モノをフリマアプリやオークションで売り買いするのがすっかり日常化しているが、高価なモノを手放したいときには、その価値を正しく把握しておくことが必要だ。
例えば宝飾品、特に婚約・結婚指輪などは所有者に思い入れがある分、その道のプロにしっかり査定してもらいたいもの。そんなときに頼りになるのが、買取専門店。そこで今回、テレビCMなどでもおなじみの買取専門店「バイセル」を運営するBuySell Technologiesの鈴木優希さんに話を伺い、婚約・結婚指輪を巡る買取事情について、質問をぶつけてみた。果たして、あなたの家に眠っている指輪はどれぐらいの価値を持つのだろうか?
■婚約・結婚指輪を実際に売る人はいるの?
――まず、鈴木さんはどのようなお仕事をされているのか教えていただけますか?
以前は、査定をして値段を付ける部署におり、現在は、ジュエリーやダイヤモンドなど貴金属を扱っている部署でジュエリーの仕分けなどを担当しています。
――婚約・結婚指輪の持ち込みというのは、現在増えているのでしょうか。
月にもよりますが、だいたい前年の1.2倍ぐらいに増えていますね。
――それはどんな理由から増えているんですか?
相場の観点でお話しますと、プラチナや金などの地金相場が上がっていること、あとはダイヤモンドの相場も上がっていることが考えられます。半導体不足等で、婚約・結婚指輪に使われているプラチナやパラジウムの相場が高騰しているので、地金相場も上がっているため、手放す方が多いのかなと思います。
――数量としてはどれぐらいの結婚・婚約指輪が持ち込まれているのでしょうか。
多いときと少ないときがあるのですが、結婚・婚約指輪、ペアリング合算で月間1500点~3000点ぐらいの取引があります。
――実際にどんな方から買取をすることが多いですか?
弊社においては、出張買取で購入している婚約・結婚指輪はだいたい50代以上の女性が非常に多いです。そうした方が手放される婚約指輪は百貨店などで購入したノンブランドジュエリーが多いのですが、婚約指輪の中でもティファニー、カルティエなどのブランドジュエリーをお持ちいただく方は、少し下の世代で40~50代の方が比較的多い印象です。
――手放すのにはいろいろな事情もあると思うのですが、「手放される」理由はどんなところにあるのでしょうか?
しばらく身に付けていなくてお家に眠っている婚約・結婚指輪などのご相談をされる場合が多いです。結婚されていて、婚約指輪は普段使わないし、譲る人もいないという理由で手放されるお客様もいらっしゃいますし、離婚されて手放される方も非常に多い印象です。ただ、そういった理由などはデリケートな部分でもあるので、あまり立ち入ったことはお聞きしないですね。
■どういったものに価値がある?
――指輪を手放す際に気になるのが、イニシャルや日付の刻印です。買取に支障はないのでしょうか?
基本的に支障はないです。ノンブランドジュエリーはグラム単位でのお取引になるので、刻印があってもなくてもお値段は変わらないです。ただ、ブランドジュエリーで、イニシャルや結婚した日付などが刻印されていると、入っていないものに比べて価値が下がってしまいます。磨きをする工具で刻印を消すことはできるのですが、それを例えばメーカーにクリーニングに出すと、メーカー外の人の手によって磨かれているということで修理を断られてしまう場合があるんです。そういう意味で、刻印がされてることのデメリットはブランドジュエリーの方があります。
――特に買取価格が高く付くブランドの特徴ってどんなところにあるのでしょうか?
やはり、定価が高いブランドですね。ハリー・ウィンストンだったりカルティエ、ティファニーだったり、単価が高くなおかつ世界的に認知度が高いブランドです。
――これまで買取した中での最高額はいくらぐらいのものですか?
婚約指輪の買取における弊社の取引実績としては、100万円という買取価格は過去にありました。定価で250万円を超えるようなものですね。
――カルティエ、ティファニー等が人気と言われますが、やはり一番人気はハリー・ウィンストンですか?
ハリー・ウィンストンですね。全女性憧れのブランドだと思いますし、ブランド的価値としては飛びぬけて高いです。
――最近、人気のある国内ブランドでも、世界的な認知度がないとあまり値段が付かないといったこともありますか?
