トリドールホールディングスが11月30日、「グローバル戦略発表会」を開催。中国で再び丸亀製麺の展開を目指すと明らかにした。丸亀製麺は2012年に中国に初進出して以降、約50店舗ほどを展開していたが、今年8月にコロナ禍の影響で全店を閉鎖していた。

この日のグローバル戦略発表会には、トリドールホールディングスの代表取締役社長兼CEOの粟田貴也氏と取締役副社長兼COOの杉山孝史氏が登壇した。

CEOの粟田氏は「(コロナ禍の)2020年4月に売上が半減してから2年半、ライフスタイルも大きく変わった。大きな転機だと捉えている。ネガティブではなくポジティブにこれからの未来を築きたいと考えている」と主張。今後、新たに「本能が歓ぶ食の感動体験を探求し世界中をワクワクさせ続ける」ことをミッションに、「予測不能な進化で未来を拓くグローバルフードカンパニー 」というヴィジョンを描くと話した。

  • トリドールホールディングスの代表取締役社長兼CEO 粟田貴也氏(右)と取締役副社長兼COO 杉山孝史氏(左)

また、粟田氏はトリドールが掲げるスローガン「食の感動で、この星を満たせ。」の言葉に則って今後のグローバル戦略をさらに加速させるとし、「日本から世界を攻めるのが正攻法かもしれないが、私たちは世界に多くの仲間を抱えている。我々は宇宙飛行士のように地球を俯瞰して、世界に一気に店舗網を築くことで予測不能な未来を作りたい」と訴えた。

トリドールホールディングスは昨年発表したグローバル戦略で、2028年に全世界で5500店舗(うち海外4000店舗)を展開するという目標を打ち立てていた。COO の杉山氏によると、「日本初のグローバルフードカンパニー」を目指すトリドールホールディングスにとって、5500店舗という数字も「ひとつの通過点に過ぎない」ようだ。フランチャイズを強化することで、店舗拡大を加速させる意向だという。

目標達成に向け、トリドールホールディングスは新たなグローバル戦略である「KANDOトレードオン戦略」も策定した。

この戦略は、「そこでしかできない体験」と「世界中どこでもできる体験」、そして「手間暇かけてこだわって展開する」と「スピーディーに効率的に展開する」といった相反する概念の「二律両立」を実現するものだ。これの達成に向け、特別な知識やノウハウを持つ世界中の「ローカルバディー」と、丸亀製麺や天ぷら まきのなどの「ダイバースブランド」を掛け合わせた「ノーボーダーネットワーク」の形成も進めている。

ローカルバディーには、欧州スターバックス成功の立役者などが在籍する外食専門投資ファンド「Capdesia」や、外食に特化した米国ファンド「Hargett Hunter」、シンガポールや香港で活躍する外食グループ「EN GROUP」などが含まれる。それぞれが現地のコネクションやノウハウを活かし、すでに各地で立地戦略や店舗設計、マーケティングなどで成果を表しているという。

さらにこの日の発表会では、中国最大の外資系企業「正大集団(CPグループ)」と中国市場で事業の共同開発の本格協議を開始し、覚書も締結したと発表。正大集団は畜産食品業、卸小売業、マスコミ業などを中核事業に据える多国籍企業で、グループは世界100以上の国と地域で事業を展開。従業員は45万人、昨年の世界総売上は840億ドル(11兆円)にのぼるという。

すでにトリドールホールディングスは、中国でスープヌードルチェーンの「Tamjai」「譚仔三哥(タムジャイサムゴー)」「雲南米線」の3ブランド、計208店舗を展開しているが、今後は正大集団と協力し、丸亀製麺の展開を数百店舗規模で目指す。杉山氏は「正大集団と丸亀製麺の中国本土における事業性を検証すべく、来年中に中国にモデル店舗を出すべく協議を進めている」とも明かした。

発表会では、トリドールホールディングスのダイバースブランドの試食会も行われた。

こちらはイギリスの丸亀製麺で人気のチキンカツうどん。ロンドンでカツカレーが大ブームになっていることに着眼し、うどんに落とし込んだ。カレースープは濃厚でどろっとしており、日本人が昔から慣れ親しんできた味わいである。ガリが口の中をさっぱりさせてくれる。

天ぷら まきのは昨年シンガポールに進出し、すでに4店舗を出店。いずれも行列ができるほどの人気店に急成長している。海外では海老や舞茸といった定番メニューはもちろん、「雲丹の大葉巻き」も大人気。雲丹の上品な甘みと爽快感のある大葉の香りが抜群に相性がいい。

欧州を中心に世界中で人気のアジアン・ヌードルチェーン「WOK TO WALK」の「エッグヌードル トーキョーソース」。タイの屋台をコンセプトにしており、濃厚な甘辛ソースが癖になる味わいだ。

香港からアジア各国に展開している米麺チェーン「譚仔三哥(タムジャイサムゴー)」の「麻辣」。弾力のある麺「米線」に複雑なスパイスの香りや麻辣の痺れ、辛味が特徴的なスープがよく絡む。

他にも、ハラル圏に展開するカレーブランド「モンスタープラネット」やマレーシアの「ボートヌードル」など、多国籍なブランドを抱えるトリドールホールディングス。

世界展開を急ぐ理由について、杉山氏は「大きな目標と夢が会社を強くし、それが力強い人材が集まることにもつながる。日本に留まっているほうがリスクが大きく、世界各国には大きな成長性とスケールがある」と述べ、新たな世界戦略には成長に伴うリスク以上のメリットがあると主張した。

国内でもコナズ珈琲の店舗拡大や丸亀製麺初となるドライブスルーの導入などが予定されており、今後の事業展開に注目が集まる。