昭和基地のミューオン観測データ(気圧効果の補正済み)を見てみると、気温効果により、実際にミューオンの計数率が成層圏(150hPa~20hPa)の気温と反相関している様子がわかる。この気温効果の物理的な補正については先行研究があり、気温データを用いることで補正が可能だ。今回の研究では、気温を入力データ、計数率を出力データとした機械学習「Echo State Network」を行ったところ、同様の補正ができることが確認されたという。
次に、中性子の観測データを見てみると、積雪量と反相関するように計数率が変化しており、これは積雪効果の影響が大きいことを表しているとする。この積雪効果を計算するため、今回の研究では大気圏内の宇宙線強度計算モデル「PARMA」と実際の積雪データが用いられ、積雪量に比例した地面の水分量による中性子計数率の変化を再現できる物理モデルが開発された。さらに、ミューオンの気温補正と同様の気温を用いた機械学習による方法でも、積雪効果の補正が可能であることも明らかにされた。
今回の研究によって、ミューオンと中性子の補正が複数の手法で可能となった。中性子の場合には、たとえ積雪や地下の水分量を計測していない場合にも、機械学習の助けを借りた補正を行えるようになった。今後は、補正後の宇宙線計測データを用いて、太陽フレアに伴う宇宙天気現象の影響を受けて変動する宇宙線の精密測定から、宇宙環境を診断できるようになるとした。