日本国内で販売されるGalaxyシリーズの2022年モデルの中では最も安価な「Galaxy A23 5G」。3万円前後で購入できるエントリーモデルの実力に迫ります。
「A22とそっくり」でも中身はじわりと進化、指紋認証/eSIM対応が嬉しい
GalaxyといえばAndroidスマートフォンが広まり始めた頃から高性能な端末を輩出し続け、今では先進的なフォルダブルディスプレイを搭載する高級機もラインナップしており、どちらかといえばハイエンドのイメージが強いブランドです。しかし、市場環境の変化に合わせて数年前から廉価モデルも日本市場に投入しています。
今回取り上げるGalaxy A23 5Gは、日本向けのGalaxyでは最安クラスとなるA20番台の機種。ドコモ/au/UQ mobile/J:COM MOBILE/楽天モバイルで扱われ、各社の販売価格は3万円中盤です。主な仕様は下記のとおり。
- OS:Android 12
- SoC:MediaTek Dimensity 700(2.2GHz×2+2.0GHz×6 オクタコアCPU)
- メモリ(RAM):4GB
- 内部ストレージ(ROM):64GB
- 外部ストレージ:microSDXC対応(最大1TB)
- ディスプレイ:5.8インチ TFT液晶 HD+(1,560×720ドット)
- アウトカメラ:約5,000万画素 F1.8
- インカメラ:約500万画素 F2.0
- 通信方式:5G/4G
- SIM:nanoSIM/eSIM
- Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac
- Bluetooth:バージョン5.2
- バッテリー:4,000mAh
- 外部端子:USB Type-C、イヤホンジャック
- 防水/防塵:IPX5、IPX8/IP6X
- 生体認証:指紋認証/顔認証
- その他の機能:FeliCa(おサイフケータイ)、NFC対応
- サイズ:約150×71×9.0mm(最厚部9.6mm)
- 重量:約168g
- ボディカラー:レッド、ホワイト、ブラック
同シリーズの歴代機種は、3Gユーザーの巻き取りなども見据えて総務省のガイドラインによる割引規制下でも“一括0円”を実現可能な2万円程度の価格に設定されてきたため、今回はやや値上がり傾向ですが、中身も価格相応にレベルアップしています。
最近のスマートフォンとしては小ぶりで操作性の良い5.8インチ液晶、かえって珍しくなったシングルカメラ、丸みを帯びた扱いやすい樹脂製ボディなど、外観は1世代前のGalaxy A22 5G(ドコモのみ販売)とよく似ています。サイズもほぼ一致しており、マイナーチェンジのような雰囲気です。SoCはMediaTek Dimensity 700で、メモリ4GB/ストレージ64GBと基本性能にも目立った変化はありません。
注目すべき違いは機能面にあり、メインカメラが約1,300万画素から約5,000万画素に向上したほか、指紋認証やeSIMにも対応しました。高画素カメラや先を見据えたeSIM対応は低価格帯ではライバル機種と差別化できる要素といえます。
反対に、これまで指紋センサーを搭載していなかったことはライバルに差を付けられてしまっていたポイント。生体認証はもはやガラケー時代のような「セキュリティ意識が高い人に刺さる付加価値」ではなく、ほとんどの機種に当たり前のように付いていて安全性だけでなく利便性でも求められる機能になっていますから、「良い機種だけどイマドキこれがないのは……」というマイナス要素をひとつ減らせたことは大きな前進でしょう。
ソフトウェアの充実度・完成度はサムスンらしさを感じる
筆者は仕事柄多くのAndroidスマートフォンに触れていますが、実は以前、このシリーズの初代にあたるGalaxy A20(2019年11月発売)を検証用のサブ機として持っていました。当時は動作の遅さをはじめとして、最安クラスの機種だけあってさすがに割り切りと我慢が必要だなという印象を抱いていましたが、そのイメージで最新版のGalaxy A23 5Gに触れてみると、想像よりずっとストレスなく使えることに驚きました。
もちろんハードウェアとしての絶対的なリソースは限られているので、重たいゲームアプリも遊べるなどということはないものの、連絡や情報収集のツールとしての日常的な利用範囲では意外なほど滑らかに動きます。アプリの起動や画面の切り替えなどのラグはありながらも、スクロール操作や各種アニメーションが滑らかなおかげで総じてスムーズな動作に見えるという、調理の仕方が上手い印象。このあたりはスマートフォンのスペックが今よりはるかに低かった頃からノウハウを蓄積している老舗メーカーならではの腕の見せ所なのかもしれません。
また、最近はメーカー独自のカスタマイズを控えめにしてAndroidの標準UIやGoogle純正のシステムアプリを全面的に採用するメーカーも多く、サムスンのように隅々まで作り込むメーカーは減ってきました。
ハイエンドモデルなら独自性の高いソフトウェアは他社にない+αの機能を提案する差別化要素になりますが、Galaxy A23 5Gのようなローエンドモデルであれば、性能を下げても基本的な機能は最適化によってサクサク動くという別のメリットが現れます。たとえばホームアプリや写真のギャラリーアプリなどは、さほど非力には見えない動きをしてくれます。
独自機能つながりでは、「かんたんモード」も本機種の性格を考えると欠かせない要素です。価格やサイズなどさまざまな面での手頃さから、実際の販売現場ではシニアのスマートフォンデビューにもBASIOシリーズなどの専用機種ではなくGalaxy A23 5Gのような全年代向けのエントリーモデルを比較提案・検討されるケースも多いと聞きます。
そういった需要も見据えて、本機種は「かんたんモード」で文字やアイコンのサイズ、ホーム画面の表示スタイルなどを年配者でも見やすくわかりやすい設定に一括変更できるようになっています。単にそういう機能を作って設定階層の奥に用意しておくだけではなく、出荷状態ではホーム画面の2ページ目に「かんたんモードはこちら」というショートカットが用意されているあたり、「高齢の家族のためにGalaxy A23 5Gを買い、設定を済ませてから渡す」といった購入者の姿まで思い描いた細かな配慮を感じました。
結論としては、Galaxy A23 5Gは最廉価クラスでもGalaxyらしく作り込まれた安定感のある機種です。同価格帯で考えると基本性能はやや控えめですが、防水・防塵、おサイフケータイ、5G、指紋認証、写りの良いカメラなど、機能の充実ぶりを考えると悪くない選択肢ではないでしょうか。