イケア・ジャパンは、「IKEA Tokyo-Bay」の倉庫を国内のイケア店舗で初めてオートメーション化し、11月24日より導入すると発表。導入に合わせ、関係者向けの見学ツアーを実施した。小売業界における「物流課題」の解消方法、その最前線を紹介する。

  • 「IKEA Tokyo-Bay」の倉庫

自動倉庫の導入で作業効率が8倍に

イケアでは、大型店舗となるイケアストアのほか、シティショップ、ディストリビューションセンター、オンラインストア、IKEAアプリなど、さまざまなチャネルを展開している。

顧客との接点が多様化する中、チャネルを横断して満足度を高める「オムニチャネル※化」が進んでおり、顧客はどんなチャネルを利用しているかを意識せずに買い物を楽しめるよう、ロジスティクスの整備が進められている。※実店舗やECサイト、SNSなどのあらゆる販売チャネルを活用する販売戦略

  • イケア・ジャパン 代表取締役社長 兼 Chief Sustainability Officer ペトラ・ファーレ氏

近年、物流需要が高まる中で物流を最適化するための整備や管理は小売業界において急務。生産から保管、出荷、配送までをロジスティクスで一括管理することで業務効率化やコスト削減を図り、顧客に必要な時に必要な分を届けられるような仕組みを構築することが求められている。

今回、イケアは「IKEA Tokyo‐Bay」の倉庫をAutoStore(オートストア)によって自動化。クロアチアに続く全世界で2例目の導入となる。

オートストアは、自動倉庫型ピッキングシステムで、BINと呼ばれるボックスに収納されているイケアのアイテムをピッキングロボットがオーダーに応じてピックアップ、コワーカー(スタッフ)のいるポートまで運ばれる。

  • BINと呼ばれるボックスにイケアのアイテムが収納されている

以前は、コワーカーが店舗内を回ってピックアップしていたが、オートストアの導入により作業が8倍も効率化されるという。

  • 端末からオーダーすると手元のポートまでアイテムがスムーズに運ばれる

  • ピックアップ作業の様子 提供:イケア・ジャパン

ポートの高さは日本人の平均身長に合わせて設定されており、体を台に近づけて作業しやすいよう、足元が細くなっている。これは人間工学に基づいたデザインとなっており、ロジスティクスの構築によって顧客の満足度を上げるだけでなく、コワーカーの労働環境の向上も意識されていることがうかがえる。

  • 足を前に踏み出して作業できるので「腰への負担」が軽減される

また自動倉庫は酸素低減システムを導入しており、万一の際に火災などが発生しにくいよう安全面も考慮されているという。

今回の導入により、「IKEA新三郷」「IKEA Tokyo-Bay」「IKEA立川」「IKEA港北」で分散して担っていた関東圏の小物配送のピックアップ業務を1ケ所に集約。これは関東全体を一つのマーケット(One Tokyo Market)ととらえ、店舗間でのシームレスな連携を目指していくという。

イケアでは今後、オムニチャネルの強化を進め、2024年には「IKEA前橋」をオープン予定。さらに、札幌、岡山、高松、広島、静岡、浜松と現在6ケ所ある商品受け取りセンターを、2023年までに10拠点以上のオープンを目指していく。

また、ポップアップストアの開設も積極的に行っていきたいとした。これらの取り組みにより、顧客とのタッチポイントを増加させ、さらなるオムニチャネル化を見込む。

サステナブルへの取り組み

イケアでは環境に配慮し、ラストワンマイル配送のゼロエミッション化も推進している。

これはイケアが展開されている31ケ国すべてで取り組まれており、2025年までに100%達成を目指す。また日本では現在、6台のEV車を導入しているが、今後さらに数を増やす予定で、車両の充電にも再エネ電気を100%使用しているという。

そして、2017年に開始した家具買取サービスでは、これまでに3万点近くの買取を実施。メンテナンスや整備の上、サーキュラーマーケットにて手ごろな価格で提供したり、パーツの紛失などに対応するスペアパーツサービスにより、長く家具を愛用してもらえるよう努めたりしている。

  • 「サステナブルリビングショップ」

新常設スペース「サステナブルリビングショップ」では、LED電球やリサイクル素材を使用した商品などサステナブルな暮らしを手軽に実現できるアイテムを揃え、アイデアやソリューションを提供している。

イケアでは「より快適な毎日を、より多くの方々に」をビジョンに掲げ、「連帯感」「環境と社会への配慮」「刷新して改善する」など8項目のイケアバリューに則って事業を展開している。採用に関しても、このビジョンやバリューに合致するかどうかを重視しているという。

  • イケアバリュー

ここ数年でSDGsへの理解が世の中に広まってきたことにより、サステナブルな社会のための取り組みを積極的に行う企業も多くなった。

オートストア導入をはじめとするこれらの施策から、顧客のニーズに応えつつ、社員の労働環境も改善するという、ビジョンに則った企業姿勢が見えてくるものではないだろうか。