物質・材料研究機構(NIMS)は11月28日、気体を流入させるとその性質に応じて発色する簡易デバイスを設計・作製し、気体を色によって識別できることを実証したと発表した。

同成果は、NIMS 機能性材料研究拠点 嗅覚センサグループの柴弘太主任研究員、米・ハーバード大学のデビッド・A・ワイツ教授、米・コネティカット大学のルイ・サン教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、「Advanced Science」に掲載された。

気体は無色透明のものが多く、さらに異なる気体であってもその屈折率がそれぞれ非常に近い値であるため、認識可能な光の屈折が起こらないことに起因している。自由空間における気流を可視化するための手法はいくつか存在しているが、高価で特殊な装置が必要だったり、前処理を行う必要があったり、可視化が限定的だったりするなど、容易ではない。

このように、元々見ることのできない気体やその流れを見えるようにすること自体が困難であり、これを任意の気体に対して行った上でその分析まで達成できる手法を開発するのは、きわめて挑戦的な課題だという。

こうした手法を高価で複雑なセットアップを用いず、簡易なものとして開発できれば、気体を画像化して分析する各種計測技術をはじめ、これまでにない応用など、さまざまな可能性が拓けることが期待されるという。そこで研究チームは今回、構造色に基づく気体可視化・識別デバイスの作製を行うことにしたという。

今回の研究では、「ポリジメチルシロキサン」(PDMS)という柔軟な材料を薄い板状に成形し、その片面の一部に対してアルゴンプラズマ処理を実施。その後に、ガラス基板上に貼りつけるだけという簡易な方法により、構造色による可視化が実現された。