正直、グラム計算して枠で2万円、ダイヤモンドで3万円、計5万円のご提示がノンブランドジュエリーだとしたら、国内の人気ブランドもだいたいそれに当てはまります。相場という観点で見るとやはり世界的な認知度が大事になってきます。
――なるほど。ハリー・ウィンストン、カルティエ、ティファニー以外で良い値段が付く世界的なブランドには、どんなものがありますか。
5大ジュエラーと呼ばれているブルガリ、ヴァン クリーフ&アーペル、ティファニー、カルティエ、ハリー・ウィンストンの5社は人気で、ノンブランドジュエリーと比べるとしっかりお値段が付けられます。ただ、国内でもTASAKI(タサキ)やミキモトであれば、素材以上の価値でお取引しています。
■手放す際に注意することは?
――手放す側は、せっかくならより高い値段で売りたいですよね。高く買い取ってもらえるポイントを教えていただけますか?
主に2つあります。まず、購入されたときの鑑定書、内箱、外箱があるとお値段が付けやすいです。弊社では現在、ダイヤモンドを拡大した写真をもとに値付けをしているのですが、品質が高ければ高いほど写真では判断できないということもあるんです。なので、鑑定書はあった方がより高く買取価格が付けられます。
――もう1つのポイントは何ですか?
日常で指輪を使っていると、ダイヤモンドの表面が指の皮脂とかで汚れてくるものなんです。それを薄めた中性洗剤で洗ったり、濡れたままにせずにタオルやキッチンペーパーで優しくふき取ったりなど、日常的に大切に扱ってもらえると助かります。それで実際にお持ち込みされるときに掃除をするとなお良いです。「付属品があるかどうか」「査定に出す際にいかに綺麗にするか」、その2つがポイントです。
――プラチナとか金とか、デザインや素材を選べるのが結婚・婚約指輪だと思うのですが、より価値があるのはどんな素材ですか。
金とプラチナが主に宝飾品に使われる素材ですが、プラチナは半導体とか海外の情勢によっても変わってくるので上がったり下がったりの波が大きいんです。安定した価値を持っているのが金で、現在(11月上旬当時)、1gの価値は金の方が高いですね。
――婚約指輪は1粒ダイヤが付いているパターンもあれば、埋め込まれているパターンもあると思うのですが、高く売るにはどういうタイプが良いのでしょうか?
取り外ししやすいので、爪で止まってるタイプの方が良いですね(笑)。あと、埋め込まれていると、ダイヤモンドを横から見たときに、カットのグレードや色味がわかりづらいんです。埋め込まれている場所に傷があったりするとそれは表面だけ見てもわからないので、同じ品質のダイヤモンドを使われているのであれば、埋め込みじゃない方が高く買い取れます。
――ダイヤモンドやサファイア、パールなどを指輪に使っている人もいると思います。こういう順番で値段を付けて行く、という基準はありますか。
ダイヤモンド、サファイア、パールで言うと、1番はダイヤモンド、2番目がサファイア、3番目がパールです。婚約指輪で使われるものだと、ダイヤモンドが一番高いです。
■プロが選ぶ指輪とは?
――ちなみに、鈴木さんがもし婚約指輪を贈るとしたらどんなものにしますか?
ハリー・ウィンストンにしたいですけど、難しいので(笑)。ダイヤモンドはカットが一番大事だと言われていて、58面体のカットが「ラウンドブリリアントカット」と呼ばれている定番の形で、その最高品質のカットが「トリプルエクセレント ハートアンドキューピッド」というグレードになるんです。なので、私だったらカットの品質にこだわったものをノンブランドジュエリーで、自分でオーダーして作ってみたいですね。
――専門家ならではの発想ですね。鈴木さんは日々、そうした結婚・婚約指輪をご覧になっていると思うのですが、「これはお客様が大切に持っていた方が良いのでは」と感じることもあるのではないですか?
もちろんあります。ですので、押し買いとか、お客様の不利益になることは絶対にしないようにしています。お客さんにとっての価値を考えた上で買取をしたいと思っています。
取材協力:BuySell Technologies