「つくる」とは何かを生み出すことを表す動詞のこと。漢字では「作る」「造る」「創る」の3語が当てはまりますが、正しく使い分けられるか不安な方も多いでしょう。
本記事では「作る」「造る」「創る」について、言葉ごとに意味の違いを解説。例文とともに使い分け方や英語表現もくわしく紹介します。
適切に「作る」「造る」「創る」を使い分けられるよう、知識を蓄えておきましょう。
「作る」「造る」「創る」の違いとは
「作る」「造る」「創る」は漢字は違えど、すべて訓読みで「つくる」と読む単語です。意味は基本的に「何かをつくり出す」ことですが、正しく使い分けるには単語ごとの違いを知っておく必要があります。「作る」「造る」「創る」の違いについてみていきましょう。
「つくる」の同訓異字
「作る」「造る」「創る」のように訓読みが同じ、かつ漢字表記が異なる言葉は同訓異字と呼ばれています。「暑い」「厚い」「熱い」なども「作る」「造る」「創る」と同じく同訓異字です。
対象物の種類と大きさで使い分ける
下図は同訓異字である「作る」「造る」「創る」の使い分け方を簡潔にまとめたものです。「つくる」対象物の種類と規模を考慮すると、漢字を当てはめやすくなるでしょう。
つくる対象 | 規模 | |
作る | 具体的・抽象的 | 小規模 |
造る | 具体的 | 大規模 |
創る | 新規 | ― |
漢字の意味もあわせて覚えておくと、より一層「作る」「造る」「創る」の違いを理解しやすくなります。「作る」の意味から順番にみていきましょう。
「作る」とは
「作る」「造る」「創る」の中で「作る」は特に使用頻度が高い漢字といっても過言ではありません。普段からよく使用される「作る」について、漢字の意味を踏まえつつみていきましょう。
意味は「新しくつくり出す」
「作」の意味は「つくる」ことと非常にシンプルです。「新たな工夫を用いてつくり出すこと」に対して「作」を使用するケースもあります。
無形・有形ともに使用する
「作る」を使う対象は主に小さなサイズのものです。実際に形があるものだけでなく、形のない抽象的なものをつくり出すときにも「作る」が用いられます。例えるならば有形物は作物、無形物は雰囲気などが挙げられるでしょう。対象範囲が非常に広いため、ごく一般的に使われる単語といえますね。
「造る」とは
「造る」は「造形」「造型」「造成」などの熟語に用いられる漢字を「つくる」に当てはめた単語です。何に対して「造る」を使用するのか、漢字の意味とあわせてみていきましょう。
意味は「材料をくっつけて生み出す」
「造」の意味は「材料をくっつけ合わせて完成させること」。ほかにも「片っ端から集めてでっちあげる」などの意味があります。
大きなものに使用する
「造る」は基本的に大きなものを工業的につくり出すときに使われる単語です。建物や船といったサイズ的な大きさはもちろん、貨幣など規模の大きいものも含まれます。大きさの基準は定められていませんが、一般的に大きいと感じるものであれば「造る」を使用して差し支えありません。
明確に形を有するものに使用することも「造る」にみられる特徴のひとつ。抽象的なものをつくり出す場合には、「造る」の代わりに「作る」を使いましょう。
「創る」とは
「作る」「造る」と同様、「創る」にも個別の意味合いがあります。漢字に含まれる意味とともにチェックしましょう。
意味は「はじめてつくり出す」
「創」は「はじめてとなるものをつくり出す」との意味を持つ漢字です。「はじめる」との意味もあります。
今でこそ「つくる」と読んでいる「創る」ですが、実は「創る」と書いて「つくる」と読むようになったのは2010年のこと。常用漢字表の改定により、はじめて「創」の読み方として「つくる」が認められました。
新規のものに使用する
「創る」は今までにない、ゼロベースからつくり上げるものに対して使用します。将来のことや料理などが対象となり得るでしょう。ただし一般的には「創る」の代わりに「作る」を用いるケースが多いようです。
「作る」「造る」「創る」の使い方
適切に「作る」「造る」「創る」を使うためにも、実際の使用例を確認してみましょう。さらに漢字を当てはめる際に選びやすくなりますよ。
「作る」の例文
「作る」は教科書において「つくる」の一般表記とされており、公文書でも基本的に「作る」が用いられます。「造る」「創る」よりも使用頻度が高いことに比例し、例文の数も比較的多めです。
原料や材料などを加工・組立して別のものをつくり出すときは「作る」を使いましょう。畑を耕すこと、耕した畑で作物を育てるときも「作る」が適切です。人あるいは資金調達も同じく「作る」を使用します。
