「私はこの会社につとめています」「改善につとめます」…あなたは「つとめる」という言葉やその漢字を正確に使い分けられますか? 努める、務める、勤める、勉める…「つとめる」を表現する漢字は大きく分けて4つあります。今回は、4つの「つとめる」について、意味や使い方、例文、類義語を紹介します。

  • 「努める」「務める」「勤める」「勉める」の違い

    4つの「つとめる」を正しく使い分けましょう

「努める」「務める」「勤める」「勉める」の違い

  • 「努める」「務める」「勤める」「勉める」の違い

    4つの「つとめる」の意味はそれぞれ異なります

日本語には同音異義語が多くありますが、「つとめる」もその一つです。4つの表記にはどのような違いがあるのか、まずはそれぞれの意味をみていきましょう。

「努める」の意味

「努める」は「力を尽くして行う」という意味を持ちます。努力の「努」という言葉からも、意味合いが何となく伝わってきますよね。

何かに励む、何かを成し遂げるために頑張る、というニュアンスを持ちます。「努力する」という漢字から覚えておくと良いでしょう。

「務める」の意味

「務める」は「なんらかの役割を全うする」という意味を持ちます。これも「任務」などの言葉から意味の連想ができます。

与えられた何らかの任務を遂行する、役割に従って働く、というニュアンスを持ちます。例えばリーダーや主役など、主に何かしらの役割を受け持ち、それに従う場合などに使われます。

「義務」や「職務」などの漢字から関連づけて覚えるようにすると良いでしょう。

「勤める」の意味

「勤める」は、「会社などに勤務する」という意味を持ちます。「勤務」という言葉からも連想しやすいでしょう。「勤める」は、会社や企業、店などに雇われている立場である場合に用いられます。例えば、経営者や個人事業主などの場合は「勤める」とは表現しません。

また、仏道に励むことも「勤める」と表します。仏教では「勤」は「勤行(ごんぎょう)」という言葉でも使われています。

「出勤」や「勤労」などの漢字から関連づけると意味を覚えやすくなります。

「勉める」の意味

「勉める」は、4つの「つとめる」の中ではあまり見慣れないかもしれません。力を尽くして行う」という、「努める」と同じ意味を持ちます。

何かに対して力を出し切るさまを意味しており、「努力する」というニュアンスと同義です。

「努める」との違いは、常用漢字かどうかというだけです。「努める」は常用漢字として記載されていますが、「勉める」は常用外漢字とされており、公的な文書などではあまり使用しません。

