ビジネスシーンではさまざまな言葉が使われていますが、はっきりとした意味や適切な使い方がわからないまま使っているというケースも少なくありません。中でも抜本的と根本的は意味や使い方が似ていることもあり、混同されてしまうこともあります。
ここでは抜本的と根本的、そして近いニュアンスで使われることの多い本質的について、例文を挙げながら意味の違いや使い方などをご紹介します。
抜本的と根本的の意味や違いとは
抜本的と根本的は、ビジネスシーンで広く使われている表現のひとつですが、言葉の響きや使われている漢字も似ているので混同されてしまいがちです。しかし、それぞれ違った意味を持っており、使い方を間違えてしまうと相手に誤解を与えてしまう可能性があります。
ここでは抜本的と根本的、そして近いニュアンスで使われることが多い本質的の意味やそれぞれの違いについてくわしくご紹介します。
抜本的の意味
抜本的とは、物事の根っこの部分、基幹にあたる部分から考え直す、是正するという意味を持つ言葉です。抜本とは根を引き抜くといった意味もあり、深いところにある原因を抜き去るといったニュアンスでも使われます。ビジネスシーンでは、主に何らかの問題を是正するといった際に使われる表現です。
根本的との違いを考える上で「是正」というニュアンスの有無が大きなポイントとなるため、しっかりと頭にいれておいてください。
根本的の意味
根本的とは、さまざまな物事の大本にあたる部分、それに関するものといった意味を持ちます。根本には、物事のスタート地点、はじまり、もっとも重要な基礎の部分といった意味があります。
いいことの基礎となる部分といった形でポジティブな意味合いで使われるのみでなく、問題の原因、トラブルの根っこの部分といったネガティブな意味合いでも使われます。ビジネスシーンにおいては、どちらのニュアンスでも日常的に使用される表現です。
抜本的と根本的の違い
物事の根幹、重要な部分に関する言葉ということもあって抜本的と根本的は混同されてしまいがちです。しかし、意味や使い方も異なるため注意が必要です。
すでにご紹介した通り、抜本的には根幹となる部分まで立ち返って、あるいは掘り下げて物事、事態を是正するという意味で使われる言葉です。それに対して、根本的は単に物事の基幹や根、重要な部分を指す言葉です。
当然、言葉としての使い方は異なります。抜本的には是正というニュアンスまで含まれるため、重要な部分に関する問題のことを「抜本的な問題」「抜本的な過ち」といった形で使われることはありません。この場合、「根本的な問題」「根本的な過ち」という表現が適切です。
本質的との違い
本質的も物事の重要な部分について表す言葉のひとつです。こちらは抜本的のように是正といったニュアンスは含まれず、単純に物事の重要な部分、中心となる部分を表す言葉となっています。
意味としては根本的に近く、根本的は物事のはじまり、基礎といったニュアンスが強いのに対して、本質的は単に中心的なポイントのことを指す際に使われます。
本質的もまた、抜本的や根本的と意味や使い方が異なるため意味を理解した上で使い分けることが大切です。
抜本的と根本的の使い分け
抜本的と根本的は意味が異なっていることもあり、使い方を間違えると相手に意図がうまく伝わらない可能性があります。場合によっては、誤解を生んでトラブルに発展することも考えられるため、しっかりと使い分けることが大切です。
ここでは、抜本的と根本的のより具体的な使い分け方をいくつかのポイントに分けてご紹介します。
抜本的は意味が限定的
先ほども少し触れましたが、抜本的には物事やさまざま事態・状況などを是正するというニュアンスも含まれる言葉です。そのため、単に物事の基幹や重要な部分、中心のことを指す根本的や本質的と比較すると意味が限定され、使い方も制限されます。
根本的や本質的と同じように使ってしまうと、意味が変わってしまうため注意が必要です。一方でこの言葉だけで物事を基幹から最初の部分に立ち返り、掘り下げて是正するという意味があるため、その意味と合致するシーンであればコンパクトにこちらの意図を伝えることができます。
以下で例文をご紹介するので、シーンを想像しながら具体的な使用例を参考にしてみてください。
広く使いやすいのは根本的
抜本的が限定的にしか使用できないのに対して、根本的は言葉に含まれるニュアンスがシンプルなのであらゆるシーンで使用できます。単に物事の基幹、はじまりやベースとなる部分のことを指す言葉なので、ビジネスシーンのみでなく日常会話などでも広く使われています。
根本的に近い意味で使えるのが本質的
根本的に近い使い方ができる表現のひとつが本質的です。ニュアンスは異なりますが、根本的の類語として挙げられることもあります。本質的も意味・ニュアンスがシンプルなのでさまざまなシーンで使うことができます。また、意味がわかりやすい言葉なので、ビジネスシーンではもちろんのこと、日常会話などでも使われます。
根本的に近い意味で使える類語としては、この他にも基礎的、基本的、中心的などが挙げられます。これらの言葉もさまざまな物事の中心、基幹などに関する言葉であり、抜本的のようにニュアンスが限定されないためあらゆるシーンで広く使えます。
抜本的と根本的の使い方を例文でご紹介
抜本的と根本的は正しく使い分けることが大切です。しかし、具体的にどのように使えばいいのかわからないという方も多いかもしれません。ここでは、例文を挙げながらより具体的に抜本的、根本的、本質的の使い方をご紹介します。
抜本的を使った例文
抜本的は単に物事の根幹や重要な部分を指すのみでなく、そこまで立ち返る、あるいは掘り下げることで是正するというニュアンスも含まれます。それでは、具体的な使い方について例文を挙げながらご紹介します。
・今回のようなトラブルが発生しないように抜本的な改革が必要だ
・抜本的な処置を行わなければ今後も業績は下がる一方だろう
・抜本的な対策を行ったことによって大きなトラブルが発生するのを未然に防げた
抜本的は何かを改善、是正するといった意味が含まれるため、問題などのネガティブな言葉を繋げて使用することはありません。
根本的を使った例文
根本的はより含まれる意味がシンプルなこともあってさまざまな形で使われます。それでは、例文を挙げながら具体的な使い方をご紹介します。
・根本的な間違いを正さなければまた同じようなトラブルが発生するだろう
・今回の事故の根本的な原因はルールを周知できていなかったことにある
・計画を根本的に見直したことによってプロジェクトは大成功した
根本的は広い意味で使われ、プラスして是正する、改善する、見直すといった言葉を加えることで抜本的と近いニュアンスで使用することもできます。
本質的を使った例文
本質的も根本的と近い形で使うことができる言葉です。それでは具体的な使い方について、例文を挙げながらご紹介します。
・彼は、言葉遣いは荒いが本質的には優しい人だ
・両者はとても似ているように見えるが本質的にはまったくの別物だ
・見た目のみでなく本質的な部分に目を向けることが大切だ
根本的が物事の根幹、はじまりの部分といったニュアンスが強いのに対して、本質的は物事の本来の姿や中心となる部分というニュアンスになります。
抜本的と根本的の英語表現
抜本的の英語表現はdrasticです。近年ではドラスティックというカタカナ語として使われることもあります。 根本的はessential、key、basicなどが英語表現にあたります。
抜本的と根本的、本質的の意味を知って使いこなそう
抜本的と根本的は一見しただけではとても似た言葉であり、混同されてしまいがちです。しかし、意味や使い方は異なるので正しく理解して使い分ける必要があります。あわせて、近い意味を持つ本質的の意味や使い方も知っておくことで、より表現の幅を広げることができます。