大阪・茨木市に拠点を置く国立研究開発法人「医薬基盤・健康・栄養研究所」の山田陽介室長らの共同研究チームは、1日の間に人の体からどれくらいの水分が失われるかを正確に予測できる計算式を導き出した。災害時の飲料水確保の目安や、人口増加や気候変動による水不足の予測モデルの構築に役立つと期待されるという。
1日に人間の身体から水分が出入りする量は、個人差があり、また個人内でも生活環境によって大きく変わることが知られているという。しかし、これまでの研究では、水分の量は、数十人規模の実験や、アンケート調査などの主観的な方法に基づく方法で計っており、正確性を欠いていた。
本研究では、天然界の水素の99%以上は質量数1(1H)の水素だが、約0.015%は質量数2(2H)の水素が含まれており、人間が2Hがわずかに含まれる水を飲むと、一時的に体内の2Hの値が高くなり、その後元の量に戻ることに着目。23カ国に住む生後8日の乳児から96歳の高齢者までの男女計5,604名を対象に、このわずかな変化を正確に捉えられる安定同位体比質量分析計(IRMS)を用いて、身体の中の水分量を正確に評価し、さらに、元に戻る速度から、水の代謝回転を算出したそうだ。
結果として、平均的な場合、乳児の身体に含まれる水分のうち約25%が、成人でも約10%にあたる水分が1日で失われることが分かったという。例えば、男性では20~35歳で平均して1日に4.2リットルの水分が失われ、女性では30~60歳で平均して3.3リットルの水が失われるそうだ。また、年齢が上がるごとに失われる水分量は有意に低下したという。男性の90歳代では平均して2.5リットル、女性の90歳代では平均して2.5リットルの水分が失われたそう。
さらに、妊産婦や、アスリート、発展途上国に住む人間が1日に失う水の量が多かったことから、1日に失う水分量は個人の年齢や性別だでなく、環境やライフスタイルなどの要因に影響されることも判明したそうだ。
これらの研究結果から、体重や年齢、温度や湿度を入れれば、その人の体内から1日にどれくらいの水分が失われるかを予測できる計算式を導き出した。ちなみに計算式は、次の通り。
体内から1日に失われる水の量(ml/日)=[1076x身体活動レベル(座位中心の場合 1.5、平均的な場合 1.75、高い場合 2.0)]+[14.34x体重(kg)]+[374.9x性(女性 0、男性 1)]+[5.8923x1日の平均湿度(%)]+[1070xアスリート(非アスリート 0、アスリート 1)]+[104.6x人間開発指数(先進国 0、中間的な国 1、発展途上国 2)]+[0.4726x標高(m)]-[0.3529x年齢(歳)の2乗]+[24.78x年齢(歳)]+[1.865x平均気温の2乗]-[19.66x平均気温(℃)]-713.1
同研究チームは、非常に速く身体から水分が失われるため、水分を3日補給できないだけで生存が危うくなると述べている。
また、今回の結果から、20歳代男性は1日に平均して4.2リットルの水分が失われるとしても、1日に4.2リットルの水を摂取する必要はないとしている。呼気などで体内に水分を取り入れたり、しっかりとした食事をしたりすれば、1日に必要な水分量は20代男性で約1.8リットル、20代女性で約1.4リットルだそう。
ネット上では「コレ…凄いっ‼️😳」「水2ℓ摂れってのは合ってるのか」「日本人にも適応される?」などの声が寄せられた。