長崎県の西に位置する「五島列島」は、NHKの連続テレビ小説『舞いあがれ!』の舞台にもなり今、注目を浴びている。そんな五島は雄大な自然が育んできた美しい観光スポットやグルメが満載。
新上五島町は九州の西端、長崎県五島列島の北部に位置し、7つの有人島と60の無人島から構成されている。大部分は西海国立公園に指定されており、島の端から端まで車で約2時間で行き来が可能。島には、長年かけてつくり出された美しい景観、信仰を守り続けた信者たちが建てた世界に誇る教会群など、おすすめスポットが盛りだくさん。その魅力をみなさんにもお届けしよう。
→「福江島編」を読む
■新上五島町へのアクセスは?
筆者は今回、五島つばき空港がある福江島の福江港~新上五島町の奈良尾港へ行くルートを選択。ちなみに本土から行く場合は、長崎県(長崎港・佐世保港)と福岡県(博多港)から船が出ている。
いざ、船に乗り込んで新上五島町へ! と、その前に福江港ターミナルに行ったらお土産として「鬼鯖鮨」を購入するのがおすすめ。空港などでも購入できるが、人気商品のため売り切れてしまうことが少なくないという。それを聞いて筆者も早速お買い上げ。
「鬼鯖鮨」は、東シナ海五島の西沖で取れた真鯖を使い、独自の旨酢で浅くしめることによって、生の鯖に近い味わい楽しめるという。早速、一個いただいてみると……肉厚で食べ応えのある鯖の旨味が口の中いっぱいに広がる。そんなに青物が得意ではない筆者だったが、「もう一個」と箸が進むほどの味わいだった。
■奈良尾のあこう樹
奈良尾港ターミナルに着いてはじめに向かったのは、「奈良尾のあこう樹」。奈良尾神社参道をまたぐように根がわかれ、自然の鳥居ともいえるこの樹は、国の天然記念物にも指定されている。
樹齢670年を超える樹がそびえる光景は、とにかく神秘的。なんだかわからないが目の前に立っているだけで不思議とエネルギーチャージされていくようだった。
■キリスト教関連スポット
続いては、キリスト教にまつわる場所を3つほどご紹介。
古くから大陸との交流地点として栄え、遣唐使、倭寇(わこう)などの歴史的遺産や神社仏閣、教会など文化的遺産が数多く存在する長崎・五島列島。
特に、キリスト教伝来以降、禁教期には潜伏キリシタンとして、ひそかに信仰を続けてきた歴史がある。長崎県・熊本県にある12のキリスト教関連資産で構成する「世界文化遺産 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、2018年に世界文化遺産に登録され、このうちの五島列島には「新上五島町」の頭ケ島集落を含む4つの構成遺産がある。
ここからは「新上五島町」にあるキリスト教関連スポットをみていこう。
桐教会
白亜の教会は、漁港内に荘厳とそびえたつ神秘的な存在。1897年に桐小教区が設立され、1958年に現在の教会が建てられている。目印は、コンクリート造りの真っ白な尖塔と可愛らしい赤い屋根。
教会入り口横には、五島キリシタンのカトリックへの復活を導いたとされるガスパル与作とその父パウロ善七、ミカエル清川沢次郎を顕彰する銅像が建てられている。
ちなみに、こちらを訪れたなら高台から教会を背にして、エメラルドグリーンに輝く入り江を見てほしい。筆者が訪れた日は、くもり空にも関わらず、写真のような美しい光景が広がっていた。
頭ケ島天主堂
一軒をのぞいて皆キリシタンだった頭ヶ島。キリシタン弾圧「五島崩れ」の時、信徒は牢から逃げ出し、島を離れ、迫害が終わってからこの地に戻ってきたと言われている。
1919年に完成した頭ヶ島天主堂は、鉄川与助によって建設され、近くの島の石を切り出して造られている。2001年には、国の重要文化財に指定され、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成する「頭ヶ島の集落」に包括される石造りの天主堂である。
内部には、五島を代表とする"つばき"をモチーフにした花柄文様があしらわれ、「花の御堂」との愛称も。石造りによる重厚感と、花の装飾によるしなやかさを兼ね備えた美しい教会は、この島のシンボルと言ってもいいだろう。なお、見学には(個人・団体問わず)事前連絡が必要とのこと。
