渡辺明棋王への挑戦権を争う第48期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は、挑戦者決定トーナメント敗者復活戦2回戦の藤井聡太竜王―羽生善治九段戦が12月8日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、128手で藤井竜王が勝って挑戦者決定戦に進出しました。
角換わり腰掛け銀の定跡形
振り駒で先手となった羽生九段は角換わり腰掛け銀の定跡形に誘導します。これに対し玉を寄って先後同型を避けた後手の藤井竜王は、続いて4筋の歩を突いて間合いを図りました。これはやや珍しい受け方で、右玉に組み替えつつ仕掛けを待つ方針です。駒組みが進み、羽生九段は中央に回った飛車を起点として5筋に位を取ります。そのまま羽生九段が4筋の歩を突いて戦いが始まりました。
この手順のなかで局面は定跡形に合流しており、先攻した羽生九段が先手番のリードをどのように具体化するかが局面の焦点になってきました。たがいに桂を中央に跳ね合って戦いが一段落したところで、羽生九段は2筋の歩交換に出て一歩を入手します。ここで手にした歩を元手にたたきの歩の手筋を放ち、6筋にと金を作ったのが羽生九段の立てた構想でした。
難解な押し引きが続く中盤戦
と金を引いての攻めを見せられた後手の藤井竜王は、このタイミングで攻め合いに舵を切りました。自陣の銀で先手の桂を食いちぎってすぐにこの桂を7筋に打ったのが好判断で、手順に先手玉の玉頭を強襲する狙いを持っています。この反撃が厳しく、形勢は藤井竜王のペースで推移していきました。
攻め合いを望む羽生九段は、後手と同様に自陣の銀を後手の桂と刺し違えて後手玉付近に設置します。3筋に据えた桂は後手玉の逃げ道を封鎖しており味よく見えましたが、ここは4筋に銀を放り込んで飛車成りを急ぐ手も有力で、感想戦でも深く研究されました。いずれにしても、この難所を乗り切った藤井竜王がリードを維持して終盤戦に乗り込むことに成功した形です。
藤井竜王が快勝で挑戦者決定戦へ
猛攻を続ける羽生九段に対し、藤井竜王は自然な指し回しで局面を単純化していきます。羽生九段がと金を寄せたときに△3三金と上がったのがよい見切りで、3筋の金銀が手厚く藤井玉にはなかなか詰めろがかかりません。一方で羽生玉に対しては飛車の利きを生かした確実な攻めが残っています。
羽生玉への寄せを見切った藤井竜王は、自陣への飛車取りにもかまわず寄せに打って出ます。この直後、桂を成り捨てて歩に打ち換えたのが本局の掉尾を飾る決め手となりました。終局時刻は19時13分、形を作った羽生九段が、自玉が詰み筋に入ったのを確認して投了を告げました。これで勝った藤井竜王は挑戦者決定戦に進出。佐藤天彦九段と変則二番勝負を行い、2連勝すれば挑戦権を獲得します(佐藤九段は1勝すれば挑戦権獲得)。