電動バイクと自転車の機能を併せ持つハイブリットバイク「GFR」を展開するグラフィット(glafit)が、独自機構の「モビリティカテゴリーチェンジャー」(モビチェン)を開発した。これにより完全な「二刀流バイク」が完成したとのことだが、どんな乗り物なのだろうか。グラフィット代表取締役CEOの鳴海禎造さんに話を聞いた。
バイクと自転車の機能を切り替えるモビチェンとは?
グラフィットは和歌山県にあるベンチャー企業だ。同社が昨年販売を開始した「GFR-02」の特徴は、ペダル付き電動バイクであるということ。バイクと自転車の機能を備え、モーターを動力に走行できる(バイクモード)し、人力でペダルを漕いでも走行できる(自転車モード)使い勝手のいい乗り物だ。
こういえば、すでに二刀流バイクは完成していたように思えるが、鳴海禎造さんによれば「これまではあくまで自転車風」だったという。
それには日本の法律の問題がある。従来の道路交通法では、例えペダル付きバイクをペダルで動かしていてもバイク扱いとされた。つまり、動作方法によって車両区分を切り替えることは法律上できなかった。
そのため、GFR-02もこれまでは原付として販売していた。
そうしたなか、2021年の法律改正で車両区分の変更が可能となった。そのきっかけとなったのがグラフィットの独自機構であるモビリティカテゴリーチェンジャー、通称モビチェンだ。
モビチェンの役割はナンバープレートを隠すことにあるが、当然、ただ隠すだけでは自転車としては認められない。そこでポイントになるのが、ナンバープレートを隠す仕組みとシステムの連動だ。
モビチェン付GFR-02はナンバープレートが見えているバイクモード時にアクセルを開ければモーターで走行できる。一方、自転車モード時はシステム連動により、バイク機能が一切使用できず、電動自転車のようなアシスト機能もない。その代わりに、全く自転車と同じ扱いを受けられるようになった。
これでGFR-02は、状態によって車両区分が変化する真の二刀流バイクになるのだ。
モビチェンは電源オフ時のみ操作可能となる。
これが例えば電源オン時にも操作可能となると、本来はバイクが走行できないところをバイクモードで走行していたり、ヘルメットを装着せずにバイクモードで運転していたりしても、警察に声をかけられた際にさっと自転車モードに切り替えるというような不正ができてしまう。
そうした不正使用を許さないためにも、グラフィットではこの点にかなりこだわったという。
モビチェンが電動モビリティの大きな転機に?
GFR-02が二刀流バイクになったことで何が変わるのか。鳴海さんの考えはこうだ。
「例えば、通勤で使う場合です。出勤時は朝で時間がないし、汗もかきたくないからバイクモード。でも帰りは健康増進の意味も兼ねて、自転車モードで漕いで帰るということもGFR-02ならできます。電動バイクですから、いざペダルを漕いでみたら重いのではと思われるかもしれませんが、漕ぎ心地はとても軽いです。確かに通常の電動アシスト自転車はバッテリーを使わないと重くなりますが、GFR-02は重くならないような機構になっています」
実際に試乗してみたところ、バイクモードはアクセルを軽くひねるだけで走り出しから抜群の加速感。操作性は自転車の車体サイズということもあって、原付よりも小回り性能が高いかもしれない。
自転車モードのペダルを漕ぐ感じは、普通の自転車となんら遜色ない。これはバッテリー自体の重さが約1.8kgと軽量なことと、ホイールにモーターを格納するインホイールモーターを採用していることによる恩恵だ。
GFR-02のサイズも大きなポイントになると鳴海さんは話す。
「GFR-02は折りたたむこともできますが、展開した場合でも全長は1,280mmです。軽自動車の全幅は1,380mmと規定されていますので、実は軽自動車であっても折りたたむことなく後部座席に収納できます。そのため、GFR-02で出勤したが夕方から雨になった、あるいは仕事終わりにお酒を飲んだというような場合に、タクシーの後部座席にそのまま入れて帰ってくるという使い方も可能です」
鳴海さんが話すケースで仮にGFR-02ではなく原付バイクであれば、どこかに駐輪しておかなければならない。すると置き場所に困ったり、盗難の心配も出てくるが、そうした不安がないことは使用者にとっては大きなメリットになるだろう。
最後に、鳴海さんに今後の展開を聞いた。
「私たちはモビチェンをつけた二刀流バイクを皮切りに電動モビリティ、とくに電動マイクロモビリティで世の中の移動のスタイルを大きく変えていきたいと思っています。2024年春までに施行される新しい道路交通法では、新たな車両区分として50ccクラスの下に特定小型原動機付自転車というカテゴリーができます。このカテゴリーでは最高速度が20km/hに制限される代わりに、電動を条件に免許不要でヘルメットは努力義務となります。サイズも普通自転車サイズの全長1,900mm×全幅600mmが想定されています。さらにモビチェンにもつながる話ですが、識別点滅灯火と連動して最高速度が6km/hに制限されたモードを備えていれば、一時的にモビリティを変化させることができます。つまり、これからは免許がない方も電動車両のターゲットになるのです」
特定小型原動機付自転車が世に出れば、高校生の通学スタイルが変化したり、地方では免許返納後の新たな移動手段として定着する可能性がある。それは市場シェアの拡大を意味しており、大きなビジネスチャンスだ。
特定小型原動機付自転車カテゴリーの実装に向けて、グラフィットではすでに新たな電動モビリティ開発に進めているという。どんな電動モビリティが誕生するか、今後の続報を待ちたい。