・綺麗な生地を縫い合わせて鞄を作る
・畑で野菜を作る
・引っ越し先で友人を作った
・老後の資金を作る
空気感や時間など実際に触れたり見たりできないものにも「作る」が当てはまります。目立つ出来事や新たな仕組みをつくり出す際も「作る」が望ましいです。
・仕事に集中できる空間を作る
・気分転換のために時間を作る
・日本記録を作った
・作業が円滑に進むシステムを作った
「作る」は思わぬ形で生じさせてしまった物事に対しても使われます。自らの意図は関係ありません。
・テーブルに傷を作ってしまった
・うっかり戸棚にぶつかってあざを作った
「造る」の例文
「造る」の対象は規模の大きなものや具体的に存在するものです。「建造」「造船」など「造」を用いて熟語に言い換えられる際に使用しましょう。
・公園の近くに市庁舎を造った
・客船を造る
・一から国を造る
「創る」の例文
「創る」の意味は「最初につくり出す」ことです。不確かな未来や食べものなど、具体的なものと抽象的なものの両方に使用できます。
・力を合わせて未来を創ろう
・組み合わせたことのない食材を使って料理を創る
「作る」「造る」「創る」の使い分け方
「作る」「造る」「創る」の使い方に一定の決まりはあるものの、いざ使い分けるとなると迷うこともあるでしょう。正しく「作る」「造る」「創る」を使い分けるための注意点を解説します。
一般的には「作る」でOK
基本的に「作る」「造る」「創る」の中で、ごく一般的に使用されているのは「作る」です。「造る」は「造船」「酒造」といった熟語としての使用が多く、「創る」も限定的に用いられます。使い方に不安を覚えたときには「作る」を選択すれば問題ないでしょう。
対象物の規模をチェック
「作る」「造る」の使い分けについては、「つくる」対象物のサイズや規模を考慮すると漢字を選びやすくなります。小さいものには「作る」、大きなものには「造る」を当てはめてみてください。
規模の感じ方が人によって異なるなど、判断しづらいときは「つくる」と平仮名で表記して構いません。無理に漢字を当てはめてミスするのを避けるためです。
「作る」「造る」「創る」の英語表現
「つくる」の英語表現も日本語同様、多岐にわたります。さまざまな英語表現に触れて豊かな表現力を身につけましょう。
make
「make」には「作る」「製造する」の意味があります。スタンダードな英語表現といえるでしょう。
・make a bag with sturdy fabrics. (丈夫な生地で鞄を作る)
manufacture
「manufacture」は大規模なものをつくり出すときに用いる英語表現です。製造過程で機械などを使用する際に選びましょう。
・Air conditioners manufactured in domestic factories (国内の工場で製造されたエアコン)
grow
「grow」は「栽培する」との意味合いが強い英語表現です。転じて植物を「作る」と表現するときに使用されます。
・grow vegetables in your own garden (自宅の庭で野菜を作る)
produce
「produce」にも「つくる」と同様の意味があります。
・produces 6,000 kilograms of rice annually (年間6,000キロの米を生産している)
build
「つくる」の表現には「build」の使用も有効です。
・build a large passenger ship (大型客船を造る)
create
「つくる」の英語表現として「create」も覚えておきましょう。
・create opportunities to speak with senior employees (先輩社員と話す機会を創る)
最初はじっくりと考えて使い分けよう
「作る」「造る」「創る」はすべて「つくる」の同訓異字。「作る」はごく一般的に使用されるものであり、有形・無形は問いません。「造る」も「作る」と似た使い方にはなりますが、対象物が大型の場合に用いることが多いです。「創る」は限定的に使用される漢字であり、新しくつくり出されたものに使います。
使い分けに迷ったときは基本的に「作る」を使用すれば問題ありません。正確に使い分けるのであれば、各漢字の意味を考慮するとわかりやすくなるでしょう。「つくる」対象物の大きさを考慮するのもひとつの方法です。
解説を読んだからといって、すぐに「作る」「造る」「創る」を使い分けるのは難しいでしょう。まずはゆっくり丁寧に漢字の意味などを理解し、適切な使い方を身につけてくださいね。