APS-Cミラーレス「EOS R7」と異色の超望遠レンズ「RF800mm F11 IS USM」の組み合わせにいろいろな意味でシビれ、手こずった落合カメラマン。実は、RF800mmと一緒に借りていたのが、大三元の望遠ズーム「RF70-200mm F2.8 L IS USM」。RF800mmをRF70-200mmに交換して撮り始めたとたん、「EOS R7とベストマッチなのはこれ!!」と、ごく普通にしみじみ感じたそうです。

  • フルサイズ対応の望遠ズームレンズ「RF70-200mm F2.8 L IS USM」を装着したEOS R7。実売価格は、EOS R7が20万円前後、RF70-200mm F2.8 L IS USMが40万円前後

RF70-200mm F2.8 L IS USMをEOS R7に接着剤でくっつけたい

前編の後半部分でグダグダ愚痴っていた「RF800mm F11 IS USM使用時の動体の追いにくさ」は8割方、狭すぎる画角がそう感じさせているようにも思うのだが、手ブレ補正の引っかかりに類すると思われる違和感は、例えば「RF70-200mm F2.8 L IS USM」ではほとんど感じない。画角の違いを抜きにしても、RF70-200mm F2.8 L IS USMの方が圧倒的にスムーズに動体を追い回せるし、AFのスピードも段違いに速いというのが現実だ。これ、あって当然の違いではあるけれど、「EOS R7+RF800mm F11 IS USM」が放つ魔性の魅力は、そういった面でのヒエラルキーが明確に存在していることを知った上で味わうべきかも? なぜなら、最初から「これしか知りません」だと、人生かなり偏ると思うので(笑)。

  • RF800mm F11 IS USMをさんざん使ったあとにRF70-200mm F2.8 L IS USMにレンズチェンジすると、別世界の快適な使い心地に涙が出そうになる。シンプルに「望遠力」みたいなところを比較する場合に限り、200mm(320mm相当)の画角は圧倒的に「それなり」でしかないのだけど、普通使いには十分な望遠画角であるのも現実だし、開放F値「F11」に縛られた後の「開放F2.8」ってのが、これまた“たまらん明るさ”でもありまして(笑)。明らかに一枚上手の繊細な描写や携帯時のコンパクトさ、超高感度で撮られた写真ばかりにならないで済む「明るさの余裕」など、一般的な目線ではRF70-200mm F2.8 L IS USMこそ、EOS R7にベストマッチのレンズなんじゃないかとも思う(RF70-200mm F2.8 L IS USM使用、ISO6400、1/1000秒、F3.2、-0.7露出補正)

  • RF70-200mm F2.8 L IS USMは、開放F値からキリッとした描写を見せる現代っ子望遠ズームレンズなので、絞りを開けても絞っても満足度は見事に不変。それよりナニより、沈胴構造採用によるコンパクトさに、より大きなインパクトがあるってのがスゴい(RF70-200mm F2.8 L IS USM使用、ISO250、1/250秒、F2.8)

  • RF70-200mm F2.8 L IS USMの万能性は、EOS R7の万能性にドンピシャなキャラクター。個人的には、EOS R7に接着剤でくっつけちゃっても許す!といってもいいぐらいベストマッチなレンズであると思っている。なにより、F2.8クラスの望遠ズームレンズに、軽量さと卓越した携帯性を積極的に与えようとした発想がいい。RFレンズの先進性は、デビュー時からダントツだ(RF70-200mm F2.8 L IS USM使用、ISO100、1/640秒、F4.5)

  • 全長わずか約146mmで携帯性に優れるのみならず、最短撮影距離は全域で0.7mと、ググッと寄ることも可能(接写的な撮影も得意)なRF70-200mm F2.8 L IS USM。その「なんでもござれ、なんでもおまかせっ!」な万能キャラには一分の隙もない(RF70-200mm F2.8 L IS USM使用、ISO4000、1/320秒、F11、-1露出補正)

  • キットを組むRF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMは、一見したときの先細り系シルエットが個人的にはちょっと苦手だったりするのだけど、写りは満点の優等生。ワイド端の近接撮影でも、画面の隅々まで妙な暴れを見せることのない描写は見事の一言に尽きる(RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM使用、ISO3200、1/60秒、F3.5)

  • もう薄暗くなっていた夕刻。F3.5の開放F値でも、ISOオート設定の感度はISO3200まで上昇した。しかし、背景のちょいボケ部分の描写に目立つクセは見られない。「高感度ノイズリダクション+ちょいボケ」という、実はけっこうな悪条件をソツなく乗り切るボディ&レンズの実力は、高く評価されるべきだと思う(RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM使用、ISO3200、1/80秒、F3.5、+0.7露出補正)

  • RF70-200mm F2.8 L IS USMはインナーズームではないので、テレ端までズームするとこれぐらい長くなる

  • こちらはキットレンズとして用意しているRF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMを装着したころ。このコンパクトさで240mm相当までカバーできる

RAWバーストモード、わずか0.5秒のさかのぼりでも手応えは上々

EOS R7は、電子シャッターで最高約30コマ/秒の連写が可能な俊足モデルでもある。電子シャッター時のローリングシャッター歪みは、まぁまぁイイ感じで抑えられているとは思うのだけど、簡単に試せるイジワルな条件下であっけなく盛大な歪みを見せることもあるので、背景に実態が明らかな人工物がある場合の流し撮りなどは、ちょっと苦手な感じ。鳥や昆虫の羽ばたきが不自然に描写されることも、場合によってはありそうだ。