キリシタン洞窟とハリノメンド
先ほども説明したように、五島ではキリシタン弾圧「五島崩れ」が起き、その迫害を逃れるために、里ノ浦地区のキリシタンは、船でしか行くことのできない洞窟に身を隠していた。そのときキリシタンが隠れていた洞窟、「キリシタン洞窟」を今でも見ることができる。
ちなみに、当時洞窟で暮らしていたキリシタンは、朝食を炊く煙を、沖を通る漁船に見つかり、役人に通報され、捕らえられてしまったという。
その後、1967年、苦しみに耐え、信仰を守り抜いてきた先人たちをしのび、その悲しみを永く祈念するために、洞窟の入り口に高さ4mの十字架と3.6mのキリスト像が建てられた。
また洞窟近くには、「ハリノメンド」と呼ばれる荒波の浸食によってできた穴がある。この穴は、マリア様が幼子イエスを抱いている姿(聖母子像)のシルエットに見えることから注目を集めている。
■船崎饂飩伝承館でうどん作り体験
五島グルメといえば、五島手延うどんを思い浮かべる人もいるのではないだろうか。その昔、遣唐使が伝えたといわれる五島手延うどん。その発祥の地ともいわれる船崎地区では、今も手延べ製法でうどんが作られている。
「船崎饂飩伝承館」では、うどん作りの全工程のうち、麺を2本の棒にかけ、細くしていく「かけば」・麺を引き伸ばす「こびき」・麺線を引き伸ばしながら箸で分け、密着しないようにする「はたかけ」作業が体験できる(料金は大人3,000円・子ども2,200円、3日前までの予約が必要)。
最初は難しいものの、慣れればスムーズに。ひたすら麺と向き合う作業は、余計なことを考えず無心になれる時間だった。
■矢堅目の駅
旅の休憩にもってこいの「矢堅目の駅」。ここでは、上五島のお土産品の販売・喫茶・観光地案内などを提供している。
最も特徴的なのが、五島近海の澄んだ自然海水をくみ上げ、時間と手間を掛けて行う「塩づくり」。添加剤や加工物を一切加えずに、時間と手間をかけ海水の中の塩を結晶化させているという。
また、ここに来たなら「ソフトクリーム」もおすすめ。「塩バニラソフトクリーム」(300円)、「塩チョコソフトクリーム」(350円)など種類が複数あるので、好みにあわせてセレクトを。テラス席から望む絶景を目の前に、ぜひ美味しさを堪能してほしい。
■矢堅目公園のトトロ岩
ソフトクリームで元気を充電したあとは、矢堅目公園へ。階段を上った先に広がるのは、巨岩や複雑な海岸線、崖が織り成す迫力ある風景だ。
その中でも特に目を引くのは、アニメキャラクター・トトロに似ているといわれる岩、通称「トトロ岩」! きれいな心の人にしかトトロに見えないといわれたが、筆者には見える見える! むしろトトロにしか見えない(笑)。
ごつごつした岩なのだが、トトロのような丸みを帯びたフォルムが形成されているのがなんとも不思議。
ちなみに、天気がよければ矢堅目公園からダイナミックな夕景を拝むことができる。ただ、夕日がなくとも圧巻の景色に心奪われること間違いなし。矢堅目の駅からも徒歩15分程度の場所にあるのでぜひ、一緒に見学を。
■星空ナイトツアー
最後に夜の新上五島町を満喫するなら、「星空ナイトツアー」がおすすめ。その日のコンディションと利便性を考えて都度、場所を選定してくれるツアーとなっている。
本ツアーは、星空を知り尽くしたガイドが、満天の星空を案内してくれる。参加者はリクライニングチェアにゆったりと座り、星を眺めるだけでなく星座の探し方を学んだり、誕生星座を見つけたり、星座にまつわる神話に耳を傾けたりなど、一味違った星空の楽しみ方を知ることができる。
この日は、うれしいことに流れ星も発見。星空に包みこまれるようなひと時は、とにかく非日常感満載。
なお、明らかに星空が見えないと予想できる場合は、催行中止となる。開催当日の16時頃までに天候を確認し、連絡をしてくれるという。
大自然だけでなく、歴史文化も学べるスポットが盛りだくさんの新上五島町。異文化があわさり新たな文化を生み出しているからか、随所に神秘的な雰囲気が漂っていたように思う。そんな魅惑的な島で、あなたもぜひミステリアスな空気感を味わってみては?