お吸い物やお味噌汁、おでんや煮物からふわりと立ち上がるだしのいい香り。かつおだしや昆布だしの上品で繊細な味と香りに、「やっぱり和食はいいなあ」と感じる人も多いのではないでしょうか。そんな和食には欠かせない「だし」ですが、知っているようで知らないことも多いもの。そこで創業300年余のかつお節のプロ「にんべん」さんに、和のだし商品の使い方や、冬におすすめのだし料理について教えていただきました。

  • だし商品の使い分けはどうしたらいい?

かつお節だしと昆布だしはどう違う?

「にんべん」といったら、かつお節の「フレッシュパック」や、だいだい色のパッケージ「つゆの素」が有名なかつお節専門店。創業はなんと元禄12年(1699年)。江戸時代から令和時代まで約300年以上にわたり、「かつお節だし」の力で日本の食生活を支えてきました。

今回、お話を伺ったのは「にんべん」広報宣伝グループの會田ゆみさん。和食で使われるだしといったら、「かつお節だし」「昆布だし」の2つを思い浮かべる人も多いと思いますが、実際、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれのだしの味の特徴、向いている料理について聞きました。 

  • かつお節を使っただしの特徴は?

「かつお節だし」は、かつお節を削って取っただし汁のこと。うまみ成分であるイノシン酸が豊富で、さまざまな食材の美味しさを引き立ててくれるのが特徴です(會田さん)

かつお節のプロ「にんべん」で“本当に美味しい”だしのひき方を教えてもらった」の記事でも紹介しているように、だしをひく時間はわずか1分! 昆布やしいたけと比べ、用意しやすいのも魅力と言えます。

「『昆布だし』は、昆布からとれるだしで、アミノ酸の一種であるグルタミン酸といううまみ成分を豊富に含んでいます。面白いのが、昆布の産地によってだし汁の味が変わること。味はかつおだしと比べるとあっさりめなので、精進料理などに用いられます」(會田さん)

  • こんぶを使っただしの特徴は?

それぞれ特徴があるかつお節だしと昆布だし。會田さんによると、かつお節と昆布の合わせただし汁を取ると、動物性のうまみ(かつお節)と植物性のうまみ(昆布)の相乗効果が生まれ、より美味しいだし汁になるのだとか。

「一説では、別々に食べた場合に比べて、8倍近いうま味を感じると言われています。合わせだしを使うことで、料理がぐんとおいしく仕上がりますよ」(會田さん)

だし商品の種類がたくさんでわかりにくい! おすすめの使いわけ方は?

だしの違いはわかったけれど、迷ってしまうのはどのだし商品を使えばいいかということ。スーパーのだしコーナーに行くと、かつお節や昆布のほか、だしパックや顆粒だし、白だしやめんつゆ、液体だしなどさまざまな商品が並んでいます。會田さん! どうやって使い分けたらいいですか?

「だし商品は、ライフスタイルにあわせて使い分けるのがおすすめです」と會田さん。「だしパック」はひきたてのだしに近い味を再現できる商品ですが、価格の高さや、やや煮出す時間がかかるという弱点も。一方、「顆粒だし」は手ごろに購入でき時短にもなりますが、やや溶かしづらかったり、だしのおいしさの再現性が下がってしまうのだそう。

時間がかかる「だしパック」と、だしの風味が控えめの「顆粒だし」。2つのそれぞれのウィークポイントを補う商品となるのが、だしの香り豊かで溶かすだけで使える「液体だし」です。

「『白だし』は、だし汁に醤油や塩で味を整えた調味料。おでんやうどんのベースによく使用されますが、ブイヨン代わりに使うのもおすすめです」(會田さん)

  • めんつゆや白だしの使い方は?

めんつゆは、だし汁に醤油、塩、砂糖などを加え、そばやうどんなど麺料理のつゆに使える調味料。そのまま使えるストレートタイプのほか、濃縮タイプもあります。

「にんべんの『つゆの素』は、めんつゆとしても使うほか、煮込み料理や炊き込みごはん、炒め物、料理の下味など、和洋中いろんな料理に使えます」と會田さん。先ほども紹介した「白だし」とともに、オールマイティーに使える上、味も簡単に決まるので、砂糖・塩・酢・醤油・味噌といった"さしすせそ"の基本調味料に加え、常備しておくと便利ですね。

冬におすすめ! おいしく簡単あったまる「だしレシピ」

寒い冬は、あつあつのだしを使った料理が特においしく感じる季節ですね。そこで「にんべん」ならではのおすすめ料理も、會田さんに教えて頂きました。

■かつお節だしで作る「おでん」

かつお節「フレッシュパック」を使ってだしを取り、醤油とみりんで味付けしたつゆでおでんの具材を煮込みます。おすすめの具材はトマト。トマトに含まれるうま味成分のグルタミン酸とかつおだしがかけ合わさり、間違いない美味しさです。

「かつお節だしをひくのは簡単なので、ぜひひきたてのおだしで作ってみてください」(會田さん)

■つゆの素を使った「だしカレーうどん」

お蕎麦屋さんのようなおだしのきいた味わい深いカレーうどんを、「つゆの素」で簡単に作ることができます。つゆの素ゴールドに水を加えただし汁に、カレールーを入れて味を調えます。

「残ったカレーにつゆの素を入れてアレンジするのもおすすめです」(會田さん)

■白だしを使った「和風オムライス」

老舗洋食店「たいめいけん」茂出木シェフ考案の和風オムライス。炊きこみごはんを薄焼き卵で包み、「白だし」のあんかけでいただく和風オムライスです。

「おだしがふわっと優しく香り、食材のうま味を存分に感じられる味わいです」(會田さん)

寒い冬はお鍋など温かい料理が恋しい季節。これから迎える年末年始は年越しそばにおせち料理、お雑煮など、だしを使った料理を作ることが多いですね。ぜひ今から「だし」の使い方を極めてみてはいかがでしょうか。