クルマのサブスクリプションサービスを手掛けるKINTOが新サービス「KINTO Unlimited」を立ち上げた。この冬にトヨタ自動車が発売する新型「プリウス」で提供を開始する。定期的なアップデートでクルマの価値下落を防ぎ、サブスクの月額料金を従来比で10%下げられるというが、いったいどんな仕組みなのか。
アップグレードを織り込んだクルマづくりに挑戦!
クルマは一般的に、手元に届いた瞬間から価値の下落が始まる。1日が経過すれば1日分古くなるし、新たな技術を搭載した別のクルマが登場すれば、自分のクルマが技術的に「1世代前」のものに見えてくる。新車保有期間は過去10年で3割伸びており、最近だと購入から平均8年は乗り換えないそうだから、自動車を作る側としては、せっかく新しい技術を開発しても普及に時間がかかるというのが悩みの種になっている。
KINTO Unlimitedはサブスクで提供したクルマを進化(アップデート)させることで、価値の下落を防ぐ新サービスだ。具体的には以下の方法でアップデートを実施する。
OTA(Over The Air)を通じたソフトウェアの更新により、「衝突被害軽減ブレーキ」などの安全運転支援システム「Toyota Safety Sense」を最新の状態に進化させる。費用はサブスクの月額料金に含まれるので追加負担なし。
クルマにあらかじめ「アップグレードレディ設計」を施しておき、顧客のニーズに合わせてハードウェアの装備や機能の後付けを可能にする。費用はアイテムごとに「一括」で支払うか、あるいは「サブスクの月額利用料に加算」することもできる。サービス開始は2023年央の予定。
アップグレードレディ設計はトヨタ初の取り組みだ。KINTOが開催した新サービスのオンライン説明会で概要を聞いた。
クルマをアップデートするために後付けでハードウェアを取り付ける際には、当然だが作業が発生する。例えば配線1本を通すためにシートを取り外したり、インパネをガバッとはがしたりといった具合だ。これだと時間もかかるし手間もかかるうえ、後付けできるアイテムの種類も限定されてしまう。
アップグレードレディ設計は、ハードを後付けするための施工作業の大部分をあらかじめクルマに織り込んでおくことで、作業を簡素化する手法だ。作業時間を短縮できるし、全国で施工が可能となり、後付け可能なアイテムの選択肢も広がる。まずは「ブラインドスポットモニター」「パノラミックビューモニター」「ステアリングヒーター」などをラインアップしつつ、メニューの拡充を進めていくという。
アップグレードを前提としたクルマづくりはトヨタとしても初の取り組みとなる。クルマづくりの段階で準備しなければいけないので、すぐにプリウス以外の車種に広げていくことはできないし、プリウスについてもグレードを限定しての提供となる。別のトヨタ車やレクサス、GRなどへの展開も考えているそうだが、まずはプリウスで顧客の反応を見たいという意向だ。
KINTOの小寺信也社長によると、KINTO Unlimitedでの新型プリウスの月額利用料金は、従来のKINTOで乗るケースと比較して10%程度は安くなる見込みだという。KINTOで乗るクルマは最終的に、下取りに出すのではなくKINTOに返却することになるので、アップデートによりクルマの価値が維持できたとしても、KINTOユーザーには下取り価格アップの恩恵がないのではと思ったのだが、KINTOはクルマの価値向上による差額を利用者に還元すべく、月額料金抑制のために使う方針だ。新型プリウスが月額いくらで乗れるのかについては、この冬に明らかになる。