2021年度劇場公開映画の興収ランキングで実写映画1位に輝いた、「嵐」初のライブフィルム『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』。9月15日にBlu-ray化され、多くのファンを喜ばせています。

  • ソニーストア 銀座のシアタールームで、「嵐」初のライブフィルムを観てきた

  • 『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』

“嵐ファン必携”のディスクともいえる同作品ですが、オーディオ・ビジュアル業界を中心に取材している筆者にとっても興味深いのが、その収録内容。通常の2K画質のBlu-rayディスクのみバージョン(定価3,900円/品番:JAXA-5179)に加えて、嵐の映像商品としては初となる、4K画質で収めたUltra HD Blu-rayディスクがセットになっているバージョン(同8,400円/品番:JAXA-5177〜5178)も用意しているのです。

Ultra HD Blu-ray(UHD BD)盤はくっきりとした4K映像で、さらに人間の目で見た光景に近い明るさや自然な発色、奥行き感を表現できる「Dolby Vision」で収録。音声は立体音響の「Dolby Atmos」で収録されています。特にDolby Atmos音声は、映画のUHD BDソフトでは当たり前になりつつありますが、音楽ライブを収録したソフトでは珍しい仕様です。専門用語が続きましたが、要は「とにかく見どころが多い高画音質ディスク」というわけです。

そんな嵐のライブフィルムのUHD BDを、ソニーの薄型テレビ「BRAVIA」の大画面で楽しめるイベントが全国5都市のソニーストア(銀座・ 札幌・名古屋・大阪・福岡天神)で12月2日から開催されます。ストアでの予約開始を前に、「ソニーストア 銀座」で一足先に見てきました。

  • 来場者を出迎えてくれるのは液晶BRAVIAの最上位機「XRJ-85X95K」(85V型)。左右にある白いスピーカーが、ホームシアターシステム「HT-A9」の一部

  • シアタールームは5階フロアの奥まったところ(エレベーターホール前)にある

「嵐」ライブフィルムUHD BD盤を極上の環境で楽しむ

まずはイベントの概要から紹介しましょう。嵐のライブフィルムをBRAVIAで体験できるイベントは、上記の通りソニーストア 銀座・ 札幌・名古屋・大阪・福岡天神の5店舗で、2022年12月2日から2023年1月19日まで予約制で開催されます。参加費は無料ですが、ソニーストアの体験会予約ページから希望日時を選んで事前予約する必要があります(休日は早めにスケジュールが埋まる可能性アリ)。

  • ソニーストアの体験会予約ページに、嵐ライブフィルム視聴体験会の案内が加わっている

筆者が今回訪ねたのは「ソニーストア 銀座」のシアタールーム。室内にはさまざまなソニーのオーディオ・ビジュアル(AV)機器が置かれていて、ひときわ目立つのが正面にある、液晶BRAVIAの最上位機「XRJ-85X95K」(2022年発売モデル)です。

85V型の大画面もさることながら、通常の液晶テレビ以上に画質にこだわった仕様も目を惹きます。バックライトには無数の小さなLEDを敷き詰める「ミニLED」技術を投入して明るさと暗さの表現力を高め、さらにソニー独自の認知特性プロセッサー「XR」と高画質技術「XR Backlight Master Drive」で精緻な部分駆動制御を実行。これにより、従来の液晶テレビでは難しかった「まばゆい輝きと沈み込む黒」を実現しました。

サウンド面では、背面上部にツイーターを設置し、映像と音の一体感を向上させた「アコースティックマルチオーディオ」を搭載。ツイーターと2基のサブウーファー、画面下部のミッドレンジスピーカーをそれぞれ別のアンプで駆動し、音の臨場感をさらに高めているのが特徴です。

  • XRJ-85X95K

そしてライブならではのサラウンドサウンドを担当するのが、4本のワイヤレススピーカーで360度サラウンド空間を楽しめるホームシアターシステム「HT-A9」。ライフスタイルも重視したいユーザーをターゲットとした新機軸のホームシアター製品で、最大12個のファントム(仮想)スピーカーを生成できる仕様が興味深いところ。こちらは2021年の発表以来、大きな注目を集めており、個人的にもソニーらしさが光る斬新なシステムだと感じています。

  • 左右の筒状の製品が、HT-A9のフロントスピーカー

  • HT-A9のスピーカーは、右後ろにも配置されている

  • 左後ろにもHT-A9のスピーカーが

  • HT-A9の“司令塔”にあたるコントロールボックス。4つのスピーカーとは無線でつながり、テレビとは有線接続となる

最後に、嵐のライブフィルムUHD BD盤を再生する機器として欠かせないUltra HD Blu-rayプレーヤー「UBP-X800M2」も必見です。Dolby Visionコンテンツの再生に対応し、画質だけでなく音質も重視した設計を採用。室内の右手のラックにひっそり鎮座しているので、説明員にひと声かけて見せてもらうと良いでしょう。

  • UHD BDプレーヤー「UBP-X800M2」にディスクをセット

このぜいたくな環境で視聴するのが、冒頭でも紹介した『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』。嵐20周年ツアー「ARASHI Anniversary Tour 5×20」の一環として過去に例のない、映画を撮影するためだけの“シューティングライブ”を東京ドームで1日限りで開催し、その模様を収録したものです(2019年12月23日開催)。撮影にあたっては、ソニーのデジタルシネマ用カメラ「VENICE」シリーズを含む多数のカメラやクレーンを投入し、さらにドローンによる空撮まで行ったというから驚きです。

  • 『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』より
    (C)J Storm Inc.

