をふって10分ほどおき、出た水気をキッチンペーパーで拭き取る
- フライパンにサラダ油を熱し、中火で鰤の両面を焼く
- しょうゆ、みりん、酒、砂糖を混ぜたたれをフライパンに入れ、鰤に絡める
- たれにとろみがつき、照りが出るまで焼く
鰤の竜田揚げ
鰤の竜田揚げも、鰤のうま味を生かしたシンプルな料理です。調味料で味付けした鰤を片栗粉に絡めて揚げるだけですが、噛むと染みだす鰤の脂とサクサクの衣の相性がいい料理です。
- しょうゆ、酒、ごま油、ニンニクとしょうがのすりおろしを混ぜる
- 鰤を一口サイズに切って、1.で合わせたものにもみこみ、10分くらいおいてから水気を切る
- ビニール袋に片栗粉と鰤を入れて振る
- サラダ油を温め、キツネ色になるまで鰤を揚げる
出世魚の鰤を食べて、新しい一年を良い年にしよう
鰤やはまちが出世魚と呼ばれる理由や、出世魚の種類、鰤のおいしい食べ方についてご紹介しました。
鰤は大きさによって名前を変える出世魚で、地域によって名前は異なりますが縁起が良い魚として広く親しまれています。その年に出世することを願ってお正月に食べる地域も数多くあります。年末年始には出世魚とされる鰤を食べて、新しい一年を良い年にしましょう。