日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’22』(毎週日曜24:55~)では、国籍を持てずに生きてきた男性に密着した『無国籍ブルー』(中京テレビ制作)を、きょう11日に放送する。

  • アパートの契約を断られて涙する滝澤ジェロムさん

1999年、名古屋市で生まれた滝澤ジェロムさんは、10歳のときに生活が一変する出来事があった。ある日、目を覚ますと入管の職員と警察が両親を囲んでいた。フィリピン人の母が、不法滞在(オーバーステイ)の状態だったのだ。母親は摘発され、預けられた児童養護施設でさらなる事実が発覚。「この子、国籍がない」…フィリピン国籍も日本国籍もなかった。

子どもが無国籍になってしまう理由は、出生時の手続きの不備が多くを占める。ジェロムさんの母・ジャッキリンさんは日本人男性・滝澤さんと結婚し、97年に来日。しかし、別のフィリピン人男性との間にできたジェロムさんを生んだ。そのとき、すでに不法滞在の状態だった母は、発覚を恐れて必要な手続きを行わなかった。「生きていくために、バレるわけにはいかなかった…」と涙する母を、ジェロムさんは冷ややかな目で見つめていた。生まれ育った国、日本の国籍を取りたいと願うジェロムさん。しかし、無国籍であるがゆえに、様々な壁にぶつかることになる。

昨年11月、大学4年生のジェロムさんのもとにうれしい知らせが届いた。面接を受けていた東京の児童養護施設からの「採用内定通知」だ。引っ越しの準備を進めていた矢先のことだった。「東京のアパート、入居できないって」とアパートを管理する会社から連絡が入ったという。契約を断られた理由は明らかにされなかった。しかし、外国人がアパートの契約で苦労するケースは多い。ジェロムさんの場合は、無国籍だ。「大人の勝手でそうなったんじゃん…自分で選んだ道じゃない」とやり場の無い怒りを覚える。

ジェロムさんは、就職活動と並行して国籍取得に向けた手続きを進めていた。自らの出生や母との親子関係を証明し、まずはフィルピン国籍を取得しなければならない。フィリピンから取り寄せなければならない書類もあった。そして、フィリピン領事館での手続きの中、「国籍を取得することで、『滝澤』の姓が使えなくなる」と告げられた。複雑な思いのジェロムさんとは対照的に、自らの過ちを開き直る母。「それ以上話さないで」と、母に向けて怒りをあらわにする。

  • 母・ジャッキリンさん

そして今年6月、ようやくフィリピン国籍を取得したジェロムさん。しかし、日本人になるためには、さらなる条件をクリアしなければならない…。

国の施策として外国人を受け入れてきた日本。その裏で生まれた「国籍の無い子ども」。日本における無国籍者の問題は、まだ認知されていない。しかし今も、国籍に振り回され、生きづらさを感じている人たちがいる。無国籍の子どもを減らし、支援する体制が、この国に求められている…。