フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)が30日、YouTubeで世界に進出した。1,000以上のアーカイブの中から名作・話題作の10タイトルを選出し、ダイジェスト版を制作。約3分×3本で構成される日本語ナレーション版『ザ・ノンフィクション 3mn』(語り:斉藤舞子アナウンサー)と、3本を一本化した英語ナレーション版『THE NONFICTION 10mn』(語り:グローバル事業部・秋元優里氏)が、新たに開設した『FUJITV GLOBAL CHANNEL』で配信されている。

この10タイトルの中で、今年7月24日に放送されて大きな話題となったのが、ゴミであふれる家賃3万円台のワンルームで暮らすみずきさんを追った『片付けられない部屋 ~ゴミの中に埋もれた思い出~』。密着した真壁優仁ディレクター(ネツゲン)に、配信で世界に発信されることの心境や、みずきさんの反応などを聞いた――。

  • 『片付けられない部屋 ~ゴミの中に埋もれた思い出~』より (C)フジテレビ

    『片付けられない部屋 ~ゴミの中に埋もれた思い出~』より (C)フジテレビ

■「あらゆる立場や生き方を選ぶ人へ、このドキュメンタリーを届けたい」

みずきさんは、10代で両親が離婚。長男として、親の夢でもあった「研究者」を目指すため、幼い頃からの猛勉強の末に、東京大学に現役合格し、順風満帆に見えた人生だったが、成長と共に“かわいくなくなっていく”自分の姿に違和感を覚え、「自分を変えたい」と、大学入学を機に女性服を着るようになった。

しかし突然、変貌した姿を見た周囲の人たちは、次第にみずきさんから離れていく。「人は離れていくけど、物はずっとそばにいてくれる」という気持ちになり、人からもらったものを手放せなくなったみずきさんが住む都内にある家賃3万円台のワンルームは、足の踏み場もないほどのゴミであふれるようになった…。

この作品が、YouTubeで配信されることに、真壁Dは「より多くの人たちに自分の作品を届ける機会をいただけて素直にうれしいです。みずきさんを含め、取材を受けてくださった方々からも、『あらゆる立場や生き方を選ぶ人へ、このドキュメンタリーを届けたい』という言葉をもらいました。自分自身も、誰もが気軽にドキュメンタリーに触れることができるコンテンツは、YouTube以上にないと思いますので、ぜひ日本だけでなく世界中の方々の心に届くことを願っています」と喜びを語る。

また、英語ナレーションと多言語字幕で世界に配信されることで、「東京の小さなアパートの一室で暮らす、“物を捨てることができない”みずきさんの姿を通して、どんな家族でも起きうる、互いを思いやるからこそ生まれる親子のすれ違いや、ジェンダーをめぐる個人の生き方について伝えたいです」と願った。

■カビだらけのコップにもモザイクなし

改めて番組制作を振り返り、「みずきさんの暮らしをありのまま伝えるために、冒頭から次々とゴミばかりを映し出す編集を選びました。ゴミはもちろんのこと、カビだらけのコップにすらモザイクをかけないのは、『ザ・ノンフィクション』ならでは…だなと」と意識したそう。

その映像の衝撃度から、「みずきさん自身の生き方まで否定的に見られてしまうのではないかという懸念もありましたが、放送後SNS上は、想像以上にみずきさんに共感する声であふれていたので驚きましたし、改めてこの番組が持つメッセージ性や影響力の強さを実感しました」と語る。

みずきさん自身も、周囲の人やSNSなどから「放送を見て救われた」「自分の生き方に勇気をもらえた」という声が多く届いたといい、「今回のYouTube配信を通してさらに多くの人に思いを届けることができることにすごく喜んでいました」と期待を示しているそうだ。

そんなみずきさんの現在の状況を聞いてみると、「『ゴミは捨てられるようになりました』と、本人は説明している部屋ですが、実際はまた少しずつ物が堆積し始めています。けれど、増えていたのは食べ終えたお菓子の包装だけではなく、ほとんどが新しくできた友人たちからの贈り物でした」と報告。また、「部屋の片付けを手伝ってくれた親友のみくさんとももちろん、あの部屋で恒例のたこ焼きパーティーを時々開催しているそうです」と明かしてくれた。