これらの赤い渦巻銀河は、ハッブル宇宙望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡によるこれまでの観測でも検出はされていたものの、空間分解能や感度の制限からその詳細な形態や性質がわかっていなかった。しかし、JWSTはスピッツァー宇宙望遠鏡の10倍の空間分解能と50倍の高感度という驚異的な性能を持つため、赤い渦巻き銀河の詳細な形態が初めて明らかにされた。
まず、これら赤い渦巻銀河がどのような性質を持つのかを調べるパイロット調査として、最も赤い色を持つ2つの銀河「RS13」と「RS14」について、JWSTから得られた測光データや分光データをもとにした分析が実施された。その結果、これらの赤い渦巻銀河が80億年~100億年ほど過去の宇宙に存在する銀河であることが確認されたという。
さらに、RS14は星形成を行っておらず、年老いた銀河であることも明らかにされた。上述したように、年老いた渦巻銀河は全体の2%程度と、現在の宇宙では極めて珍しい。しかし、今回のJWSTの初期観測は極めて狭い領域をターゲットとしたものだ。このことから、遠方宇宙ではこれまで考えられてきたよりも数多くの年老いた銀河が存在する可能性が示唆されるとした。
その一方で今回の成果から、80億~100億年ほど過去の宇宙において、赤い渦巻銀河や年老いた渦巻銀河はどのようにして形成されてきたのかという、新たな疑問が生じることとなった。
研究チームは今回の研究成果により、渦巻銀河形成の歴史、ひいては宇宙の歴史全体の中で、銀河の形態がどのように変化してきたのかについての研究に、新たな視点を与えることができたのではないかと考えているという。
また、今回の研究では、JWSTの画像において観測された多数の赤い渦巻銀河のうち、最も赤い色を持った2つの銀河にのみ絞ってのパイロット調査が行われたが、今後さらに多数の赤い渦巻銀河についての観測が行われることで、過去の宇宙に存在する渦巻銀河や年老いた渦巻銀河に対する研究が進展し、いまだ謎多き銀河の成り立ちに関して新たな知見を加えることができるとした。