「この仕事をやってて良かった」と思う瞬間はありますか? ネクタイ職人の「しゃく」さんは、先日そのようなことを思わせてくれるような出来事があったそうです。
ボロボロに擦り切れたネクタイが届いた。60代の男性から「なんとかこのネクタイを結びたい」と。手を尽くして仕立て直し、お届けした。数日後。お礼のTELがあった。「ありがとう。去年亡くなった妻からもう1度プレゼントされたようで嬉しかった」職人冥利に尽きる。また、この仕事を誇らしく思えた。
(@shakunoneより引用)
とっても感動するエピソードですね。古くなれば新しいものがいつでも買えるような今の時代。それでも思い出のものをずっと大切にしようとするお客さんの気持ちにハッとします。
しゃくさんは岡山県にある縫製会社、笏本縫製の3代目。ネクタイの縫製やオリジナルのネクタイブランドを展開しています。お客さんの要望になんとしてでも答えようとするしゃくさんの気持ちも素敵です。
こちらのツイートは4.4万件のいいねが集まり(12/2時点)、「妻さまもネクタイも、大切にされてる想いが伝わってきますね」「素敵すぎるツイート」「朝から泣いた。。。」「温かい気持ちをいただきました。ありがとうございます」「この言葉を聞いたらグッときちゃいますね」といったコメントが多く寄せられています。
ーーボロボロに擦り切れたネクタイだったということですが、修復にはどれくらい時間がかかりましたか?
通常の仕立てであれば1日でもできますが、一度バラバラにした状態で、できる限りシワを取ったり、汚れを取ったり、どうやったらキレイに仕上げられるか、元のカタチを崩さないように仕立て直せるかを考えたりしながら、最終の仕立て上がりまでに3日ほどかかりました。
ーーネクタイの仕立て直しを依頼される方は結構多いのでしょうか?
決して多くはないです。繊細なシルク素材を使用している分、革製品やデニムのような経年変化を楽しむようなものではないため、精いっぱい大切に使った上で新しいモノに買い替えられるのがほとんどです。
ただ、プレゼントに選ばれることが多く、思い入れを持ってネクタイを使っておられる方はおられます。「娘が初給料で買ってくれたネクタイが捨てられないから仕立て直してほしい」「奥様から貰ったネクタイをうっかり洗濯してしまったからバレないように直してほしい」などのご依頼はあります。
ーー今回のツイートに多くの反響が寄せられていますが、率直な感想を教えてください。
ほんの数年前まではホームページも持っておらず、SNSもやっていない無名の下請け町工場でした。技術には自信があったものの、もしかしたら私たち職人の“価値”や“こだわり”は、お客さまには伝わっていないのかもしれないという不安はずっと感じていました。しかし、2015年にブランドを立ち上げ、ホームページやSNSを活用してお客様に知っていただく活動をしてきたことが、こうしたお客様の「声」に届いたんだなと実感しています。
日々、モノづくりをしていく中で手を抜くことはありません。ただ商品を“たくさんの作る中の1つ”として捉えてしまう面は、少なからずあると思います。しかし、こうしてモノを通してお客様のモノガタリがあるんだということを再認識することによって、さらに気持ちが引き締まりました。
仕事を続けていくと、良い意味でも悪い意味でも慣れてしまいます。自分はなぜこの仕事をしているのかを改めて気付かされるような良い機会になりますね。もちろん、しゃくさんが心を込めてモノづくりをしているからこそこのような場面に出会うのでしょう。
しゃくさん(@shakunone)のTwitterではネクタイ工場の様子や日々の活動を発信しています。素敵なエピソードもたくさんあるので、気になる方はぜひ覗いてみてくださいね!
ボロボロに擦り切れたネクタイが届いた。60代の男性から「なんとかこのネクタイを結びたい」と。手を尽くして仕立て直し、お届けした。数日後。お礼のTELがあった。「ありがとう。去年亡くなった妻からもう1度プレゼントされたようで嬉しかった」職人冥利に尽きる。また、この仕事を誇らしく思えた。
— しゃく (@shakunone) November 28, 2022