「努める」「務める」「勤める」「勉める」の使い分け方・例文

  • 「努める」「務める」「勤める」「勉める」の使い分け方・例文

    4つの「つとめる」を例文で理解していきましょう

意味が理解できたら、次は実際の例文で使い分け方をみていきましょう。「努める」「務める」「勤める」「勉める」それぞれ2つずつ例文を紹介します。

「努める」の例文

「私たちは日々、サービスの向上に努めています」

お店など、接客を伴う形態の企業などでよく耳にする例文です。「サービス向上のために日々努力している、力を尽くしている」という意味となります。

「早く仕事に復帰したいだろうが、今は療養に努めるべきだ」

「仕事に復帰したい気持ちはわかるが、今は療養して健康になることに力を尽くすべきだ」という、ケガや病気の人にかける例文です。

「努める」は具体的に目的や対象となるものが定義されていないため、幅広いシーンで使うことが可能です。

「務める」の例文

「彼は学芸会で主役を務めることになった」

「主役を演じるという任務を遂行する」という意味合いの例文です。このように、何らかの役割を全うする場合に「務める」を使用します。

「息子が成人するまでしっかりと育てることが親の務めだ」

「息子が成人するまで育てることが親の役割だ」とも言い換えられる例文です。

「務める」は、役割が与えられるものでなく、主観的・自発的にやらなければいけないと思っている役割を果たす場合にも用いられます。

「勤める」の例文

「私の親は保険会社に勤めている」

「自分の親は保険会社で勤務している」と同義の例文です。

保険会社で働いている、ともいえますが、勤務をしておらず自発的に仕事をしている場合は「勤めている」とは表現しないので注意しましょう。

「4月からは隣町の学校に勤めることになっている」

「4月から隣町の学校で勤務することが決まっている」という意味合いの例文です。「勤める」は「出勤する」「勤務する」などのニュアンスで使われることが多いです。

「勉める」の例文

「できるだけ目を合わせないように勉める」

「目を合わせなように努力する」という意味合いの例文です。「勉める」は「努める」とほぼ同じ意味で使用されます。

意味が同じ場合は、「努める」の方を使う場合が多いので、覚えておくと良いでしょう。

「試験に合格するために勉学に勉める」

「試験に合格するため力を尽くして勉学に励む」ことを表した例文です。こちらも「勉学に力を尽くす」、つまり「努力する」という意味で使われています。

「勉める」は常用漢字ではないため、迷った時は「努める」を使うようにしておきましょう。

「努める」「務める」「勤める」「勉める」の類語

  • 「努める」「務める」「勤める」「勉める」の類語

    4つの「つとめる」の類語を確認しましょう

それぞれの「つとめる」の類語を紹介します。漢字から連想できるものが多いため、覚えやすいでしょう。ぜひ覚えてくださいね。

「努める」の類語

「努める」の類語には、下記のようなものが挙げられます。

努力する

尽力する

頑張る

挑む

励む

精進する

試みる

企てる

「努める」は「精力的に物事に取り組む」姿勢を意味し、同様の意味を持つ言葉が類語として挙げられます。目的や対象は限定されないため、非常に使いやすいでしょう。

「務める」の類語

「務める」の類語には、下記のようなものが挙げられます。

引き受ける

果たす

請け負う

全うする

「務める」は、主に「何らかの役割」を対象として使われます。与えられた役割、もしくは自分で主観的に持っている役割を「引き受ける」「果たす」といった意味を持つ言葉が類語となります。

「勤める」の類語

「勤める」の類語には、下記のようなものが挙げられます。

勤務する

働く

勤労する

就労する

仕える

在籍する

労働する

「勤める」は、何かしらの職に就く、働くという意味で使われるため、主に「働くこと」を表す言葉が類語として挙げられます。

「勉める」の類語

「勉める」の類語には、下記のようなものが挙げられます。

努力する

尽力する

頑張る

挑む

励む

精進する

試みる

企てる

「勉める」は「努める」とほぼ同じ意味で使用されるため、類語も同じとなります。

「勉める」には、「無理をしてでも力を尽くす」「困難にも負けずに努力する」といった意味もありますが、常用漢字ではないため、あまり使われることはありません。

「努める」「務める」「勤める」「勉める」の英語表現

  • 「努める」「務める」「勤める」「勉める」の英語表現

    4つの「つとめる」はそれぞれ英語表現も異なります

最後に、4つの「つとめる」の英語表現を紹介します。

まず、「努める」は英語では「try」「make effors」と表現します。「努力する」「骨を折る」という意味を持つ英語表現です。

「務める」は「serve」と表します。何らかの「役目を行う」という意味を持つ英語表現です。

「勤める」は「work」と表します。「働く」「勤務する」という意味を持つ英語表現です。

「勉める」は「try」などのほか、「strive」と表します。「努力を費やし試みる」という意味を持つ英語表現です。

「つとめる」を正しく使い分けられるようになろう

4つの「つとめる」について、意味や使い方、例文、類語などを紹介しました。

4つも種類があると「使い分けが難しい」と思ってしまうかもしれません。しかし、読み方は同じであっても、意味が明確に異なり、意味を漢字からも想像しやすいため、他の同音異義語より理解しやすいのではないでしょうか。

「努める」「務める」「勤める」「勉める」これら4つの違いをしっかり押さえ、「つとめる」を正しく使い分けられるようにしましょう。