映像制作に関わったチームの担当者によれば「いずれ何かの作品には仕上げるが、まだ決まっているわけではない。カメラ機材も通常ライブではありえない場所に置いた状態で撮影するけれど、来て欲しい」という状態で嵐のファンを呼び、異例のシューティングライブを開催したとのこと。ステージ上のLEDパネルも、当時としてはかなり大きな“一番イイもの”を配置したそうです。

さらに観客側にもひとつ仕掛けがあり、各々手にしているペンライトに、数万本(個)のLEDライトを無線で一括制御できる「FreFlow」(フリフラ)を採用。ソニー・ミュージックソリューションズが手がけているシステムで、ライブやコンサートの舞台演出の中に組み込むことで、観客とライブの一体感を創出できるようになっています。そのLEDひとつひとつのきらめきや、FreFlowならではのライト表現も、高画質なBRAVIAで観てみるとしっかり映せていました。

  • 『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』より
    (C)J Storm Inc.

嵐のファンとしては、撮影機器に邪魔されずに「推しの姿をしっかり目に焼き付けたい!」と思うかもしれませんが、シューティングライブに限っては「この(見えにくいかもしれない)状態が逆にファンのモチベーションを高めた」(担当者)とのこと。実際、通常のライブ収録と違って、このときは観客側の映像もばっちりアップで収められており、老若男女問わず多くの嵐ファンがライブを楽しんでいる様子が大画面で手に取るように分かります。中には、感極まって涙するファンの姿もありました。

  • 『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』より
    (C)J Storm Inc.

男性アイドルについては人並み程度の知識しか持ち合わせておらず、嵐のことも2020年を区切りとして活動休止した……という事実だけ知っている筆者ですが、実際に嵐のライブフィルムを視聴した後で、UHD BD盤を衝動買いしてしまいました。それくらい、この映像作品には嵐と彼らを支えてきた無数のファン、制作チームの熱量が詰まっており、なおかつDolby Vision/Dolby Atmos対応の“チェックディスク”としても使えるという素晴らしい円盤だからです。

筆者が最初に視聴した1曲目「感謝カンゲキ雨嵐」は、嵐のメンバーがステージ上にゆっくり降り立つシーンから始まりますが、85型のBRAVIAによってメンバーの表情から着ている衣装の質感、背景となるステージ上のセットなどに使われたスワロフスキー・クリスタルのきらめき、観客席いっぱいに輝くペンライトまで、あますことなく美しく描写されていました。そしてHT-A9が音楽と彼らを迎える歓声を低域から高域までしっかり鳴らしてくれ、冒頭から会場の一体感がひしひしと伝わってきます。もちろんBRAVIA側のスピーカーも音質にこだわった設計で臨場感はあるのですが、視聴者の周りを360度包み込むように広がるサラウンドサウンドは、ホームシアターのHT-A9があるのとないのでは迫力がまったく違います。

そして、嵐の5人の想いを込めたナンバーである「5×20」では、メンバー5人の衣装に注目。着用している服はピンクから紫まで色合いが異なり、BRAVIAが持つ色表現の“懐の深さ”を堪能できます。各メンバーの表情のアップや、会場を飾るカットテープ(銀テープ)のきらめきもしっかり描写。ヒラヒラと舞い降りる銀テープは映像化にあたっては特に気をつかう被写体だと思いますが、細かな光も破綻なく映っており、その場の臨場感をバツグンの映像美で楽しめました。ボーカルと楽曲の演奏にも迫力と広がり感があって、気分は最高潮に。初めて見る嵐のライブフィルムでしたが、ラストで手を固く固くつないでステージ下に降りていく嵐の5人と、彼らを見送る数多のファンの様子をとらえたシーンでは思わず目元がアツくなりました。

この映画は全国に7館ある「ドルビーシネマ(Dolby Cinema)」対応の劇場で上映されましたが、今回のイベントを通して、同作ならではのフィルムクオリティを劇場よりもコンパクトな、自宅に近い環境でも楽しめることを実感できました。「この円盤買ったけど、本当の画質・音質では体験できていない(Dolby Vision/Atmos対応の再生環境がない)」という人には、ぜいたくな視聴環境をひとり占めできるという点でも非常にオススメ。

