セイコーエプソンは12月7日、使用済みのコピー用紙を原料として再生紙を作り出すオフィス向けの製紙機「PaperLab」(ペーパーラボ)の次世代モデルを公開した。従来モデルよりも装置を大幅に小型化したうえで、繊維化した紙を結合する際に使用する結合材を樹脂から天然由来の材料に置き換えて環境に配慮した。また、シュレッダーで粉砕した用紙を原料として投入できる機構を新たに備え、情報漏洩リスクを抑えながら複数の企業や自治体が共同でPaperLabを活用しやすくした。現在開発が進められており、詳細なスペックは非公開。販売開始は2023年で、価格は未定。
12月7日に開幕した展示会「エコプロ2022」のエプソンブースで、“新コンセプトモデル”として次世代PaperLabの実機をお披露目した。展示したのは開発中のモデルで、製品版では本体サイズが若干変わる可能性もあるとしたものの、2015年12月に発表した現行のPaperlab「A-8000」と比べると圧倒的にコンパクトになり、出っ張りもなくした。
A-8000では、再生紙の原料として使えるのは基本的に形が整っているA4用紙に限られており、情報漏洩を抑えるため使用済み古紙の回収は施錠可能な特殊なボックスが必要だった。新コンセプトモデルでは専用のシュレッダーを用意し、情報漏洩リスクを解消した状態で古紙を保管・回収できるようにした。
水を使わずに使用済み用紙を綿のような繊維に変え、結合材を加えて強度を向上し、加圧して用紙として成形する、という基本的な製紙の流れはA-8000と同じ。新コンセプトモデルでは、繊維化した素材に加える結合材を原油由来の樹脂から天然由来の材料に置き換え、環境負荷を低減した。結合材の詳細は非公開。
結合材の変更などを受け、古紙の投入から再生紙のできあがりまでの時間はA-8000の倍近くかかるという(A-8000は約3分)。結合材を変えたことで、新コンセプトモデルで生成した再生紙を再びPaperLabの原料にでき、紙を繰り返し再生できるようになった。
企業や自治体を縦断した紙の再生も可能に
エプソンでは、エプソン販売が入居するオフィスビル「JR新宿ミライナタワー」にて、ほかのテナント企業と共同でPaperLabを利用した紙の再生に取り組んでいる。各企業から排出された使用済み用紙をシュレッダーで粉砕したうえで回収し、ビル内に設置したPaperLabで再生紙に変え、各企業に納品する。用紙は回収する前に粉砕するので、情報漏洩のリスクを抑えられる。PaperLabは各企業ごとに設置する必要はないので、参加のハードルは格段に低くなる。
福岡県北九州市では、PaperLabを利用した紙資源循環の取り組み「KAMIKURU」がすでに進められている。自治体や学校、地元企業などから使用済み用紙を回収し、PaperLabで再生紙を生成し、それらの団体に戻す仕組み。県内の中間高校では、学校で集めた古紙から作られた再生紙で卒業証書を作る取り組みも実施した。
エプソンでは、自治体や企業でPaperLabを用いた紙資源循環の取り組みが整備されれば、環境貢献につながるだけでなく、粉砕した用紙の回収や配達、再生紙生成の作業などで新たな雇用も生まれるとしている。