12月の“クリスマス商戦”とそれに続く正月商戦で、年間売り上げの約40%を占める玩具業界。日本玩具協会と東京玩具人形協同組合は、各社の年間売り上げの成否を左右する商戦期を盛り上げるため、「#クリスマスおもちゃ」トレンド記者発表会を開催した。
会場には8つのトレンドテーマごとに約60点の注目商品を一挙に展示。今年のクリスマスおもちゃのトレンドや注目商品が紹介された。
キーワードは「大人も楽しめる」
2021年度の国内玩具市場規模は希望小売価格ベースで8946億円と、現在の形で調査を始めた2001年以来過去最高を記録。メーカー各社では現在、子どもだけでなく大人も含んだ幅広い年齢の人々が楽しめる商品の開発が行われているほか、二世代や三世代で楽しめる商品も増え、“大人層”の開拓が進んでいる。
一般社団法人 日本玩具協会の前田道裕会長は国内玩具市場について、「2014年度に8000億円の大台を回復。以降、8年連続で玩具市場は8000億円の大台を維持してきました。少子化の中、玩具産業は新たな需要の拡大に取り組んでおり、とくに大人市場の今後の可能性が高いと考えられています」と語った。
「定番ブランドに大人対象のブランド拡張を行い、大人需要を開拓する動きも現れています。また、ジェンダーを超えたユーザーの開拓を図るなど、努力と工夫を重ねています。玩具にはまだまだ需要を開拓する余地、成長の余地が大きくあると考えています」(前田氏)
昨年度の8946億円という数字は前年度比8.5%プラスの伸長を示すようだが、今年も夏休み商戦以降、現在まで前年売上を超え、幅広い年齢層に浸透しているキャラクターの商品・定番ブランドの好調ぶりが際立っているという。
2022年度も過去最高の売上を更新する可能性が高まるなか、東京玩具人形協同組合の齋藤晴正理事長は、近年の玩具市場の動向について発表した。
「少子化のなかで今年のおもちゃ産業が過去最高の売り上げを更新するような成長要因として挙げられるキーワードが大人です。現在、おもちゃがヒットするには親の心を捉えることが重要になっており、おもちゃメーカーはマーケティングにおいて、親の視点を非常に重要視しています。この30年以上に渡って最も売れ続けている定番ブランド群が、クリスマス商戦でも非常に多くの割合を占め、親御さんが小さい頃の思い出としてそのブランドを記憶されていることが大きな要因と考えられます」
加えて、親と子が一緒に楽しめるコミュニケーションツールとしてのおもちゃのニーズが強く、近年は大人向けマーケットの拡大も非常に顕著になっているとも解説する。
「以前であれば、玩具の大人マーケットと言えばプラモデルやフィギュアといったジャンルに限られていました。しかし、現在は一般のおもちゃブランドを大人層が購入するケースもたいへん増えており、そうした工夫を盛り込んだおもちゃが現在の玩具業界の牽引役となっています」(齋藤氏)
クリスマスおもちゃの最新動向を紹介
今や子どもだけでなく大人も楽しめるアイテムが多く揃う玩具業界。日本玩具協会専門委員で東京玩具人形協同組合トイジャーナル特別顧問の伊吹文昭氏は、今年のクリスマスおもちゃのトレンドを説明した。
「子どもから大人まで幅広い年齢層に浸透しているキャラクターや定番ブランドの好調ぶりが際立っていると同時に、新しい工夫やアイデアを盛り込んだアイテムが人気を集めています。シルバニアファミリーの購買層の20%が大人層であり、『トミカプレミアム』など定番ブランドに大人対象のブランドを立ち上げるケースも増えています。ターゲットの年齢的な拡大と併せ、ジェンダーを超えたユーザー開拓も重要になっており、すみっコぐらしキャラクターのファンの21%は男性となっています」
伊吹氏が最初に紹介したのは大人も熱くなる「キャップ革命ボトルマン」や「チョロQ チャレンジ! Q極対戦セット」などのバトルホビー系アイテムだ。
「『チョロQ チャレンジ! Q極対戦セット』はプルバックで大きなプレイマップを使って遊ぶ最新チョロQで、『あのチョロQがこんなに進化したのか』と感激するお父さんも多いのではないでしょうか。RCカーも年齢に関係なくユーザーのハートを熱くするおもちゃであり、『バクソーハーワークス ライトニングストーム』は防塵防水のハイスペックRCバギー。『1/12 R/C スプラッシュローバー』は陸上も水上も楽しめる防塵防水のオフロードRCカーとなっています」
糸カートリッジをセットするだけで、すぐに縫える本物ミシン「リアルミシン ファッションスタジオ」など、親子でコミュニケーションを深められるメイキングトイ。大人も楽しめるガジェットトイの充実ぶりも目立っている。
「ぷにぷにキャラを直接指でさわってお世話ができる新“触感”の液晶トイ『ぷにるんず ぷにぷらす』は、デジタルとアナログの融合という点でもおもちゃの新しい世界を切り開いています。また、『MUGENYOYO(ムゲンヨーヨー)』はARエフェクトなどの技術を用いた、日本初のTikTokと連動するおもちゃ。動画が保存され、TikTok以外のSNSへの投稿も可能で、Z世代の人気も呼びそうです」
10月に新作テレビアニメがスタートしたガンダムのホビー商品が市場を牽引しているほか、「リカちゃん」「トミカ」の大人向けブランドはここ数年、大人市場での躍進を見せている。
「こだわりを追求したリカちゃんの大人向けブランド『リカ スタイリッシュドールコレクション』の最新作には、サンリオキャラクターとコラボした『マイメロディ スイートピンクスタイル』などがあります。また、“シル活女子”も増加中ですが、赤ちゃん人形はとくに大人層の購入が目立ち、『シルバニアファミリー ゆめいろ赤ちゃんプリンセスセット』にも注目です。大人のためのトミカシリーズとして誕生したブランド『トミカプレミアム』の新製品『07ランボルギーニエッセンサSCV12』は、ディティールまでリアルに再現されています」
伊吹氏は少子化や今やクリスマスの過ごし方が多様化している社会背景なども踏まえつつ、「玩具業界は1人1人の子どもを大事に育てたいという親心や社会環境の中で、市場拡大は十分に可能性があると考えています。同時に遊びや癒しを求めるニーズの拡大を背景に大人層のさらなる開拓を進め、グローバル化の推進によって大きく成長していきたいと考えています」とも語っていた。