また、ソニーストアではこのライブフィルムに限らず、来場者がみずから用意したBlu-rayや、USBメモリーに収めたデジタルコンテンツも楽しめるようにするということなので、嵐のライブ盤以外にもお気に入り映画作品などを持参し、その場で再生して楽しむのもアリです。

最上位の液晶BRAVIAやUHD BDプレーヤー、HT-A9といったAV機器は高価でおいそれとは買えない製品なので、おそらく多くの人が「スゴいけどやっぱり高いよね」と感じることでしょう。それでも、最新のAV機器にはエンタメコンテンツを制作者の意図通りに、イイ映像とイイ音でユーザーに楽しんでもらうための技術が盛り込まれており、手持ちのスマホやお手ごろなテレビでは絶対に味わえない体験が確かにあります。「どうせ買えないし敬遠する」というのは、個人的にはもったいないことだと思います。

事前予約の争奪戦になりそうですが、「推しを最高の環境で楽しみたい!」という気持ちが少しでもある方には、今回のソニーストアでの体験会にぜひ足を運んで欲しい、と心から願っています。

予算20万円以下で叶える「最高の視聴環境」

最後に筆者が考える、「『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』を最高の画質・音質で楽しめる環境の作り方」を、ソニーのBRAVIAを例に取って紹介します。

もちろん、今回の体験会を盛り立ててくれる「X95K」シリーズの85型(XRJ-85X95K)を買える財力があるなら、その場でストアの担当者と交渉に入ってもいいのですが、さすがに実売93万5,000円前後の高価格製品を即決購入できる人はかなり限られるハズ。

そこで、「画質性能と価格のバランスが取れていて、嵐のライブフィルムもしっかり楽しめそうなBRAVIA」として筆者が取り上げたいのが、液晶モデルの「X90J」シリーズです。

  • 液晶BRAVIA「X90J」シリーズ br />※写真は65型「XRJ-65X90J」の標準スタイル

型番末尾に「J」が付くのは2021年発売の製品で、いわゆる“型落ち”モデルになりますが、高画音質処理を一手に引き受ける「BRAVIA XR」搭載のれっきとしたプレミアムモデル。サイズバリエーションは50/55/65/75型までと幅広く、最小の50型(XRJ-50X90J)は実売18万7,000円前後ですが、ネット通販では既に13万円を切るところもあります。

ちなみに、2021年発売のBRAVIAには「X85J」や「X80J」といった下位シリーズがありますが、これらはBRAVIA XRではなく、以前の機種で主流だった映像プロセッサー「HDR X1」を搭載したシリーズです。コストパフォーマンスを重視する向きに適しており、既に持っているサウンドバーなどと組み合わせて使うなら両シリーズから選ぶのもアリでしょう。

嵐のライブフィルムのUHD BD盤を高画質で見るには、Dolby VisionとUHD BD再生に対応したレコーダー/プレーヤーも必要です。しかし、現行のソニーのBDレコーダーではUHD BD再生はできても、Dolby Visionには対応しているものがない模様。ディスクドライブ搭載の「PlayStation 5」もDolby Visionには非対応です。このため、対応機種の持ち合わせがなければ、再生専用の「UBP-X800M2」(実売60,280円前後)もしくは「UBP-X700」(同35,640円前後)を追加購入する必要があります。

  • UHD BDプレーヤー「UBP-X800M2」

最後に、テレビとプレーヤーをつなぐHDMIケーブル選びも重要です。AV機器用のプレミアムハイスピードHDMIケーブル(最大18Gbps対応)や、ウルトラハイスピードHDMIケーブル(最大48Gbps対応)を持っていればそれを使ってよいのですが、少し古いPCモニターなどに付属する簡易なHDMIケーブルだと、Dolby Visionのようにデータ量の多いコンテンツを正しく伝送できません。持っていない場合は「Compatible Dolby Vision」のマークが付いたHDMIケーブルを入手しておくと安心です。さらに、接続方法や設定にも気を配る必要があるので要注意です。

このように、画音質と価格のバランスが取れたXRJ-50X90Jに、UHD BD再生機としてUBP-X700を加え、Ultra High Speed HDMIケーブルを追加購入するという組み合わせであれば、購入店舗にもよりますが予算20万円以下でそろえられそうです。ソニーが実施しているAV機器関連のキャッシュバックキャンペーンなども活用すれば、さらにおトクに購入できるかもしれません。

上記はソニー製品を選ぶ場合の一例ですが、Dolby Vision/Dolby Atmos対応のテレビとDolby Vision・UHD BD対応の再生機器の選択肢はもちろん他にもありますので、興味を持った方はネットや家電量販店などで調べてみることをオススメします。

余談ですが、チェックディスクとして嵐のライブフィルムのUHD BD盤を衝動買いした筆者も、これを最高の画音質で観る環境は残念ながらまだ持ち合わせていません(お手ごろなAnker製Ultra High Speed HDMIケーブルだけは手元にありますが)。いずれテレビを買い替えるときに、Dolby Vision/Dolby Atmos対応のものを選んでじっくり鑑賞するつもりです。