2022年も残すところあとわずか。今年こそは友人や会社の人と「忘年会をやろう!」という人も少なくないはずです。1年を締めくくる宴席でお酒を酌み交わしながら、交流を深めようとする人にお届けしたいのが「二日酔い」に関する知識。

今回は二日酔いの予防策から対処法までを国家公務員共済組合連合会 大手前病院の甲斐沼孟先生に伺いました。忘年会シーズンのこの時期におさえておきたい内容を、ぜひチェックしてみてください。

  • 医師に聞く! 「二日酔い」の対処法・予防法は?

■二日酔いはなぜ起こる?

――二日酔いはなぜ起こるのでしょうか?

はじめに、前提としてお酒を飲み過ぎた翌日などに引き起こされる、吐き気や頭痛などの不快症状を「二日酔い」と呼んでいます。

一般的にお酒の成分であるアルコールは肝臓で代謝され、酵素などの働きで「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。そこからさらにアセテート(酢酸)という成分になるのです。アセテート(酢酸)は血液に乗って全身をめぐりながら、筋肉や脂肪組織で水と二酸化炭素に分解されて、呼気や汗、尿として体外に排出されます。

二日酔いが起こる原因は、アルコールが分解されてできる「アセトアルデヒド」が、肝臓で十分に処理されないためと考えられています。この物質には、嘔気や動悸、頭痛などを引き起こす作用があり、お酒を大量に飲み過ぎると、肝臓がアセトアルデヒドを十分に処理しきれず、血液中のアセトアルデヒドの濃度が高くなります。そのためアセトアルデヒドの毒性によって胃痛や胃もたれ、胸やけ、吐き気、動悸、頭痛などさまざまな二日酔いの症状が出現するのです。

■予防法や飲む際に注意すべきポイント

――二日酔いの予防法や、飲む際に注意するべきポイントを教えてください?

予防法1: 水を飲む

お酒を飲む前後や、飲んでいる最中に水を飲むことで、体への負担を減らして、飲み過ぎを予防することができます。特にアルコール度数の強いお酒を飲むときには、合間でチェイサーと呼ばれる和らぎ水をはさみましょう。そうすることでアルコール濃度を薄めることができ、飲酒をするペースを落ち着かせる効果が期待できます。

また、お酒には利尿作用があるため、飲酒したあとは体が脱水状態に陥る傾向が指摘されています。脱水による体調不良を防ぐためにも、飲酒後には十分に水分を摂取しましょう。

適切なセルフケアを実践して休息すれば、もし頭痛などの二日酔い症状が起こった場合も、翌日か数日以内には症状の改善が期待できます。

予防法2: 食事をしながらゆっくり飲む

空腹状態で飲酒をすると、すぐに酔いが回って体調不良になります。また、アルコール成分が胃の粘膜を直接的に刺激して吐き気や嘔吐などの症状を引き起こしますので、お酒を飲むときには必ず並行して食事も一緒に摂取するように心がけましょう。

お酒を飲んでいる際、枝豆などのおつまみしか食べないという人も多いですが、たんぱく質やビタミン成分、あるいは食物繊維などをバランスよく摂取することで、満腹感が得られ、飲酒するペースが乱れにくくなります。

予防法3: 休肝日を設けよう!

毎日のように大量の飲酒を継続していると、肝臓はオーバーワーク状態になって知らぬ間にダメージが蓄積されていきます。肝臓を定期的に休ませるためにも、週に2日程度はお酒を飲まない休肝日を設けましょう。

連日の飲酒によって、お酒を飲まずにはいられないアルコール依存症の状態に陥ることも決して少なくありません。休肝日を設定して自分の意志でお酒の飲み方を制御できるように、普段から実践しておくことが重要なポイントです

■二日酔いになってしまったら……

――ただ、注意をしていても「二日酔い」になってしまうことってありますよね。そんなときにおすすめの食べ物や飲み物など、対処法を教えてください!

対処法1: まずはスポーツドリンクなどで水分補給!

お酒には利尿作用があるため、飲酒をした次の日は水分不足になりやすいものです。頭痛や吐き気などさまざまな体の不調が起こりますので、飲んだ次の朝にはまず水分を取りましょう。

おすすめの飲料は、経口補水液やスポーツドリンクです。特にスポーツドリンクには塩分や糖分が含まれており、体内で吸収しやすくなる成分が含まれています。なお、水分を摂取する場合には、胃腸にできるだけ負担を与えないよう、冷やさず"常温で"飲むように努めましょう。

対処法2: 二日酔い用の市販薬を飲む!

お酒を飲み過ぎると、頭痛などと共に胃もたれや胸やけが引き起こされます。胃もたれや胸やけ症状、あるいは吐き気が強い際には、市販で購入できる胃酸をおさえる制酸薬や整腸剤、乳酸菌製剤などを服用して症状をできる限り緩和しましょう。

頭痛が強い場合には市販鎮痛薬を飲んでも構いませんが、胃腸が弱っているときに、たくさんの鎮痛薬を服用するとそれだけで負担がかかるおそれがあります。先に水分補給をした上でそれでも改善しないようであれば、内服を検討しましょう。

対処法3: アミノ酸やビタミンが含まれている食事メニューを摂取!

二日酔いの際には、アミノ酸やビタミン成分を摂取するのもおすすめのひとつです。アセトアルデヒドは肝臓で生じるため、肝臓の働きを強めればアセトアルデヒドが過剰に産生されるのを防ぐことが期待できます。

一般的にアミノ酸は、「肝臓を解毒する」「アルコールの代謝を促進する」などの作用があると言われています。さらに、ビタミン群の中でもビタミンB1を摂取すれば、糖質の代謝が良好になります。

アミノ酸は魚や肉、ビタミンB1は豚肉やうなぎなどの食材に多く含まれていますので、二日酔いになった場合は、これらの食材を意識して取り入れるようにしましょう。


いかがでしたでしょうか。すぐにでも実践できる内容があったはず。ただ、基本的には二日酔いにならないよう、飲み方にはご注意を! お酒と上手に付き合いながら、今年1年を締めくくってくださいね。

監修者 : 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)先生


甲斐沼 孟

国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医/大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 /国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 /大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 / 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員

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