一方、電子シャッターによるRAW画像の連続撮影機能として搭載されている「RAWバーストモード」では、シャッターボタン全押し前に遡っての画像記録が可能だ。これは、OM SYSTEM「OM-1」の「プロキャプチャー」や、ニコン「Z 9」の「プリキャプチャー」などと同じようなことができる機能なのだけど、任意設定に関わる“余裕”は他社モデルよりも若干、少なめ。例えば、プリ撮影時間は最大で0.5秒と、好みによって1秒以上の設定も可能な他社モデルとの比較では少々、縛りがキツい感じだ。

さらに、その名称からも分かるとおりRAWのみでの撮影になるので、JPEGのデータを得ようとする場合は事後処理が必須。ちなみに、当方の個人環境においては、メインPCとキヤノンの画像処理アプリケーション「デジタルフォトプロフェッショナル4」の相性が当初から何故だかモーレツに悪いことから、今回のRAWバーストモードでの撮影作例は、ボディ内での現像処理で得たJPEG画像になっている。

  • こんな瞬間が手軽に撮れちゃうプリ連写。もちろん、それなりの工夫と忍耐力と慣れは必要なのだけど、人間の力ではどうしようもない部分を効果的にカバーしてくれる機能であるのは確かだ(RF70-200mm F2.8 L IS USM使用、ISO200、1/4000秒、F3.2)

かように、操作&動作のアレンジに対する余力はちょっぴり少なめなEOS R7の「プリ連写」なのだけど、撮影中の手応えは非常に良好だ。その好印象を支えているのは、撮影中に明示されるバッファメモリーの現況表示。今この瞬間にどの程度バッファメモリーが消費され、それが現状どのぐらい開放されつつあるのか、ファインダー内のバー表示でダイレクト、かつ感覚的に掴むことができるのが本当にありがたかった。

さらに、シャッターボタンの半押し維持で次々にバースト撮影できるところも、撮影者の「撮りたい」気持ちを強固にバックアップしてくれる。「写真を撮る」ことに関わるフォローが徹底しているところは、実にキヤノンらしい気遣いだ。これでJPEG記録と遡り時間の延長が可能になればカンペキなのだけどねぇ。

  • EOS R7+RF800mm F11 IS USMで手に入れる1,280mm相当の画角で無遠慮にブチかますRAWバーストモード撮影の「プリ撮影」には、心底シビれましたぜ。できることは多くないけれど、とにかく扱いやすいプリ連写という印象なのだ。RF800mm F11 IS USMに関しては、もう少しAFの動作が速くなってくれればいうことはない。現状でも、ドンピシャでキマったときには、とてつもなく大きな魅力を発揮するレンズだ(RF800mm F11 IS USM使用、ISO6400、1/4000秒、F11)

  • 遡れる時間には「0.5秒以下」の縛りがあるものの、最大0.5秒ってのは、考えようによっては「遡るにはちょどいい時間」でもあり、撮りたい瞬間が案外カンタンに撮れちゃうという特質をスポイルすることは、実はほとんどない。でも、これが仮に1秒まで遡れるようになると、狙った瞬間を撮ろうとカメラを構えているとき、少しだけ気を抜いていられるワケでして・・・。ナンボか楽チンってことッス(笑)(RF800mm F11 IS USM使用、ISO6400、1/4000秒、F11)

気になる部分は散見されるが、新世代のAPS-C機として評価できる

さて、そんなこんなのEOS R7に対し、トータルして気になるところを挙げるとするならば、まずはメカシャッターの手応えと音に少々チープな感じを抱くところだろうか。メカシャッターでは、最高約15コマ/秒の連写が可能であり、だからこそ動作のキレそのものは良いのだが、残念ながら上質な手応えとは言い難い。「シュタタタ・・・」といった感じの音と、どこか余韻を残すかのような連写の止まり方は、連写速度は異なるものの、ニコン「Z50」のH+設定時のレリーズ感触に似たものであり、そういう意味では、メカ部の感触としては、もうひとつ上のクラスに属する「APS-CのEOS R」が欲しくなってきたりもする。

また、EVF光学系は、ド真ん中にピッタリ目を合わせないと周辺がブニョっと歪んで見えることがあるなど、デリケートな部分が残存。さらに、細かいところでは、撮影できる状態にあるモニター表示でバッテリー残量の確認ができないところが個人的にはちょっと不満だった。

ってなことをモロモロ考え併せると、一眼レフ「EOS 7D」シリーズの頃の「7番」とは、ボディ全体の質感を含め、存在感がちょっと違う「新たな7番」であるということになりそうだ。とはいえ、もはやミラーレス機に対し、メカ部の動作質感をうんぬんする時代ではないようにも思う。だって、EOS R7の次世代モデルって、完全にメカシャッターと縁を切っていそうじゃん。それが3年先なのか5年先なのかは分からないけれど、何らかのカタチで歴史に名を刻みそうなEOS R7なのであります。

  • チョ~意地悪な条件を揃えると、ローリングシャッター歪みバリバリの仕上がりを得ることも、さほど難しくはない。が、普通に撮影している限り、電子シャッターの使用を躊躇させるシチュエーションが減っている(多くの場合に歪みが気にならなくなっている)のも確かだ(RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM使用、ISO2500、1/80秒、F6.3、-1露出補正)

  • ボディの質感や細かなメカ類に一眼レフの「EOS 7D」シリーズとの差は感じつつも、優れた高感度画質やRAWバーストモードなどの存在を高く評価している落合カメラマン。早くも、いつしか登場するであろう「EOS R7 Mark II」の仕上がりが気になっている様子!?