「始め」と「初め」は同じ発音で普段違いをあまり意識しないため、文章を書こうとすると迷ってしまう言葉のひとつかもしれません。
仕事などで資料を作成する際の書き間違いを防ぐには、「始め」と「初め」の意味に注目する必要があります。日本語を正しく使い分けて普段の生活に役立てましょう。
この記事では「始め」と「初め」の意味や使い方、例文、英語表現について解説します。
「始め」と「初め」の違いと意味とは?
「始め」の意味は始めること
「始め」は開始と似た意味の言葉です。ものごとを新しく行うときやこれから行うこと自体を表し、テスト開始の号令で用いる「用意、始め」など動詞のような使われ方もあります。
「始め」の対義語は「終わり」です。ものごとの始まりがうまくいくと最後までうまくいくという意味の慣用句「始め良ければ終わり良し」があります。
なお「富士山をはじめ日本の山は」というように、最も代表的なものを例示する際にも「始め」が使われます。この場合はひらがなで表記されることもあります。
「初め」の意味は順番の最初
「初め」は、時間や時期などが「早い」ことを表す言葉です。「月初」「初めて見た」「文の初めのほう」のように使われるため、「一番目」「一度目」「冒頭」などの意味に近い表現だといえます。
「物事を始める際、最初に思い立ったときの気持ちを忘れてはいけない」という意味の「初心忘るべからず」なども「初め」が使われています。
また、挨拶の「はじめまして」も「初めてお目にかかります」という言葉が語源になっています。
「始め」と「初め」の例文
ここでは、「はじめ」を漢字で表記する場合の例文をご紹介します。
「始め」の例文
「始め」を使う例文には以下があります。
- 始めはずいぶん道のりが長く感じられましたが、どうにか完走できました。
- 片づけは、作業がしやすく狭い引き出しや下駄箱から始めるのがおすすめです。
- 仕事を始める前には、事前に計画を立てておく必要があります。
- 仕事始めは早めに家を出発するようにしています。
- 新しい事業を始めることとなりました。今後とも変わらぬお引き立てのほどよろしくお願い申し上げます。
「初め」の例文
「初め」を使う例文には以下があります。
- 「明けましておめでとうございます」は年の初めのあいさつです。
- 仕事は、実際に担当してみて初めて分かることがあります。
- 藤の花は5月の初めが見頃です。
- 実験の定義に誤りがあったので、初めからやりなおす必要があります。
- カップスープが出てきた場合、初めはスプーンで飲むのがマナーです。
迷いやすい「始め」と「初め」の使い分け
ここでは、よく使われる「始め」と「初め」の表現から、どちらを書くべきか迷いやすい言葉をピックアップしてご紹介します。
-「はじめ」がかかわる言葉は、漢字で書く表現が一般的なものや状況により書き分けが必要となる表現、敢えて漢字でかかずにひらがなで表記する場合があるのです。もし迷ってしまった場合には、ひらがなで書いておくのも一案でしょう。
「はじめに」は「初めに」
「はじめに○○を、次に○○を」という順序を示す場合の初めは、1番目を指す「初め」を使います。
- 何事も初めが肝心なので、事前の準備が欠かせません。
- 初めに心配していたとおりのことが起こってしまった。
また、段取りを説明をする表現の場合にも「初めに」を用いるのが一般的です。
- 初めにプログラムをダウンロードして、次にインストールをしてからアプリケーションを開きましょう。
「仕事はじめ」は「仕事始め」
「仕事はじめ」は「仕事始め」と書きます。これは「一年の最初の仕事」のため誤って「仕事初め」と書きたくなる難しい表現かもしれません。
しかし「仕事はじめ」の本来の意味は、「一年の仕事の始まり」なので、「開始」の意味に近い「仕事始め」となるのです。同様に習い事などをはじめる「稽古はじめ」なども「始め」を使います。
なお、物事の最もはじめを大切にすべきという意味の「はじめが肝心」という表現についても「始めが肝心」と書きます。ただし、同じ意味でも「何事も最初が肝心です」と表記する場合は「初め」が使われるので注意が必要です。
「年のはじめ」は「年の初め」
今月のはじめや季節のはじめには「初め」と書きます。そのため、月の最初を表す「月のはじめ」を漢字で書く場合は「月初め」です。同様に新年や正月を「はじめ」で表す場合は「1月の初め」となります。
正月の2日目に行われる「かきぞめ」の漢字表記は「書き初め」です。一方、書き初めを表す別の表現である「筆はじめ」は「筆始め」と書きます。この言葉も、状況により表現が異なります。
「はじめは」は「初めは」
「はじめは難しかった」「段落のはじめ」などの「はじめ」は時間や時期を表す状況のため「初め」を使います。
「はじめは難しい」や「段落のはじめ」は、どちらも段落の一番目の部分を指すため、「初め」を用いて「初めは難しい」「段落の初め」と表記します。
「はじめの一歩」は「初めの一歩」
「○○について学ぶはじめの一歩」「はじめの一歩は」といった表現の場合、一歩は「最初」を意味することが一般的です。そのため、漢字で表記する場合は「初めの一歩」と記載します。
「~をはじめとする」は「始め」ひらがなでもOK
公用文や論文の「○○をはじめとする」は「始め」が適切です。「貴社をはじめ、関係企業の皆様からご協力を賜り~」「社長をはじめとする、社員一同心より御礼申し上げます。」などビジネスでも多く使われる言い回しのひとつです。
ABCDといくつかの選択肢がある場合に、すべてを同等に扱うのではなく、特定の人や物について強調したいという場合に使われます。ただし、この用途の場合には、ひらがなで表記してかまいません。
「はじめのうち」は「初めのうち」
「はじめのうちはフロントガラスが曇っていた」といった場合に使われる「はじめのうち」も最初のうちという意味を表します。そのため「初めのうち」と表記するのが適当です。
「はじめまして」は文意により「初めまして」と「~を始めまして」
「はじめまして」は文意により使い分けが必要な「始め」と「初め」です。
人と初めて会う場合には「初めまして」を用いますが、「新しく趣味を始めまして」というように何かを「開始した」場合には「始め」と表記します。
「始め」と「初め」の英語表現
ビジネス英語でも「始め」と「初め」は頻繁に使われる表現です。日本語での使い分けに迷った場合には、英語に置き換えて考えてみると使い分け方がわかりやすくなるでしょう。
「始め」の英語は「start」「beginning」など
「始め」を英訳する場合、「start」や「beginning」などが当てはまります。
- Our project will start next week. (私たちのプロジェクトは来週から始まります。)
- We begin a new business. (私たちは新しいビジネスを始めます。)
「初め」の英語は「first」
「初め」を英語にする場合、「first」などが当てはまります。
- The first man from the right is my father. (1番右の男性が私の父です。)
- She is the first engineer to build the machine. (彼女は機械を作った最初のエンジニアです。)
「始め」は「開始」、「初め」は「最初」と置き換えて考えてみよう
始めと初めは書き間違いが多い表現のため、言葉の意味を確認しておくのがおすすめです。また慣用句として一般的な表現を知っているととっさの場合に便利です。
特に「始めが肝心」と「何事も最初が肝心です」、「書き初め」と「筆始め」のように同じような意味でも組み合わせにより表記が異なる場合があるため注意が必要です。
もし漢字で書く際に迷った場合には、「始め」は「開始」、「初め」は「最初」と置き換えて考えると判断しやすくなります。ぜひ日常のタイミングで活用してみましょう。