小山怜央アマがプロ入りを目指す棋士編入試験は、第2局の岡部怜央四段戦が12月12日(月)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、111手で小山アマが勝利して通算成績を2勝0敗とし、試験合格まであと1勝としました。
二度目の顔合わせ
棋士編入試験は新四段5人と対局を行い、3勝を挙げることができれば合格となるもの。小山アマは11月に行われた第1局で徳田拳士四段に勝って本局を迎えました。本局で試験官を務める岡部四段とは今年7月に行われた早指し棋戦での対局があり、その際は角換わり腰掛け銀の激戦を小山アマが逆転でものにしていました。
本局、先手となった小山アマは得意の角換わり腰掛け銀に誘導します。対する岡部四段もこれに応じ、後手から先攻する定跡を採用しました。6筋で戦いが起こったときに岡部四段が見せた玉引きはやや珍しい指し方。定跡としては今年に入ってから指され始めた手で、後手は自身の6筋の歩を1マス後退させることでのちの桂跳ねの攻めを狙う構想です。
玉の大移動
ジリジリとした間合いの計り合いが続いたのち、先手の小山アマは4筋の歩を突いて位を取りました。空いたスペースに放った▲4六角が盤面全体を制圧する角打ちで、穏やかな展開になれば模様のよさが物を言うと見ています。持久戦になってはたまらないと、岡部四段が9筋から動いて盤上は本格的な戦いに突入しました。
盤面左方で戦いが始まったのを見た小山アマは、ここから自玉を大きく右方へ移動させていきます。岡部四段が9筋に角を打ち込んで飛車先突破を用意したときに、これを放置して▲4七玉と上がったのが小山アマの見せた現代的な玉さばきでした。こうなってみると、先に打った自陣角との連携で小山アマの玉はさながら天空の城に囲われているかのようです。
無理攻めをいなして小山アマが反撃決める
ゆっくりしていても勝機はないと見た岡部四段はここから攻勢を強めます。狙いの角切りを実行して8筋に竜を作ったのは大きな戦果でしたが、先手陣の下段飛車が有効な守り駒として機能しておりせっかくの竜も敵陣深くに侵入できません。また、4筋に逃れていた小山玉に対して有効な攻め方が残されていなかったのも岡部四段の誤算でした。48分の長考のすえ、自玉の守り駒として機能していた桂まで跳ねたのはひねり出した最終手段という印象でしたが、持ち時間を残す小山アマは岡部四段の勝負手まで想定の範囲内でした。受けに回りたくなる局面でじっと銀取りの歩を打って後手の攻めを誘ったのが、本局における小山アマの勝着となりました。
小山玉を囲んでいた守り駒はすべてはがされていますが、小山アマは自玉に詰み筋がないことを読み切っています。反対に、丁寧に受けに回るなかで小山アマの駒台には十分すぎるほどの戦力が蓄えられていました。最後は、追いすがる岡部四段の攻めが途切れるのを待って、急所の銀打ち一発で岡部四段の玉を仕留め上げました。終局時刻は16時39分、自玉が詰み筋に入ったのを確認して岡部四段が投了を告げました。
勝った小山アマはこれで通算成績を2勝0敗とし、棋士編入試験合格まであと1勝に迫りました。注目の次局では狩山幹生四段と対戦します。
水留啓(将棋情報局)