米労働省が2022年12月2日に発表した11月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数26.3万人増、(2)失業率3.7%、(3)平均時給32.82ドル(前月比+0.6%、前年比+5.1%)という内容であった。

  • 11月雇用統計まとめ

(1)11月の非農業部門雇用者数は前月比26.3万人増と市場予想の20.0万人増を上回ったが、前月の修正値28.4万人増から伸びが鈍化した。基調を判断する上で重要視される3カ月平均の増加幅は27.2万人で、今年最低となった。

  • 米非農業部門雇用者数の推移

(2)11月の失業率は前月から横ばいの3.7%で市場予想と一致。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は、前月の6.8%から6.7%へと低下した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は62.1%で、予想の62.3%に反して前月の62.2%から低下した。

  • 米失業率と労働参加率の推移

(3)11月の平均時給は32.82ドルと前月の修正値32.64ドルから0.18ドル増加して過去最高を更新。伸び率は前月比+0.6%、前年比+5.1%と、いずれも市場予想(前月比+0.3%、前年比+4.6%)を大幅に上回った。

  • 米平均時給の推移

米11月雇用統計は、米国の雇用市場が弱含みつつも堅調を維持していることが示された。今年に入り雇用者の伸びは緩やかに減速しているが、失業率は歴史的な低水準からの上昇がきわめて小幅にとどまっている。労働参加率の低下からも窺えるように労働力不足の状態が続く中、賃金動向を示す平均時給は高い伸びが続いている。米11月雇用統計発表直後のNY市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを続けざるを得なくなったとの見方からドルが買われたが、そうした動きは長続きしなかった。FRBの「引き締め過ぎ」による米国景気の落ち込みが懸念されると米長期金利が低下に転じ、これにつれてドルも売り戻しの動きが強まった。ドルはこの日、ユーロやポンドなどの欧州通貨に対しても下落。これまで、米国の利上げに向かっていた為替市場の関心は米国の景気減速へと移りつつあるようだ。