国際平和文化都市・広島で、海外からの旅行者を中心に人気を集めているアクティビティがある。電動自転車に乗り、地元ガイドの案内で被曝遺産を巡るサイクリングツアー"ピースツアー"だ。現地を訪れ、参加してきた。
移動は電動自転車でスイスイ
mintが運営するツアー「sokoiko(ソコイコ)!」は、2016年に広島市でスタート。「ガイドブックに載ってない旅」をモットーに、地元ガイドだからこそ知っている場所に案内、その場所にまつわるストーリーを紹介している。
ツアーでは移動に電動自転車を使う。自転車移動は小回りが効くのであちこち巡りやすく、また案内してくれるガイドとの距離も近いというメリットがある。ちなみにsokoiko! ではガイドのことを"フレンド"と呼んでいるそう。旅先で出会った友達のような雰囲気で案内してもらえる。
そして電動だから楽々。普段あまり運動習慣のない筆者だが、およそ10kmを快適にスイスイ走れた。電動は初めてという人でもスタート時にガイドが使い方を教えてくれるので安心してほしい。
原爆投下前から復興まで——被曝遺産を巡る
今回参加したツアーは、「sokoiko! サイクリングツアー ~Roots of Hiroshima~ スタンダード」(所要時間:2時間/料金5,000円/人)。平和記念公園からスタートした。
第2次世界大戦末期の1945年8月6日8時15分、人類史上初めて使用された核兵器・原子爆弾により甚大な被害を受けた広島。爆心地にある元安橋の上から当時の状況を解説しながら「当時ここでもみんな僕らと同じように暮らしていて、当たり前に明日が来ると思っていたんです」とmint代表取締役の石飛聡司さんは語る。
世界的建築家・丹下健三氏が設計した、広島平和都市記念碑(原爆死没者慰霊碑)。アーチ状の慰霊碑の先には、平和の灯、原爆ドームが一直線上に見える。
広島赤十字・原爆病院メモリアルパークでは、「歪んだ窓枠」が爆風の威力を今に伝える。
ツアーでは原爆の悲惨さだけではなく、焦土から力強く復興した広島の現在の姿も見ることができる。広島大学の跡地に造られた東千田公園もその一つ。被曝し「広島には75年間は草木も生えないだろう」ともいわれたそうだが、今では街中に緑豊かな美しい木々が生い茂る。
"広電"の愛称で知られる広島電鉄の路面電車は、原爆投下3日後に運転再開。人々の希望になったのだそう。
ガイドは、ツアーに参加したアメリカ人旅行者に「原爆を落とした私たちを恨んでいないのか」と訊かれることもあるそうだ。難しい質問だと思う。
mint sokoiko! 広島マネージャーで被曝2世の福原信太郎さんが祖父から言われたという言葉が印象に残った。
「恨んじゃいけんよ、恨んだらまたやる。恨んでも恨まれてもいけん。世界中に友達をつくりんさい、友達の家に爆弾を落とせるか?」。
このような地元の人たちのリアルな思いが聞けるのもこのツアーならではのものだ。
美しい川沿いの道を自転車で走りながら、平和の尊さを改めて噛み締めた。