女優の国仲涼子が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に初挑戦した。担当したのは、4日に放送される『美咲をさがして ~帰りを信じた家族の3年~』。2019年9月、キャンプ場から突然、姿を消した小倉美咲さんを捜し続けた母・とも子さんら家族を追った作品だ。

行方不明になった当時の美咲さんと、現在の自身の子どもが同じ年齢ということで、心を痛めながら収録に臨んだ国仲。収録後に話を聞くと、時折涙を見せながら、母として強く共感したことを語った――。

  • 『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した国仲涼子

    『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した国仲涼子

■「私の子どもの今の年齢が一緒なので…」

小倉美咲さんがいなくなったことは、世間に大きな衝撃を与えたニュースなだけに、今回のオファーを受け、覚悟を持って臨んだという国仲。「事前に映像と原稿を頂いたのですが、とてもじゃないけど見られなくて…。原稿の最初の1行目に『美咲ちゃん』という文字が出てきて、何ページか進んで『これは読めない…』と思ったので、時間を割ってちょっとずつ読んできました。伝える側としてしっかり把握しておかなければいけないし、感情移入しすぎてはダメだと思って、ここは切り替えよう」と、本番の収録に備えた。

それでも、「美咲ちゃんが行方不明になったときの年齢と、私の子どもの今の年齢が一緒なので、重なってしまって…」と、収録中に涙があふれ出てくる場面があり、このインタビューの第一声も「なんて言っていいのか…。言葉が出ないです」と絶句。

「小学校に上がったばかりの頃は、宿題をお母さんが見てあげることもあるし、まだまだ手助けが必要な時期なんです。それなのに、こんなことが起こってしまい、改めて他人(ひと)事じゃないと思いましたし、子どもは自分より大事なので、それを失った悲しみは計り知れなくて、画面も見られなくて、きつかったです…。お母さんの気持ちが手に取るように分かって、『そうだよな、親ならこうするよな』と母親目線で見てしまうので、つらかったです」

警察が美咲さんの死亡を発表しても、とも子さんが番組ディレクターに「まだ諦めていません」「娘の無事を信じています」とメッセージを送る場面には、国仲も「私も信じると思います。(自分の子どもと同じ)靴が見つかって、それが目の前にあっても、きっと『(子どものものとは)違います』と言うと思います」と強く共感する。

  • 報道陣の取材を受ける小倉とも子さん (C)フジテレビ

■「“自分で光を探している”のだと思いました」

番組では、とも子さんへ心ない誹謗中傷が寄せられていたこともに触れている。これについては、「人間って怖いなと思いました。お母さまにとって、“つらい”という言葉では表せられないくらいだと思います」と心中を察し、それでも活動を続けるとも子さんの姿を、「強く生きているというよりも、きっと“強く生きなきゃいけない”と自分を奮い立たせているのだと思いました」と受け止めた。

そうした状況の中でも、最後には家族が少し前を向いていく姿が描かれる。その光景を見て、「よく“光が見える”と言うことがありますが、“自分で光を探している”のだと思いました。真っ暗な中でもどうにか光を探して、生きる力になっていると思うので、家族のみなさんが少しでも笑顔を取り戻してくれたらいいなと思います。美咲ちゃんのためにも」と願った。

  • 小倉美咲さん (C)フジテレビ

■ドキュメンタリーを通じて家族の会話を身近に聞けた

ドキュメンタリー番組は、「良いことも悪いことも全部伝えてくれるので、好きなんです。実際にはきれい事だけじゃないこととか、ドロドロの部分を抱えて生きている人もいますし、これが現実なんだということを知ることができるので」という国仲。

今回のナレーションを経験して、「すごくデリケートなところもありましたが、こうして伝えられる仕事に携われたことは、良かったと思います。いつも客観的にニュースを見るばかりでしたが、実際にこうして語りをやらせていただいて、家族の皆さんの会話を身近に聞けた感じがします」と話した。

収録の序盤では、国仲から「最初からやり直してもいいですか?」と希望する瞬間があった。その理由は、「自分の中で、番組の最後のほうをすでに感じながら読んでしまっているというのがあって、引っかかってしまったので、少し気持ちを新たにして切り替えようと思ったんです」とのことで、心を痛めながら読む中でも自身を冷静に捉え、涙で中断することもなく、プロ意識を見せていた。

●国仲涼子
1979年生まれ、沖縄県出身。99年にドラマ『L×I×V×E』(TBS)で女優デビューし、01年に連続テレビ小説『ちゅらさん』でヒロインを務める。以降、『みんな昔は子供だった』『結婚できない男』(カンテレ)、『ホタルノヒカリ』(日本テレビ)、『デート~恋とはどんなものかしら~』(フジテレビ)などのドラマ、『電車男』『HERO』などの映画に出演。2児の母。